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健康

《朝1分41℃のシャワーで加齢臭対策も》不調改善に役立つ入浴法 風邪の時は「38~40℃のお湯に5分間」、高血圧・低血圧の人が注意すべきことは?

 風邪をひいているときはお風呂に入らないほうがいいと言われることも多いが、「風邪のときはむしろ入浴したほうがいい」と話すのは、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)を上梓した、温泉療法専門医の早坂信哉さん。風邪のときの入浴の仕方とシニアが気になる不調にあわせた入浴方法について、詳しく教えてもらった。

教えてくれた人

早坂信哉さん/温泉療法専門医

 はやさか・しんや。温泉療法専門医、博士(医学)、東京都市大学教授。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て現職。7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた”入浴のスペシャリスト”で、日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、日本銭湯文化協会理事、中央温泉研究所理事、日本温泉気候物理医学会理事、日本入浴協会理事も務める。著書に、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)など。

入浴が風邪の回復を後押しする

 従来は、風邪のときは入浴してはいけないと言われることも多かったが、早坂さんによると、それは当時の住宅事情による部分が大きい可能性があるという。入浴自体で風邪が悪化するわけではないが、今ほど断熱効果の高い住宅ではなかったため、入浴後の部屋のすきま風などで「湯冷め」することが問題視されていた可能性が高い。

 一方、現代の住宅は断熱性が高く、湯冷めの懸念も小さいため、早坂さんはむしろ入浴をすすめている。

「風邪のウイルスは高温や湿気に弱いため、入浴することで回復を早めることが期待できるからです。実際、入浴によって血流がよくなり、免疫細胞が活性化して免疫力が高まるということが研究でもわかっています。つまり、入浴は風邪の回復を後押ししてくれるのです」(早坂さん・以下同)

風邪のときの入浴方法

 ただし、風邪をひいたときの入浴にはポイントがある。体を温めたほうが良いからといって高温のお湯に長く浸かるのではなく、「38~40℃のお湯に5分間浸かる」のが重要だ。41℃以上のお湯は交感神経を強く刺激し、免疫細胞の働きが一時的に抑制されてしまい、回復が遅れる可能性がある。また、長く入るとその分汗も多くかくため、体内の水分やミネラルが失われ、体力の消耗につながってしまう。

 そのため、風邪の時は38~40℃の適温のお湯に5分間だけ浸かって、回復力を下げないようにしよう。さらに、体が冷えないうちに布団に入るのもポイントだ。

「入浴で体が温まった後は、保湿と水分補給を済ませ、なるべく早めに布団に入りましょう。風邪を引いているときには、免疫力を落とさないためにも、体を冷やさず、しっかり休息を取ることが何より大切です」

熱があるときはNG

 風邪からの回復を早めてくれる入浴だが、熱が37.5℃以上あるときは入浴をひかえるようにしよう。早坂さんによると、全国の訪問入浴介護サービス利用者を対象とした大規模調査では、入浴前に体温が37.5℃以上あると、入浴後に体調不良を起こすリスクが16.47倍に高まることがわかったそうだ。

 また、「なんとなく体調がすぐれない」と感じたときも注意が必要だ。

「自分自身が感じている健康状態は『主観的健康観』と呼ばれますが、こうした”なんとなく変”という感覚には、医学的な根拠があることも多いのです。たとえ熱や咳の症状がなくても、『いつもと違う』『体が重い』と感じたときは、無理に入浴しないようにしてください」

シニアが抱える不調別の入浴方法

 さらに、シニア世代が慢性的に抱えていることも多い不調別の入浴法についても教えてもらった。

高血圧の人の入浴の注意点

 血圧が高いときは入浴をしないほうがいいと言われるが、早坂さんによると、「最高血圧が160mmHg以上、あるいは最低血圧が100mmHg以上」のときは、基本的に入浴をしないほうがいいという。高血圧の場合、入浴時の温度差や、熱いお湯で交感神経が強く刺激されることで血圧が急上昇しやすく、事故のリスクが高まってしまうためだ。

