猫が母になつきません 第464話「けおされる・つづき」
2匹のガリガリの子猫が茶トラのごはんを奪った日、2メートルくらい離れた場所に一匹の猫が座っていました。その猫は目が金色で毛はグレーと白、2匹の母猫であることはひと目でわかりました。自分はごはんを食べようとする様子はなく、みじろぎもせずにとにかく私のことをじーっと見ています。どんな人間なのか見定めているのでしょうか。子猫にさわろうとしないか見張っているのでしょうか。でも警戒しているという雰囲気ではなくて、とても落ち着いていて小柄なのに姉御感がすごい。茶トラの次は私がけおされる番でした。きっと子猫たちが茶トラに突進する前にはうんと励まして「大きな声出して」とか言って、2匹に食べ物を得る術を教えたのでしょう。その母猫がそばで見守っていることが2匹にとって本当に心強いことだというのが伝わってきました。
2匹の勢いにびっくりして飛び退いた茶トラはと言えば、少し離れた場所に寝そべってガリガリたちが必死でごはんをむさぼっている様子を眺めていましたが、しばらくすると立ち上がって生垣の向こうに消えていきました。それ以来姿を見ていません。子猫たちの様子を見て、餌場をゆずることにしたようです。やさしい子だったんだなと思いました。
そして母猫も…それ以来姿を見せないのです。たぶんもうどこかへ行ってしまったのだと思います。
「あの人間が食べさせてくれそうね」きっとそう判断したのでしょう。その通りですとも、まんまと毎日4食たべさせていますとも。さびが母猫に置いていかれたときのことを思い出すと、こんなにやせてはいなかったので、とりあえずガリガリを脱するのが今の目標。警戒心は強いのでまだ触らせてはくれませんが、少しづつ、少しづつ。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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