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健康

《認知症リスクを下げるとの調査結果も》健康寿命を伸ばすカギは「入浴」 7つの健康効果を温泉療法専門医が解説

 サプリメントを摂ったりマッサージに行ったり、健康のためにお金をかけている人は多いが、実は特別にお金をかけずとも、健康によい影響を得られるのが「お風呂」だ。「入浴は私たちの健康に、想像以上にすばらしい効果をもたらしている」と、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)を上梓した温泉療法専門医の早坂信哉さんは話す。そこで、入浴の健康効果について、詳しく解説してもらった。

教えてくれた人

早坂信哉さん/温泉療法専門医

 はやさか・しんや。温泉療法専門医、博士(医学)、東京都市大学教授。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て現職。7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた”入浴のスペシャリスト”で、日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、日本銭湯文化協会理事、中央温泉研究所理事、日本温泉気候物理医学会理事、日本入浴協会理事も務める。著書に、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)など。

お風呂に入ると健康寿命が延びる

 お風呂が健康によい、というのは何となく感じている人も多いだろうが、早坂さんによると、お風呂が健康寿命を延ばすことを証明するデータはいくつもあるという。

 例えば、全国の65歳以上の高齢者1万3786人を対象に3年間追跡した調査では、冬に週7回以上湯船に浸かっていた人は、週2回の人と比べて、新たに要介護認定を受けるリスクが29%も低い結果となったそうだ。また、65歳以上で要介護認定を受けていない約7500人を9年間追跡した調査では、夏に毎日湯船に浸かる習慣がある人は、そうでない人に比べ、9年後の認知症リスクが26%も低いという結果になった。

「要介護や認知症などは、どれも健康寿命を縮める要因です。つまり、入浴で寿命を縮めるリスクを減らせる=入浴で健康寿命は延ばせる、ということです」(早坂さん・以下同)

お風呂の健康効果の8割は「温熱作用」

 お風呂には、「温熱作用」「静水圧作用」「浮力作用」「清浄作用」「蒸気・香り作用」「抵抗性作用」「開放・密室作用」といった7つの作用がある。なかでも、温かいお風呂に入ることで、体に熱が加えられ、引き起こされる生理的反応のことを指す「温熱作用」が、特によい健康効果をもたらす。それは、入浴で体が温まると「深部体温が上がる」ためだ。

「深部体温とは、脳や内臓など体の中心部の温度のことです。深部体温を上げるには、厚着などで皮膚の表面を温めるだけでは不十分で、血液を温めて全身に巡らせる必要があります。実は入浴は、血液を短時間で温め、全身に巡らせることができるとても効率的な方法なのです」

深部体温が上がると血流が改善され、不調の元が断たれる

 お風呂に入ることで深部体温が上がると、血管が広がるため、温まった血流がよく巡るようになる。それにより、冷えが改善されるのはもちろん、あらゆる不調の原因を断つことにつながるそうだ。

「血液は、酸素や栄養を全身に届ける”運び屋”であり、老廃物を回収する”お掃除係”でもあります。血流がよくなれば、それだけ酸素や栄養の供給がスムーズになりますし、疲労物質など老廃物の回収も効率的に行われます。つまり、体が病気になりにくい、よい状態に保てるというわけです」

血流をよくするには血管の健康も重要

 血流を改善するためには、通り道となる血管の健康も必要だが、血管は放置していると老化する一方だ。しかし、入浴は血管の老化スピードも緩やかにしてくれる。湯船で10分温まると「一酸化窒素(NO)」という物質の産生が促進されるが、NOは血管を広げて血流を促進し、血管のしなやかさを保つ働きがあるためだ。

「湯船に浸かって体が温まると、血管が一時的に広がり、お風呂から上がって体が冷めてくると血管は自然に収縮します。この『拡張』と『収縮』の繰り返しは、血管にとってストレッチのような刺激となり、しなやかさを保つのに役立ちます」

むくみ解消やリラックス効果も

 温熱作用以外もさまざまな効果をもたらす。例えば「静水圧作用」は、水に浸かったときにかかる圧力である「静水圧」が体を締め付け、下半身に溜まった血液やリンパ液を心臓へ押し戻すというもの。これには、むくみの解消や血行改善を促すことが期待される。

「温熱作用と静水圧作用という2つの力が同時に働くことで血液の巡りはよりスムーズに。入浴でしか得られない相乗効果です」

「浮力作用」や「開放・密室作用」でリラックス

 お湯に浸かると体が軽く感じる「浮力作用」では、リラックス効果がある。浮力があると関節や筋肉への負担がやわらぎ、体の緊張がほぐれてリラックスしやすくなるためだ。また、お風呂場で衣服を脱いで裸になるという、日常とは少し異なる空間に身を置くことによる「開放・密室作用」も心のリセットに役立っている。

「外の世界から切り離されたその環境に身を置くことで、心の疲れが癒されていくでしょう。お風呂は、誰にも邪魔されず、自分だけの時間を持てるとても貴重な場所です」

病気の予防にも役立つ

 入浴は、皮膚の表面についた汚れや余分な皮脂、古い角質や雑菌など、全身をくまなく洗い流せるほか、毛穴が開くため、洗顔やシャワーでは落としきれない汚れまで除去することができる。これを「清浄作用」と呼ぶが、皮膚を清潔に保つことは感染症などの予防に必要だ。

 また、お湯から立ち上る蒸気は鼻や喉の粘膜をうるおしてくれるが、これを「蒸気・香り作用」と呼ぶ。蒸気・香り作用も病気の予防に役立っている。

「粘膜にある繊毛細胞は、乾燥した状態だとウイルスや細菌を排除する働きが鈍くなってしまいますが、湿度が高まると活発になり、異物を排除する力が高まります」

意外にも筋トレ効果がある

 さらに、入浴には筋トレ効果もある。「抵抗性作用」によるもので、お湯の中で体を動かすと、いつもより重く感じるように、陸上の約3~4倍の負荷(抵抗)がかかっているためだ。この抵抗性作用によって、ゆっくりとした動きでも、筋肉に適度な刺激を与えることができる。

「浮力もあり、関節への負担を抑えながら筋肉に負荷をかけられるので、湯船の中で手足をゆっくり動かすだけでも、ちょっとした筋トレ効果が期待できます」

どうしてもシャワーで済ませたい場合

 入浴は健康にいいが、それでもどうしても疲れたときなどは、シャワーだけで済ませたいと思うこともあるだろう。そんなときは、シャワーヘッドを体に近づけたり、水量を増やしたりして、体に勢いよく当たるようにするのがおすすめだ。

「『打たせ湯』のように、肌の表面を刺激して血行をよくする効果をねらえます」

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