 一方で、本来入浴は、高血圧の人にもメリットがある。血管の硬さが高血圧の一因であるためだ。

「入浴すると血管のしなやかさを取り戻す作用のある、一酸化窒素(NO)という物質が産生されます。つまり、入浴は高血圧の改善に有効なのです」

高血圧の人の入浴のポイント

 高血圧の人の入浴のポイントは、温度差が大きくならないよう、冬は脱衣所や浴室を暖めておき、お湯の温度は38~40℃ほどに設定すること。お湯に浸かる際は、体をお湯の温度に慣らすため、丁寧なかけ湯を行い、10分間全身浴をするようにしよう。また、入浴前に血圧の測定も必ず行い、血圧が高すぎる場合は無理せずシャワーのみにするのが大切だ。

「高血圧の治療をしている方からは、入浴への不安の声を聞くこともあります。しかし、正しく入浴すれば怖がる必要はありません。むしろ、高血圧を改善することが可能なのです」

低血圧の人の入浴のポイント

 低血圧の人は、高血圧の人と比べ、入浴によるリスクは低いとされているが、立ち眩みや失神など、一過性の意識障害には注意が必要だ。最も注意すべきは、湯船から出る瞬間。湯船に浸かっている間は、体温の上昇で血管が拡張し、血圧が低下しているうえ、水圧で血流がある程度保たれているが、湯から出ると水圧が急になくなり、姿勢の変化で血液が一時的に下半身にたまりやすくなるためだ。

 これにより、脳への血流が減少し、「起立性低血圧」と呼ばれる状態になることがある。目の前が真っ暗になり、意識を失って倒れてしまうため、浴室内で頭をぶつけるなどの大きな怪我をする可能性がある。

「そこで私が低血圧の方にすすめているのが、『湯船から出る前に冷たい水で手を洗う』という方法。交感神経を軽く刺激して血圧の急な低下を防ぐことができます。手や顔に冷たいシャワーをかけても同じ効果を得られます。湯船から急に立ち上がらないことも大切です。手すりを使って、一度湯船のふちに腰かけて血圧を落ち着かせてからゆっくり立ち上がります」

加齢臭にも入浴は効果あり

 シニアの多くが悩む「加齢臭」。実は加齢臭も入浴で改善が可能だという。やり方は、朝1分、41℃のシャワーを浴びるだけ。加齢臭は、皮脂に含まれる脂肪酸である「9-ヘキサデセン酸」が空気や常在菌に触れることで、加齢臭の原因物質「ノネナール」が生じ、においが発生するが、皮脂の分泌が多い部分にシャワーをあてることで、脂肪酸やノネナールの元を洗い流すことができる。

「お湯を当てると効果的なのは、汗や皮脂がたまりやすく、加齢臭の発生源となりやすい『額、胸の間、背中の真ん中、わきの下、足の裏』です。ただし、1分を超えて長く浴びると汗をかき始め、かえって皮脂が再分泌されてしまうため逆効果です」

入浴日記で体調の変化に敏感になれる

 早坂さんは、入浴の健康効果を高め、実感するため、日々の体調の変化を可視化する「入浴日記」をつけることをすすめている。変化を記録することで、改善点が見えてくるうえ、数値が良くなってくるとモチベーションにもなるためだ。

 入浴日記に記録するのは、入浴したかどうかや入浴の時刻、体重や血圧、食事、就寝時間、睡眠時間といった、客観的なデータ。さらに、「なんとなく調子が悪い」「今日は体が軽い」といった、主観的なデータも残しておくのがおすすめだ。

「こうした主観的な感覚は、血圧や体温などの数値よりも先に、異変を知らせてくれることがあります。本人の『いつもと違う』という感覚が病気の早期発見の鍵になることが多く、医療現場でも重視されています」

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