いくらかかる?認知症母の遠距離介護1か月の費用を大公開!
東京―岩手と遠距離で、認知症の母の介護している工藤広伸さん。家族の目線で”気づいた””学んだ”数々の介護心得をブログや書籍などで公開し話題となっている。シリーズ第4回では、工藤家の介護費用を教えてもらった。お金の心配は介護にはつきもの。「しれっと」をモットーとする工藤さんの介護サバイバル術とは? 特に遠距離介護の人は必見!
月々の介護費用、平均は7.9万円。我が家の場合は?
認知症で、シャルコー・マリー・トゥース病(以下CMT病)という難病を抱える、要介護1の母(73歳)。1か月の介護費用を、公開します。
公益財団法人 生命保険文化センターの2015年調査によると、月々の介護費用の平均額は7.9万円だそうです。また、ベッド購入や住宅改修などの一時費用の平均額は80万円で、介護の平均期間は4年11ヶ月というデータがあります。これらから、1人にかかる介護費用の総額を計算すると、546.1万円になります。
わが家の場合、祖母は90歳で亡くなりました。73歳の母が、同じだけ生きると考えれば、介護は4年11ヶ月では終わりません。介護費用の平均額はあくまで目安であり、各家庭によって大きく変化するものです。
●1か月の介護費用リスト
下表は、わが家の1か月の介護費用です。特徴として、遠距離介護であるため交通費が約半分を占めています。
科目/費用
交通費(新幹線バス代)/37,000円
認知症の薬、健康食品/10,000円
訪問介護(週2回:ゴミ捨て・買い物・デイ送り出し)/2,000円
訪問リハビリ(週1回)/3,000円
訪問介護(隔週1回:服薬管理、点滴)/3,000円
デイサービス(週2回)/13,000円
病院通院(月1回)/2,000円
レンタカー(通院のため)/3,000円
合計/73,000円
■交通費:ネット予約で毎月約2万円オトクに!
月2回、東京から岩手県盛岡市に帰省しています。東北新幹線の指定席を、駅で通常購入すると、片道約14,000円です。「えきねっと」というJR東日本のネットサービスを使うと、最大で35%Offになります。割引がないと、1か月56,000円ですが、37,000円で済んでいます。デメリットは、停車駅が増え、1時間余計にかかることです。深夜バスと比較しても、1,000~2,000円しか差がないので、体力的にラクな新幹線を利用しています。
■訪問介護:デイサービスに行きたくない!と言われないために
週2回、ヘルパーさんが家に来ます。母は足が不自由なので、ゴミ捨てをお願いしています。同じ日に、デイサービスの送り出しもお願いしています。以前、デイサービスに行きたくないとゴネたことがあり、家族ではなく第三者のいう事なら聞いてくれるだろうということで、ヘルパーさんが見送ります。
買い物に関しては、冷蔵庫の在庫調整をお願いしています。自分で買い物する日もあるのですが、重いモノは運べませんし、足りないモノもあるため、ヘルパーさんが在庫リストに基づいて調整します。
■訪問リハビリ:活動量をキープするために
CMT病は、手足の筋萎縮があります。つま先に力が入らないため、スリッパが脱げてしまいますし、握力不足でペットボトルのふたが開けられません。認知症が原因で、やる気がないこともあり、活動量が低下しがちです。理学療法士さんに歩行訓練、立ち上がり訓練、筋力アップをして頂いて、活動量をキープしています。
■訪問看護:薬のセット、飲み忘れチェックのために
一番の目的は、服薬管理です。母は認知症のため、自分でお薬のセットができません。そこで、訪問看護師さんが2週間に1回、お薬のセットと飲み忘れチェックをしに、家まで来ます。体温や血圧、体調もチェックしてくれるので、安心です。
■レンタカー:通院するために
車は保有しているだけで、車検や自動車税などの維持費が発生します。車を利用するのは、病院へ行くときぐらいなので、格安レンタカーを借りた方が節約になります。大手レンタカーで借りるよりも、半額程度で済んでいます。
→介護のお金|頼れる制度やサービスは案外ある。不安を軽減する方法
母の年金のみでまかなう介護費用。不足分は貯金から
これら介護費用は、母の国民年金のみでまかなっています。母は、正社員として働いていた経験がないので、年金も少なく毎月赤字です。祖母が残してくれた遺産を切り崩しながら、生活をしています。
今のところ、主介護者であるわたしの費用負担はゼロです。母も、息子にお金の負担をさせたくないと考えています。
介護者にも家族や自分の人生があるわけで、介護費用は可能であれば、介護されるご本人のお金を使ったほうがいいと思います。
先行投資が結果として節約に繋がる
亡くなった祖母の介護を1年間経験して思ったのは、「もっと早くに本人のために、お金を使えばよかった」ということでした。
子宮頸がんが見つかったあと、手術代、入院費、おむつ代と、費用は増えていきました。多くの人は、祖母のように、次々と費用が増えていく未来を想像しているかと思います。
しかし、前倒しでお金を使うことで、人生トータルで見れば介護費用を節約できるのではないかと、祖母の介護で思うようになったのです。
わたしが頻繁に家に帰ることで、母は料理や掃除をするという、親の役割を果たそうとします。そういった生活動作を維持することは、将来入るかもしれない、介護施設への入居時期を先延ばししていると考えています。
認知症のお薬も、早期から先行投資することで、進行を遅らせていると思っています。
交通費など自分に関わることは節約し、母に対しては先行投資を行うことで、人生トータルでは節約をするという「節約しない節約術」を現在も実践し、母は安定しています。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸 (くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)