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健康

脳の老化対策で実践したい「デュアルタスク」、家事をしながらや歩きながらでも!「足踏み引き算」「しりとりウォーキング」も有効

 脳の老化に備えて前もって準備しておきたい「予備脳」について、著書の『こうして脳は老いていく』(アスコム)で提案している名城大学特任教授の遠藤英俊さん。遠藤さんによると、普段の生活の中で「デュアルタスク(二重課題)」を行うことで、脳を鍛える効果をより高めることができるという。どんなデュアルタスクを行えばいいのか、詳しく教えてもらった。

教えてくれた人

遠藤英俊さん/名城大学特任教授

 えんどう・ひでとし。聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授。認知症学会専門医、日本老年医学会老年病専門医。滋賀医科大学医学部卒、名古屋大学老年科で医学博士を取得。国立長寿医療研究センターで長寿医療研修センター長を務める。2021年、老年病や認知症に関する専門的医療を提供する「いのくちファミリークリニック」を開院。著書に、『こうして脳は老いていく』(アスコム)など。

2つのことを同時に行う「デュアルタスク」

 「デュアルタスク(二重課題)」とは、2つのことを同時に行うトレーニングで、体を動かす「運動」と、頭を使う「認知課題」を同時に行うものだ。認知課題といっても、しりとりや足し算・引き算など、難しいものである必要はない。しかし、本来ひとつのことに集中するようにできている脳にとって、体を動かしながら問題を解くといつもより難しく感じるものだそうだ。

「この難しさが、脳にとっては大きな刺激。脳の神経細胞を密にして予備脳を鍛えるポイントになります。当然ながら、難しいデュアルタスクほど、予備脳がより強くなるということです」

デュアルタスクの効果

 デュアルタスクによって認知機能が向上することは、さまざまな研究で明らかになってきているという。認知症予防のための運動プログラムである「コグニサイズ」を提唱している国立長寿医療研究センターによると、軽度認知障害高齢者に、体操や運動に認知課題を採り入れた複合的プログラムを行うと、認知機能の維持、改善に効果があったという。

「大阪市立大学(現・大阪公立大学)での運動経験のない高齢者を対象とした研究によると、デュアルタスクのほうが、運動だけの人よりも、注意力、理解力、記憶力などの認知機能が改善したという報告があります」

日常生活の中で簡単にできるデュアルタスク

 デュアルタスクは1度で大きく予備脳を強化するものではないため、日々継続することが大切だ。そのため、まずは続けやすい簡単なデュアルタスクから始めてみよう。遠藤さんはまず、掃除をしながら歌を歌ったり、料理をしながら知人の名前を挙げたりするようなタスクをすすめている。このほか、洗濯物をたたみながら知っている果物をたくさん言う、といったデュアルタスクもある。

「あいうえお順とか制約をかけると難しいので、思い出す順に名前を挙げていきましょう。ゆっくりでかまいません」

「足踏み引き算」でややレベルアップ

 簡単なデュアルタスクに慣れてきたらぜひ取り組みたいのが、有酸素運動と組み合わせたデュアルタスクだ。遠藤さんがすすめているのは、足踏みをしながら引き算をする「足踏み引き算」だ。

 やり方は簡単で、その場でゆっくり足踏みをしながら、「100、97、94……」と100から3ずつ引いていくだけ。簡単に答えられるようになったら、引く数字を変えてみよう。足腰に自信がない場合は、椅子に座ったまま足踏みしても問題ない。

「3~10分程度の簡単なトレーニングです。わざわざ時間をつくるほどではなく、隙間時間で十分です。余裕がある方は、1日に2回、3回行ってもかまいません」

「足踏み引き算」に慣れたら「立って座って奇数」

 「足踏み引き算」に慣れてきたら、いすにゆっくり座ったり、立ち上がったりを繰り返しながら、奇数だけを数えていく「立って座って奇数」にも取り組んでみよう。奇数に慣れたら偶数だけを数えるなど、数える数字のルールを変えてトライを。

「足腰に自信がない人は、イスをもうひとつ前において背もたれに手をそえて行ってもかまいません」

しっかり取り組むなら「しりとりウォーキング」

 ややきつい有酸素運動と認知課題を組み合わせたデュアルタスクなら、さらに高い効果が期待できる。遠藤さんがすすめる「しりとりウォーキング」は、1回あたり30分程度を目安に、しりとりをしながらやや速いスピードで歩くもの。

 しりとりではなく、赤いもの、黄色いものなど、その日のテーマを決めて、テーマに合ったものを探しながら歩くのでも問題ない。

「少し息が弾むけれども会話はできるレベルの運動です。ウォーキング(関節にやさしい水中ウォーキングでもかまいません)なら、ただ歩くだけでなく、やや速めのペースで歩く。ジョギングやエアロビクス体操などもいいと思います」

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