高血圧にご用心!ミスター血圧の異名をもつ医師が教えるエクササイズ「健康ゆすり・その場行進」薬に頼らずカリウムを保つ方法とは?
これまで薬に頼らず血圧を下げるためには「減塩」が重要とされてきたが、その前提を覆す新たな降圧法が欧米で浸透しているという。日本では周知されてこなかった「減塩に頼らない」最新の断薬メソッドを専門医が解説する。
教えてくれた人
渡辺尚彦さん/“ミスター血圧”の異名を持つ医師・日本歯科大学内科客員教授
運動でカリウムをキープ
従来の高血圧治療を根底から変える指標が欧米を中心に拡大している。それが、「尿ナトカリ比」(以下、ナトカリ比)である。
ナトカリ比とは、尿に含まれるナトリウム(塩分)とカリウムの比率を指す言葉で、尿中のナトリウム濃度をカリウム濃度で割って算出される。このナトカリ比を下げることで、血圧も下がることがわかってきたのだ。
高血圧治療の名医で、“ミスター血圧”の異名を持つ日本歯科大学内科客員教授の渡辺尚彦さんは細かい数字にこだわるのではなく、日々の食事でナトカリ比を意識することが大切だと説く。
「ナトリウムとカリウムはほぼ食事から体内に入るため、推定摂取量からおおよその比率を算出することができます。塩分を摂取した分、カリウムも増やすことで、ナトカリ比を改善することができるのです。カリウムは、“天然の降圧剤”とも呼ばれる優れた成分なので、例えば『今日は塩分を摂りすぎたので、カリウムが多いホウレンソウを足しておこう』といった発想で取り組むと、過剰な減塩や降圧剤に頼ることなく、普段の食生活で無理なく高血圧を改善することは十分に可能です」
ナトカリ比を効率よく改善するため、食事とセットで取り組みたいのが日々の運動だ。渡辺さんが言う。
「運動でどのくらいナトカリ比が是正されるかは、まだ未解明ですが、高血圧の改善に運動は欠かせない要素です。汗をかくとナトリウムとともにカリウムも排出されるため、ナトカリ比に影響が出ない程度の運動が重要です」
多量の汗をかくハードな運動はかえって血圧の急上昇を招く恐れもある。特に気温の高い日は脱水症や熱中症のリスクにも注意が必要だ。
「運動時の水分補給でカリウム摂取をあわせて行なうのが重要です。ただ、カリウムなどがバランスよく含まれたスポーツドリンクは糖分が多く味が濃い製品が多いため、水で薄めて飲むか、同量の水を交互に飲むと喉が渇きにくく、お勧めです」(渡辺さん)
発汗によるカリウム排出を抑えつつ、自宅でできる効果的な運動もあるという。
「私が患者さんに推奨しているのが、椅子に座った姿勢で踵を浮かせ、一定のリズムで脚を小刻みに揺らす『カリウムキープ健康ゆすり』と、その場に立ったまま左右の腕と脚を交互に上げ下げする『カリウムキープ行進』です。いずれも汗をかきすぎず、効果的な運動が可能です」(渡辺さん)
前者はいわゆる貧乏ゆすりの動きに近いが、テレビを見ながらでも、デスクワークをしながらでも可能だ。さらに、高齢になると衰えて歩行に影響が出やすい大腿四頭筋からふくらはぎ、さらに末梢神経が集まる足首まで効果的に動かすことができる。
「筋力維持のトレーニングになるだけでなく、血流改善により血管拡張作用のあるNO(一酸化窒素)の産生を促進します。『カリウムキープ行進』は1畳ほどのスペースがあれば実践でき、高血圧改善において重要な太ももからふくらはぎまで鍛えられる点がお勧めです」(渡辺さん)
高血圧を防ぐナトカリ比の改善は、今日から始めることができそうだ。
「横ゆすり」でもOK!『カリウムキープ健康ゆすり』
テレビを見ながら、仕事をしながらできる降圧エクササイズ
<やり方>
・椅子に座って踵を浮かせ、一定のリズムで脚を小刻みに揺らす(貧乏ゆすりのイメージで)
・1~2分程度続けて30秒休む
※時間、回数の制限はなし
<メリット>
大量の汗をかくことなく、「天然の降圧剤」であるカリウムを体内にキープ。運動による降圧効果も!
1日3セットでナトカリ比を改善!『カリウムキープ行進』
日々のウォーキングが面倒! という人に……
<やり方>
【1】脚を肩幅程度に開き「気を付け」の姿勢を維持
【2】床と平行になるように、左腕と右脚を同時に上げて1秒間キープ
【3】同様に右腕と左脚を上げて、動作を繰り返す
【4】【2】~【3】の動作を20回繰り返す(1セット1分程度が目安)。1日3セット程度を目標に
<ポイント>
左右同じ動作を20回「1秒上げて1秒下げる」を意識!
※週刊ポスト2025年4月11日号
●薬に頼らず血圧を下げる<8秒ジャンプ>で患者の血圧が150→120に改善!理由とやり方を医師が解説
●高血圧・高脂質・高血糖が引き起こすリスク 医師がすすめる食事の“置き換え”「うどんはそばに」「肉は鶏肉を」「砂糖よりはちみつ」
●「早食い」「トイレの我慢」「起床後すぐのランニング」は大病を招く習慣だった!?【3大疾病 生活習慣病を防ぐ29の知恵】を名医が徹底解説