70才を過ぎたら無理しない。専門医が教える「死ぬまで元気」でいるための生活習慣
「この先も元気でいられるだろうか」と不安を感じる人も多いだろう。しかし、生活習慣病のスペシャリストである秋津壽男医師(71)は、「70才まで大きな病気なく生きてきたなら、それは立派な健康の証」と語る。無理な努力や極端な健康法は不要。食事、運動、睡眠、趣味、そして薬との付き合い方を少し見直すだけで、「ピンピンコロリ」は十分に目指せるという。医師が実践する“死ぬまで元気”の生活習慣とは——。
教えてくれた人
秋津壽男さん/秋津医院院長
食事は「1日3食」にこだわる必要はない
歳を重ねると健康に不安を抱くが、生活習慣病のスペシャリストである秋津医院院長の秋津壽男医師(71)は、「そこまで生きたのならもっと自信を持っていい」と語る。
「70歳くらいまで大きな病気をせず生きてきた人は、基本的に健康に良くない無茶な生活は送っていないので、人生の残り10年に特別なことをする必要はありません」
大切なのは「ピンピンコロリ」を目指すことだと秋津医師。
「自分の足で歩く」と「ボケない」が重要なポイントになるという。
まず気を付けたいのが「食事」だが、巷間言われるような「1日3食」にこだわる必要はない。
「厚生労働省は“カロリー摂取のため頑張って食べましょう”と指導しますが、70才を過ぎると食が細くなると同時にカロリー消費が減るため3食を無理に食べる必要はありません。基本は“お腹が空いたら食べる”で十分です。私はその時に食べたい物がなければ食事を抜きます」(秋津医師)
ただし、メニューの偏りには気を付けたい。特に一人暮らしは同じメニューばかりになりがちで、できるだけバリエーション豊かな食事を心がけることが大切だ。
「最近はコンビニの総菜や弁当のバリエーションが充実して栄養豊富なので、変化を付けた食生活にできるならコンビニ食でもOKです。歳を重ねると筋力が低下するので、筋肉の元となるタンパク質を含む肉は意識して食べたほうがいい」(同前)
秋津医師によると、「おやつ」も重要だという。
「量と質に気を付ければ栄養も取れて健康にプラスになります。特に歯応えがあるスルメやビーフジャーキーが最適。噛むことが脳を刺激して認知症予防も期待できるでしょう」
日常の動作を含めて1日7000歩がベスト
運動も大事だが、人と競う競技は避けたほうがいいという。
「昔取った杵柄で記録や勝敗を競うスポーツをすると、血圧や心拍数が上昇してしまいます。記録を追うのではなく、あくまで健康のための運動を心がけたい」(同前)
健康のための簡単な指標となるのが「1日7000歩」を目指すことだ。
「1日2000歩の人に比べて1日7000歩歩く人は死亡リスクが47%減少したという報告があります。また1日3時間以上イスに座っている人は死亡率が16%高くなるという調査がある。やはり定年後に家でじっとテレビを見るのではなく体を動かすことが大切です。
とはいえ1日7000歩をウォーキングのみで達成する必要はなく、トイレに行ったり家事をしたりという日常の動作をすべて含めて7000歩くらいになれば十分合格点でしょう。テレビのCMのたびに席を立つだけでも効果は大きい」(同前)
スマホや腕時計などで簡単に毎日の歩数を測れるので、歩数は記録しておくといい。
ごくごく簡単な運動をするだけでも効果はある。秋津医師が薦めるのが次の2つの体操だ。
「転ばないようにイスの背を持って膝を少し曲げるだけの“なんちゃってスクワット”はテレビを見ながらでもできます。1日30回やれば十分です。
上半身の筋肉を鍛えるには、両手でタオルの端を持ってエキスパンダーのようにグーッと引っ張る“タオルエクササイズ”が効果的。顔の前、頭上、背中側に回して腰あたりの3か所でそれぞれ30秒キープすれば筋力を強化できます」
カラオケは誤嚥性肺炎の予防に
カラオケにも健康効果が期待できるという。特にカラオケスナックで立って歌うと効果抜群だと秋津医師。
