倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.98「亡き夫の妹と1年ぶりの再会」
漫画家の倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)が、すい臓がんで旅立ったのが2024年2月。葬儀などのサポートをしてくれたのが叶井さんの妹さんだった。しばらくぶりに彼女と再会して感じたこととは?
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。最新著『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』が発売中。
夫の妹に再会したときのこと
夫の妹、Sさんに会いました。
年上のご主人と2人の子持ち、都内でバリバリ働いているSさんは、夫の4歳年下で私と同い年。お互いの家の中間地点辺りにある洋風惣菜が評判のカフェで、一緒にお昼をとることにしました。
Sさんは、夫の晩年、私の不在時のフォローに何度か家に来てくれていました。そして夫が亡くなってからは、呆然としてほとんど使い物時ならなかった私に代わり、葬儀の取り決めや事務作業など積極的に動いてくれて大変助けられました。
「お久しぶり」
一年ぶりくらいの再会です。まずはお互いの家族のことなど近況を報告し合いました。
「そういえば、俊太郎がハワイ時代にUFO見た話を詳しく聞いたよ」
Sさんに、夫の若い頃の友人Aさんに会った話をしました。
「その話、私も聞いたことある。話半分でだけど」
Sさんは笑いながら言いました。
「俊ちゃんからは、その手の怪しい話何度も聞いたなあ。『骨おじさん』の話とか」
「骨おじさん?聞いたことないなあ」
Sさんは夫にまつわる話をいろいろしてくれました。妹としてモテる兄は誇らしい気持ちもあったけど、「紹介して」と言われると困ったとか。子どもの頃からモテて、バレンタインデーにチョコレートを毎年どっさりもらっていたけど、手作りは絶対口にしなかったとか。
「そういえば、私が作ったスイーツも全然喜ばなかったな」
夫は私の手作り菓子を、「味が薄い」「見た目が怖い」などと言って積極的には食べませんでした。既製品のお菓子は大好物で毎日のように食べていたのに。別に私はそれをまったく気にしなかったけど、傷つく人は傷つくだろうし、そういうのって相性だよなあと思っていたものです。
彼女の目が、目玉そのものが…
Sさんと話をしながら、時折ぐっと込み上げてくるものがありました。
一年前にはあまり感じなかったことですが、Sさんは目がとても夫に似ているんです。目の形というよりも、目玉そのものが。娘も夫に似ていますが、Sさんの方が夫に年齢が近いせいか、私が馴染んだ夫を彷彿とさせます。
話している最中、彼女が私を見る目が「ああ、夫の目もこんな感じだった」とリアルに思い出してしまい、でもそれを彼女には言えなくて、涙を堪えるのに往生しました。
どうしても我慢できずこぼれてしまった涙は、きっと彼女は夫の昔話によるものだと解釈したと思います。実際それもあったのですが、彼女自身に夫を感じて泣けてしまったのは自分でも想定外でした。
気がつくと3時間ほどがあっという間に過ぎ、また会うことを約束してそれぞれ帰途に着きました。夫の友だちと会うのとはまた全然違う、経験したことのない感覚を味わった日でした。
