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“世界最高齢のアプリ開発者”若宮正子さん(90歳)、アップルのティム・クックCEOに「会いたい」と言われアメリカへ 「なぜシニアはスマホを使わないのか?」と聞かれて伝えたこと

定年退職前後からパソコンスキルを独学で習得し、70代で表計算ソフトのエクセルを使って図案を描く『エクセルアート』を考案。81歳でiPhoneアプリ『hinadan』を公開し、米アップルのCEO、ティム・クック氏より「世界最高齢のアプリ開発者」として世界開発者会議に特別招待された若宮正子さん(90歳)。年齢を重ねてなお、新しいことに取り組む原動力を聞いた。

好奇心から独学でプログラムスキルを習得

――3人きょうだいの末っ子の長女として生まれた若宮さん。好奇心旺盛な性格は家庭環境の影響でしょうか。

若宮さん:性格は持って生まれたものだと思いますけども。家族はみんな、人のことを忖度しないような「自分流」に生きるような人たちです。母は100歳で亡くなって、2人目の兄は94歳の今もピンピンしておりますので、母方は長生きの家系でもあります。

――プログラミングを学んだきっかけを教えてください。

若宮さん:私、いろんなことに興味を持っちゃって。そのうちの1つがプログラミングだっただけなんです。1つか2つアプリを作ったのですが、それはもう引き出しにしまって鍵をかけました。あれって、すごく時間を取られるので(笑い)。

もともと、まだパソコンがなかった時代はワープロを使ったりして、ガジェットが好きなんです。それでパソコンというものに興味を持ちまして。パソコンを買ったのは58歳くらいのとき。プログラミングを始めたのは80歳を過ぎてからです。だけど、正式に教わったこともないし、勉強なんて嫌いですから、変なことばっかりしていました。

世界最高齢のアプリ開発者として、米アップルのCEOに称賛される

――まったく知識がない状態から、スマートフォン向けのゲームアプリを開発。大変でしたか?

若宮さん:ゲームアプリを作りたいと思って、詳しい方に教えてもらったりしながら、やっと作ったんですけどね、おもしろかったですよ。私はよく、プログラミングを学びたいというお子さんのお母さんがたに言うんです。「プログラミングの言語や手順を覚えるというよりも、お子さんがどんなゲームを作りたいかが大切だ」って。

私がゲームアプリ開発をしたのもそうでした。スマートフォンが普及したけれど、高齢者が楽しめるアプリが見つからなかったんです。だから私が若い人たちに、「高齢者が喜びそうなアプリ作ってよ」と言ったら、「若宮さんのほうがわかるでしょ」と言われてしまって(苦笑)。

それで、ひな人形を正しくひな壇に並べるゲームアプリ『hinadan』を作ったんです。高齢者はひな壇を見慣れています。けれども、若い人はなじみがないでしょ? 若い人よりも有利になる高齢者が楽しめるゲームになるんじゃないかなって(笑い)。

――その実績により、Worldwide Developers Conference 2017に招待され、アップルのCEO、ティム・クック氏から「世界最高齢のアプリ開発者」と紹介されましたね。

若宮さん:開発して半年ぐらい経ったころに、アップルの日本支社からメールが届きまして、「私共のCEOがあなた様にお会いしたいと申しておりますので、一緒にアメリカに行きましょう」って書いてありました。友達に見せたら「マーチャン、すぐガセに引っかかんだから」って笑われました。念のため電話をして問い合わせたら、ガゼじゃなかった(笑い)。

飛行機はビジネスクラスで、日本支社から付き添いもつけてくださって、直行便で行ったんです。それでCEOにお会いした時、「どうしてシニアはスマートフォンを使わないんだ」と聞かれたんですね。それで私は、年寄りは指先が乾いてるから、上からトンとつくのはやれるけど、スワイプとかは反応しない、と答えたんです。

CEOはその話を一生懸命聞いてくださいました。ただ、あれから8年ぐらい経ちますけども、iPhoneが高齢者にとって使い良くなったって話は聞いたことがありませんね(笑い)。

エクセルアート考案はいたずら心から

――エクセルを使って絵を描くエクセルアートも考案されました。

若宮さん:私はいたずらするのが好きなんですよ。それで、エクセルのセルの色付けを楽しんでいるうちに、エクセルアートができました。その絵柄で小物や服を作ったりもしています。なぜそのデザインの服を着ているのかっていうと、着る服のデザインを自分で開発することがおもしろいからです。

自分で作った服は世界で唯一のもので、そこに価値があるわけです。自分の服をデザインするのはとても楽しいのでおすすめです。

――趣味も多くて、特に海外旅行には40代から毎年行かれているとか。

若宮さん:コロナ禍は行かなかったですけどね、1人旅でいろんなところを楽しんできました。外国語はグーグル翻訳でなんとかなりますしね。思い出は挙げるときりがありませんが、旅先で知り合った牧師さんの家に宿泊させていただいた時、いろんな方の悩みを聞いて回る牧師さんに同行させていただいたのは、印象深い思い出です。

◆若宮正子

わかみや・まさこ/1935年4月19日、東京生まれ。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)を定年退職後、パソコンを独学で学習し、70代で表計算ソフトのエクセルを使って図案を描く『エクセルアート』を考案。81歳でひな人形を正しくひな壇に並べるiPhone用ゲームアプリ『hinadan』を公開。その実績から米アップルのCEOより世界最高齢プログラマーとして世界開発者会議に特別招待された。NPOブロードバンドスクール協会理事。一般社団法人メロウ倶楽部理事。

撮影/黒石あみ 取材・文/小山内麗香

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この記事へのみんなのコメント

  • きろりん

    若宮さんは私の憧れの方です。アップルのCEOではないですが、一度お会いしてみたいです。 いくつになっても面白いことを見つけて実行する、私もそういう高齢者になりたいです。エクセルアートでデザインされたシャツも、色白の若宮さんにとてもよくお似合いでとても素敵です。 いつまでも新しいことにチャレンジされて、どうかお健やかにお過ごしください。応援しています。

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