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健康

《事故や体調不良を起こさない入浴法》「山型」「谷型」の2種類あるヒートショック、それぞれの特徴と注意点は?

 健康促進に役立つ入浴だが、気を付けないと事故や体調不良につながることもある。実際、65歳以上においては、交通事故よりも風呂場での死亡事故のほうが多いというデータもあるほどだ。そこで、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)を上梓した温泉療法専門医の早坂信哉さんに、事故や体調不良を起こさない、安全な入浴のポイントを教えてもらった。

教えてくれた人

早坂信哉さん/温泉療法専門医

 はやさか・しんや。温泉療法専門医、博士(医学)、東京都市大学教授。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て現職。7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた”入浴のスペシャリスト”で、日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、日本銭湯文化協会理事、中央温泉研究所理事、日本温泉気候物理医学会理事、日本入浴協会理事も務める。著書に、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)など。

何となく体調が悪いときは無理して入浴しないこと

 まず気を付けたいのが、主観的な感覚を無視しないことだ。「なんとなく体調が悪い」と感じたとき、それは気のせいではなく体からのSOSであり、「入浴をやめておこう」と判断することが一番の事故予防となる。

 特に、次のようなときは無理な入浴は禁物だ。
・疲れが抜けず、体が重い
・体に力が入らない(脱力感がある)
・強い頭痛がある
・だるさがある
・めまいや吐き気がする
・息苦しさがある
・脈がとぶ、心拍が乱れる感覚がある
・胸が痛い、重苦しい

「私たちに備わっている『違和感を察知する力』は、日々の健康を支える大切な感覚です。2~3日、湯船につからなくても体調をくずすようなことはありません」(早坂さん・以下同)

湯船で意識が曖昧になってきたら栓を抜く

 もし湯船に浸かっているときに意識がボーっとしてきたら、とにかくすぐに湯船の栓を抜くことが大切だ。湯船の栓を抜けば、意識を失ったとしてもお湯が徐々に減るため、溺水事故を防ぐことができる。早坂さんは、入浴事故の事例を調査してきた結果、「湯船に浸かっていたかどうかが生死を分ける」と感じているそうだ。

「意識を失っても、短時間で回復するケースは多いものです。しかし、お湯が張られていたことで顔が沈み、呼吸ができずに命を落としてしまう──栓を抜いていれば助かっていた可能性のある事故が、決して少なくないのです」

湯船から出るときは事故が起こりやすい

 また、「湯船から出るとき」も事故が多いため注意が必要だ。湯船の中では、温熱作用で血管が拡張し、水圧で血管がほどよく圧迫されているが、立ち上がるとその圧力が解放され、血管が拡張して血圧が急激に低下するためだ。

「『起立性低血圧』と呼ばれる状態で、脳への血流が不足し、立ちくらみや意識消失、それにともなう転倒事故につながることがあります」

気を付けたい2種類のヒートショック

 この湯船から出る瞬間に起こる急激な血圧の変化は「ヒートショック」と呼ばれるもの。早坂さんは、ヒートショックには2つのタイプがあると考えているという。

山型ヒートショック

 1つ目が「山型ヒートショック」だ。これは、冬などに寒い脱衣所から熱い湯船に入ることで血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすタイプのもので、高齢者や高血圧の人に多いヒートショックだ。

「近年、『ヒートショックに注意』ということを見聞きすることが増えたと思いますが、多くの場合はこの山型ヒートショックの話をしています。ですから、みなさんがヒートショックと聞いてイメージするのは、こちらのタイプでしょう」

谷型ヒートショック

 もう1つが「谷型ヒートショック」だ。これは湯船から出る時に、血圧が一気に下がることで起こるタイプのもので、立ちくらみなどを引き起こす。山型ヒートショックと異なり、年齢や持病の有無にかかわらず、だれにでも起こり得ることだ。

「谷型ヒートショックの大きなリスク要因に『脱水』があります。入浴中に汗をかくと血液の粘度が高まり、脳への血流が減少しやすくなります。すると、立ちくらみや意識障害を引き起こしやすくなるのです。予防のため、入浴前にコップ1杯の水分を飲んでおきましょう」

事故を避けるためのお風呂の上がり方

 谷型ヒートショックを予防し、事故を防ぐためには「湯船からの出方」が重要だ。大前提はいきなり立ち上がらないことで、まずは湯船のふちや手すりにつかまり、体を起こして数秒待つ。これにより、血圧の急降下を防ぐことができる。

 そのうえで、軽くおじぎをするように頭を低くし、前かがみになることで、脳の血流を保つ。そして最後はゆっくり立ち上がって湯船から出るといい。

「場合によっては、いったん湯船のふちに腰かけて、ひと呼吸ついてから2段階で立ち上がるようにします」

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