猫が母になつきません 第463話「けおされる」
庭仕事をしていたら見たことのない茶トラがやってきて、まるで自分の家にいるかのようなくつろいだ態度でごろんと芝生に寝転び、ごはんをくれと言うのです。あまりにも慣れた感じなのでついついベランダにフードを入れたお皿をだしてやったら、やっぱり「いつも食べてます」みたいな雰囲気で食べ始め、そこまでは穏やかな午後のひとときだったのですが、ふいに茶トラが何かに気を取られてお皿から顔を上げたと思ったら突然「ニャーーーーーッ!」と大きな雄叫びとともに二匹のガリガリの子猫が走りこんで来て、自分たちの何倍も大きな茶トラのごはんを奪ったのです。私もびっくりしましたが、茶トラはその勢いにけおされて飛び退いていました。子猫たちは食べ始めると茶トラの存在は忘れたかのようにガツガツと一心不乱。ほんとうにお腹が空いていたのでしょう。お皿はあっという間に空になり、私はおかわりを入れてやりました。おかわりもあっという間になくなりました。
実は私がこの子猫たちを見たのはこの時が初めてではありませんでした。
何日か前、クルマで出かけて家に戻ってきたときにヘッドライトのあかりの中を小さなシルエットがチラッと横切って、あまりに小さくて「ねずみかな?」と思ったのですが、玄関の灯りをつけてみると植え込みの下に子猫が隠れていました。子猫たちはとても警戒していてじーっと動かなかったので、その時はそのままにして私は家の中に入りました。そこから突然の「ニャーーーーーッ!」です。二匹はそれ以来毎日ごはんを食べにくるようになりました。小さな体で大きな雄叫びを上げながら茶トラに突進した三毛のガリガリを「隊長」、図太いのか臆病なのかよくわからないマイペースなグレーのガリガリを「ぐれ」と名付けました(仮)。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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