「歌唱することで肺や嚥下機能が鍛えられて誤嚥性肺炎の予防になることに加えて、人前に立って歌うと自然と背筋が伸びるので姿勢が良くなりインナーマッスルが鍛えられます。また歌詞を覚えることは認知症の予防にもつながります」
食事や運動、趣味に加えて睡眠も大きな意味を持つ。
とりわけ大切なのは「睡眠時間」ではなく「睡眠の質」である。
「歳を重ねると自然と早く目が覚めるようになるので、短くても質の高い睡眠を取ることです。そのために注意したいのが寝る前の習慣で、就寝の1〜2時間以上前に風呂に入ること。入浴で体の深部体温を上げ、1〜2時間ほどで下がると同時に体は睡眠モードになる。就寝時はスウェットだと寝返りを打ちにくいのでパジャマを着用するといいでしょう」(同前)
正しい薬との付き合い方が「元気な老後」をつくる
老後生活では病院にかかるケースも増えてくるが、薬との付き合い方には注意を要する。
「多くの科にかかるほど重複する薬が出るので、過剰な薬を減らすことも考えたい。特にロキソニン(非ステロイド性抗炎症薬)のような鎮痛剤は患者が痛いと言えば医者がすぐに処方するため、日常的に服用している人が多い。腎障害や胃潰瘍、腸内出血などの副作用もみられるので症状がある時の服用に留めることです」(同前)
服用者が多い降圧剤や糖尿病治療薬を減らす場合は慎重な判断が求められる。
「日本人の6割の死因は動脈硬化が関係しています。高血圧、糖尿病、脂質異常症を患っている人は、薬を無理に減らしたり断薬したりするのは動脈硬化のリスクを上げる危険性があるので、ある程度は薬に頼る姿勢も必要でしょう」(同前)
薬との付き合い方を考えるうえでも自分の体の状態を知ることが欠かせない。秋津医師は日々の「血圧と体重測定」の重要性を説く。
「毎日自宅で血圧を測り、1か月以上の血圧の変化を医者に見せれば減薬の相談をしやすくなる。同様に体重も毎日測るといい。歳を重ねると通常、健康な人でも70才からの10年間で3~4kg減りますが、この数値を上回る減量がみられたら注意しましょう。反対に急激に増加しても糖尿病などの病気が隠れている可能性があります」
正しい知識で対策すれば「死ぬまで元気」は実現できる。
ピンピンコロリを実現する知恵【まとめ】
食事
・1日3食にこだわらない
無理に1日3食を食べる必要はなく、食べたいものがなければ食べなくていい。食事の時間もお腹が空いたらでいい
・食事の内容が偏らないようにする
肉や脂身など気にせず好きな物を食べていいが、そればかりにならないように気を付ける
・よく噛むものを「おやつ」にする
よく噛むことで認知症予防を目指す。スルメ、せんべい、ビーフジャーキーなどをおやつに食べる
運動
・テレビのCMのたびに立ち上がる
アメリカの研究で1時間座る時間が増えるごとにがんの死亡リスクが16%上昇。座りっぱなしを避けるためにCMごとに立ち上がる
・人前でカラオケをする
カラオケを人前で歌うことで姿勢を正して肺や喉を鍛え、誤嚥性肺炎や認知症の予防効果を目指す
・競技性のある運動はしない
人と競うスポーツや競技はしない。血圧を上げる要因になる
・1日7000歩を目指す
家事や日常の動作で約7000歩になる。家事をしない人はテレビを見続けないなど、なるべく立つことを心がける
睡眠
・就寝の1~2時間前に入浴する
入浴で体の深部体温を上げその後、下がることで質のいい睡眠につながる。就寝の1~2時間前までに入浴すると深部体温が十分に下がる
・パジャマを着て寝る
質のいい睡眠には寝返りを打つこと。パジャマを着ると寝返りをスムーズに行なえる
習慣
・血圧を毎日測定する
毎日の血圧変化を把握しておくことで降圧剤の減薬にもつながる
・体重を毎日測定する
体重の増減を見ることで糖尿病や脂質異常症の兆候を知る
・口角を上げる
笑うことで免疫力を高めてがん予防になる。口角を上げるだけでも効果がある
薬
・鎮痛剤を飲み続けない
鎮痛剤のロキソニンなどは胃潰瘍などの副作用があるので痛みがある時だけの頓服にする
・降圧剤・脂質異常症薬・糖尿病薬は無理に絶たない
動脈硬化のリスクを下げる薬にある程度は頼る。その分、食生活などが多少ズボラでもOK
※週刊ポスト2025年12月19日号
