pokkomaさん(67才)モーニングルーティン動画が145万回再生「働き詰めの人生からVlogに出会って人生が変わった」
話題のインフルエンサーに迫る企画、『pokkoma life(ポッコマライフ)』を発信する服部美智子さん(67才)さんにインタビュー。何気ない日常を丁寧に描いた動画がバズり、登録者数3万人を超える人気に。彼女がYouTubeを始めた理由とは。3回に渡りレポートします。【Vol.1/全3回】
pokkomaさん(服部美智子さん)67才/プロフィール
1958年徳島県生まれ、大阪育ち。3才年上の夫と二人暮らし。長男、次男、長女の3人の子供と5人の孫を持つ。日々の生活を丁寧に綴ったYoutubeチャンネル、Vlog『pokkoma life』が人気。著書に『60歳を過ぎてから見つける ちいさな暮らしの幸せヒント』(Gakken)がある。https://www.youtube.com/@pokkomalife
60才手前までワーカホリックだった
『pokkoma life(ポッコマライフ)』は、還暦を過ぎてからの穏やかな暮らしを丁寧に描いた動画が人気のVlog(ブイログ)だ。Vlogとは、「Video Blog」の略で、動画版のブログのようなもの。pokkomaこと服部美智子さん(以下、服部さん)は、シニア世代のVlogにおける先駆け的な存在だ。
100万再生を超える「60代モーニングルーティン」ほか、家事や掃除、料理動画など何気ない日常を切り取った美しい動画は同世代のファンも多い。
――60才で、YouTubeを始めたきっかけを教えてください。
60才になる手前で、体調を崩してしまったんです。私は根っからの仕事人間で、ずっと働いていたので、その疲れがたまりにたまっていたんでしょうね。
50代後半からは、設計士の兄が勤めていた設計事務所で事務職をしていたのですが、とても忙しくて。帰宅は夜の9時、10時という生活で、会社に寝泊まりすることもありました。振り返ってみれば、若い頃からずっとワーカホリックでしたね。
ある日、職場で倒れてしまったんです。医師はストレスが原因でしょうと。体が動かなくなって立てなくなってしまって…。『アルプスの少女ハイジ』のクララみたいな感じ、しばらく車椅子の生活でした。もうじき還暦だというのに、働き詰めで無理がたたったんですね。
思い切って仕事を辞め、しばらくは家でゆっくりして体力回復につとめました。家事をしながらのんびりとした生活を2年ほど続けていました。
YouTubeを初めて見たのはその頃でした。ちょうどその頃体力も回復したので趣味のパン作りを再開しました。パンの作り方を検索した時にYouTubeで紹介されているのを知りました。
最初はYouTubeは若い人がするもの、私とは関係ないと思っていましたが、石垣島でパン作りをされているチャンネル『コーヒーのある暮らしMocha』を観ていて、とても心地よくてVlogというものを知りました。こんな素敵な世界があるんだなと感動して、自分でもやってみようと思ったんです。ほかにも当時流行っていたミニマリストや片付けの動画もよく見ていました。
YouTubeをやるからには少しでも収益が出たらいいなと思っていましたが、最初のうちは友人や身内など登録者数は20、30人でした。収益化するには、登録者数は1000人以上、再生回数は4000以上というハードルがありましたので、これはどうなるんだろうと。
2020年3月末に1本目の動画を作ってアップしました。1か月後には登録者数が100人、ある日突然500人、2か月後には1000人を超えて、どんどん再生回数が伸びて、驚きました。1年ぐらいかけて収益が上がるチャンネルになったらいいなと思っていましたが、半年も経たないうちに3万人を達成して…。何が起きているか不思議でした。
100万回を超えるヒットコンテンツ誕生の背景
――3万人を超える人気になった理由は何だと思いますか。
「最初にアップした動画は『60代のモーニングルーティン』をテーマにしました。
当時、Vlogでは『モーニングルーティン』が流行っていたんです。40~50代の主婦が朝のルーティンワークを紹介していて、結構な反響があったみたいなんです。
私も自分と同じ世代の人がどんなモーニングルーティンをしているか見たいと思って探してみたのですが、なかったんです。60代が発信するYouTubeは、お金や健康に関するものばかりで、ライフスタイルに特化したものがなかった。それじゃあ自分で作ってみようかと思ったんです。
――朝、薄暗いうちに起きて靴下をはき、カーテンを開ける。母から譲り受けた鉄瓶でお湯を沸かし、梅酢しょうがシロップを入れた白湯を飲む。モーニングルーティンが静かな映像で流れていく。この11分57秒の映像は、現在145万再生となっている。
私の場合、人に自慢できるようなことはそんなになくて。パン作りやお菓子作りは好きですが、たまたま60代のモーニングルーティンがほかになかったから、そこに需要があったのだと思います。
――動画のテーマはどのように決めて、撮影や編集をされているんですか。
iPhoneのカメラ撮影はしていましたが、動画機能は使ったこともなくて、YouTubeチャンネルの作り方さえわからず、動画制作に詳しい知人に教えてもらいました。
「YouTubeは台本を作って、絵コンテを作ってから撮ったほうがいい」と言われたのですが、そういったやり方は私にはあまり向いていなくて。まずは自分が好きなように撮ってみようと。
暮らしの中で、「これは撮っておこう」「ここは残しておきたい」と思ったものを撮り溜めていって、その中から編集して繋げていくんです。1本の動画に3週間くらいかけてじっくり作っていますね。
――YouTubeを始めて生活は変わりましたか?
そうですね、変わりましたね。仕事を辞めて60才を過ぎて、何か集中できるものが欲しかったんです。ランチやお茶をしたり趣味の仲間を作ったり、そういうのはあまり向いていないかなあと。
長年働いてきましたので、新たなコミュニティに入ることはハードル高いと感じていて。YouTubeなら、自分ひとりでできますし、動画を発信することで社会との接点が持てます。私には向いていたんですね。
ある時、YouTube関係の方とお話する機会があったのですが、私のVlogがきっかけとなって「60代の視聴者やYouTuberが増えた」と教えてくださいました。ありがたいことだと思っています。