60代夫婦の日常を発信《YouTubeすみちゃんねる》3本目の動画がバズった理由「フレンチトーストを焼いているだけなのに…」
穏やかな夫婦の日常生活の動画が人気を集めているYouTube「すみちゃんねる ~シニア夫婦~」。OVER60のシニアインフルエンサーの人生に迫る企画、「すみちゃんねる」を発信するYouTuber久美子さん(66才)がYouTubeを始めたきっかけとは?
すみちゃんねる・久美子さん/プロフィール
1959年徳島生まれ、66才。2019年、99才の寿美子おばあちゃんの様子を動画投稿するYouTubeチャンネル「すみちゃんねる」を開設。現在はシニア夫婦の日常や介護のことを配信し、幅広い世代から支持を集め、現在のチャンネル登録者数は約2万4000人。
Youtube「すみちゃんねる~シニア夫婦~」https://www.youtube.com/@sumi-ch
インスタ「sumi_w7すみちゃんねる」https://www.instagram.com/sumi_w7/
YouTubeは家族や親族への「ビデオレター」
YouTube「すみちゃんねる ~シニア夫婦~」(以下「すみちゃんねる」)は、シニア夫婦の暮らしや99才の寿美子おばあちゃんが入所している施設を訪問する様子などを動画に投稿し、多くのファンを獲得している。
――YouTubeを始めようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。
99才の寿美子おばあちゃんを長らく介護しているんですが、彼女のことを記録して、親戚にビデオレターのように見せようと思ったからです。よく視聴者から『寿美子さんは実のお母さんですか?』や『旦那さんのお母さんですか?』と聞かれるんですが、実は私のおば。おばと言っても血のつながりはなく、実の父親の兄の妻、つまり義理のおばにあたります。
――なぜ、義理のおばである寿美子さんを撮ることになったのですか。
おばには認知症の症状があって、意思の疎通がうまくできないことが多いのですが、愛犬のコーギー、マロに触れているときはとても幸せそうなんです。
ひたすら楽しそうに犬をもふもふして、犬の方が『もう嫌だからやめて』という状態になって、一度やめても、またもふもふと触り始める。その様子が微笑ましくて動画に撮っていたので家族や親戚に見せるためにYouTubeにアップしていたんです。
多くの人に見てもらえるなんて夢にも思っていなくて、ただひたすら家族間の“ビデオレター”のような感じで。寿美子おばさんの動画を上げているから『すみちゃんねる』。2019年から細々と始めました。
最初はおばを撮っていたのですが、2020年3月、おばが94才のときに特別養護老人ホーム(特養)に入ることが決まりました。それからすぐにコロナ禍に突入して緊急事態宣言が出て、出かけることができなくなりました。娘や息子、4人の孫たちに会えなくなってしまったので、今度は私たちが元気にしている姿を撮って、YouTubeに投稿しようと思い立ちました。
本格的に取り組んだ3本目の動画が「バズった!」
――いまやチャンネル登録者数2万3000人を超える人気YouTuberとなられたわけですが、何がきっかけで注目されるようになったのですか。
「いろんな人のYouTubeを見ているうちに、ライフスタイルを紹介する動画がすごく素敵だなと思って。Vlog(ブイログ)という言葉を知って、自分もやってみたいと思い動画の撮り方や編集を勉強しながら、投稿を始めました。日々の動画を撮って「シニアVLOG」と題して、日常生活をアップし始めました。
※「Video Blog」の略で、動画版のブログのようなもの。
最初は親戚や友人だけが見ていたので登録者数は10人くらいでした。ところがYouTubeを本格的に始めて3か月頃、一気に登録者数が増えたんです。
とくに反響があったのは、フレンチトーストを作っている動画でした。VLOG を投稿し始めてから3本目の動画、2020年4月に投稿したものです。淡々とフレンチトーストを作っているだけの動画なんですよ。
これといって特別なことをしているわけでもないですし、単に朝食を作っている風景を映しているだけなんですが、投稿してから1か月後、5月には再生回数が5000回ぐらいになり、さらに6月には4万回以上の再生回数になって。本当にびっくりしました。登録者数も10人だったのが1000人、2000人とどんどん増えていき、驚きと不安が入り交じった感覚でしたね。
YouTubeも限定公開があるとは知らずに、最初から世界中に配信していたんですよ。閲覧数が増えるにつれ、「これがネットの世界か!」と驚きました。娘に『こんな感じになっているけど何やろか』とLINEしたら、「お母さん、それバズってるんやわ」と。そこで初めて、これが世にいうバズるってことかと(笑い)。
――なぜいきなりバズッたのか、心当たりはありましたか。
「不思議に思って『すみちゃんねる』で検索をしてみたんです、そうしたら、とある人気ブロガーさんがご自身のブログの中で私の動画を紹介してくれていたのを見つけたんです。
そのかたのブログによると、コロナ禍になって閉ざされた世界になって誰にも会えない、どこにも会えないようになり、家でYouTubeを見る人が増えたと。
それまでYouTubeといえば若い人が見るものだったのが、コロナ禍で一気に幅広い世代に視聴者層が広がり、シニア世代もスマホやテレビでYouTubeを見るようになった。そんな中でシニアの人たちが自分たちと同じ年代の人がどんな生活をしているかYouTubeを通して興味を持つようになったんじゃないかと分析されていて。
YouTubeを見るだけでなく、自分で動画を上げるシニア世代が増えている事例として、『すみちゃんねる』のフレンチトーストの回を取り上げてくださっていたんです。それで視聴者が一気に増えて、そこからじわじわと登録者が増えていきました。
義理のおばの認知症介護を経験
――チャンネル名の由来となった「寿美子さん」のお話を聞かせてください。
おばの介護を始めたのは20年くらい前のことです。
おじ(父の兄)とおばには子供がおらず、私は幼少期二人からとてもかわいがってもらっていました。当時、私は徳島に住んでいて、毎年夏休みになるとおじと寿美子おばさんが住んでいた奈良に遊びに行き、そこで一夏を過ごしていたんです。
あとから母に聞いた話ですが、おじは私を養女にしたいと考えていたみたいです。父はその申し出を断ったようですが、それでも何かにつけておじたちは私たち家族を気にかけてくれました。うちは父が早くに亡くなってしまったんですが、そのときもずいぶん力になってくれて。だからおじ夫婦には恩義があったんです。
私が40代後半のとき、奈良のおじから「頼むから奈良に来てくれないか」とSOSの電話がありました。何事かと思って駆けつけてみたら、おばさんが認知症で困っていると。
おばさんがお風呂の中で湯当たりして倒れて、自分も足が弱っているからとても苦労したとかで、どうにかお風呂から出して命に別状はなかったのですが、おじ1人ではどうにもならないということで、奈良に来てくれないかと相談されました。
――おばの介護するとなったとき、実のお母様はどんな反応でしたか。
当時母は70代でしたが、即座に『手伝いに行きなさい』と。あなたは子供の頃からおじとおばに大変お世話になったし、父が亡くなったときもずいぶん力になってくれたからと、母に背中を押されて奈良に行くことに決めました。
ちょうど40代後半で最初の夫と離婚したばかりだったので、わりと身軽だったこともあって、手荷物をまとめて奈良に引っ越しました。人生何が起こるかわからないものですよね。
40代後半で突然始まったおばの介護については、次回お届けする。
取材・文/廉屋友美乃
