「脳の老化」を防ぐために「食べた方がいい食べ物」と「避けた方がいい食べ物」を医師が解説 食事法「MIND食」とは？
老化症状の原因の1つである脳の衰え。著書の『こうして脳は老いていく』（アスコム）に、脳の衰えによる老化現象を抑える方法を記した名城大学特任教授の遠藤英俊さんは、脳の衰えを防ぐ方法についても語っている。日常の中でできる脳の衰えを防ぐポイントについて、教えてもらった。
教えてくれた人
遠藤英俊さん／名城大学特任教授
えんどう・ひでとし。聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授。認知症学会専門医、日本老年医学会老年病専門医。滋賀医科大学医学部卒、名古屋大学老年科で医学博士を取得。国立長寿医療研究センターで長寿医療研修センター長を務める。2021年、老年病や認知症に関する専門的医療を提供する「いのくちファミリークリニック」を開院。著書に、『こうして脳は老いていく』（アスコム）など。
「やりたいこと」を想像するのが脳の衰えを防ぐために有効
脳の衰えを防ぐための方法として、遠藤さんは「人生でやりたいことを、できるだけ具体的に想像すること」を提案する。やりたいことへのモチベーションによって、元気な頭と体を維持することへの意識が高まるためだ。
「健康であることがやりたいことを達成する最低条件になるからです。実際、人生の目標がある人は、80歳を過ぎても予備脳強化に前向きです。やる気が出てくるのは、目標に向かうことで、ドーパミンやセロトニンといった幸せホルモンが分泌されるからでもあります」（遠藤さん・以下同）
ストレスをためない
脳の衰え予防には、ストレスをためないことも大切だ。ストレスは脳の働きを弱め、記憶や判断力を鈍らせることが多くの研究でも判明している。ストレスを完全に避けるのは難しいが、ストレスをそのままにしていると、脳はダメージを受ける一方であるため、ストレスを和らげる方法を覚えておくことを遠藤さんはすすめている。
遠藤さんがすすめている、ストレスを和らげる方法は次の4つだ。
・1～3分ほどゆっくり深呼吸する
・太陽の光を浴びながら5～10分散歩する
・5～10分ほど、音楽を聴いたりペットと遊んだり、好きなことをする
・誰かとおしゃべりをする
「どれも簡単な方法なので、ストレスを感じたら試してみてください。ストレスを上手にコントロールできるようになれば、ストレスによる脳へのダメージを遠ざけられるようになります」
小さな楽しみを大事にする
笑ったり、ワクワクしたりするだけでも脳は元気になるため、「小さな楽しみ」を感じられるように意識してみよう。楽しいと感じるときに分泌されるドーパミンは、やる気や集中力を高め、物事を覚えたり、学んだりする力を強める作用がある。
「どんな小さなことでも、『楽しい』と感じられれば、脳には大きなプラス。散歩しながらきれいな花を見つけたり、好きな歌を口ずさんだりするだけで、脳の老化にブレーキをかけることができます」
抗酸化作用のある食事が脳の衰え予防に
脳の衰えを防ぐ食事として、まずは「抗酸化」を意識したい。酸素が体で使われる際に発生する「活性酸素」は増えすぎて神経細胞を攻撃することを「酸化」と呼ぶ。脳は体重の2％ほどの重さしかないのにも関わらず、使う酸素の量は体全体の20％を占めており、非常に酸化しやすい臓器なのだ。
そこで、抗酸化作用のある食べ物を食事に取り入れることで、脳を酸化から守ることが期待できる。抗酸化作用のある食べ物はさまざまあるが、カレーのスパイスでもあるウコン（ターメリック）に含まれるクルクミンという成分は、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持ち、脳の神経細胞を守る効果が期待されている。
「高齢になるとカレーをつくるのが面倒に感じるかもしれませんが、レトルトでも十分効果が期待できるので、週に1回はカレーを楽しんでみてはいかがでしょうか」
シークワーサーや緑茶も抗酸化成分が豊富
カレーのほかには、シークワーサーや緑茶も脳の衰え防止によいとされている食べ物だ。
シークワーサーの特に皮に多く含まれるノビレチンという抗酸化成分は、神経細胞を保護し、記憶力や学習能力の低下を抑える可能性があると、複数の大学の研究で示されている。また、緑茶に含まれるカテキンも強力な抗酸化作用を持ち、脳の酸化ストレスを軽減するという。
「ブルーベリーやサーモン、くるみ、ブロッコリー、ダークチョコレート（カカオ70％以上）なども抗酸化作用が豊富な食べ物です。大切なのは、特定の食材に頼りすぎず、色とりどりの食材をバランスよく食べることです。週に1、2回のカレーやシークワーサージュース、緑茶を楽しみながら、毎日の食事に少しずつ取り入れてみてください」
抗炎症作用も重要
ウイルスや傷から体を守るための反応である炎症が体の中で慢性化している状態を「慢性炎症」という。これが脳で起こると、脳の神経細胞がダメージを受けてしまう。そこで、「抗炎症」作用のある食べ物も取り入れたい。
例えば、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、脳の炎症を抑え、神経細胞を保護する働きがある。また、ブロッコリーやほうれん草、トマトなどの緑黄色野菜にも炎症を抑えるビタミンなどの栄養素がたくさん含まれている。
「ベリー類もおすすめです。ブルーベリーやストロベリーには、ポリフェノールという成分が豊富で、脳の炎症を抑え、記憶力をサポートしてくれます。さらに、オリーブオイル、ターメリックやショウガなどのスパイス類、緑茶などにも強力な抗炎症作用があります」
脳のゴミをためない「抗アミロイド食」
脳の老化の原因とされ、脳のゴミとも呼ばれる「アミロイドβ」というたんぱく質。これをためない抗アミロイド食として、「MIND食」という食事法が推奨されている。
MIND食とはギリシャなどの食文化に由来する、野菜や魚、オリーブオイルを中心とした「地中海食」と、高血圧を防ぐために考えられた食事法である「DASH食」を組み合わせたもの。脳によい食品を摂り、脳に悪い食品は控えるという考え方に基づくのが、MIND食だ。
脳にいい食品として推奨されているのは、緑黄色野菜、その他の野菜、ベリー類、ナッツ類、豆類、全粒穀物、魚、鶏肉、ワイン、オリーブオイル。控えたほうがよいとされているのは、赤身肉、加工食品、バター・マーガリン、チーズ、甘いもの、揚げ物やファストフードだ。
「MIND食は摂取回数が指示されていますが、その数字にしばられることなく、好きな野菜や果物を多めに、魚やナッツ類をときどき取り入れて、加工食品や甘いものを少し控える。そんな簡単なことから始めてみましょう」
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