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健康

薬に頼らず血圧を下げる<8秒ジャンプ>で患者の血圧が150→120に改善!理由とやり方を医師が解説

 生活習慣病の数値を気にする人も、つい緩みがちなのが正月休みだ。上がってしまった数値を下げ、服薬の煩わしさからもおさらばしたいもの。自宅でもできる簡単な方法で血圧を効果的に下げるには?専門医に解説いただいた。

教えてくれた人

伊賀瀬道也さん/愛媛大学大学院教授・高血圧専門医

薬に頼らず血圧を下げる方法を医師が解説

 年末年始の食べ過ぎ、飲み過ぎが数値に表われやすいのが血圧だ。

 おせちをはじめとする正月料理は塩分や脂肪分が高く、お酒のアルコールも加わって血圧が上がりやすいと言われている。

 だが、「薬の量を安易に増やすのは危険」と言うのは、愛媛大学大学院教授で高血圧専門医の伊賀瀬道也さん。

「降圧剤に頼りきることで肝心な生活習慣の改善が疎かになりやすいのです。また、人によっては薬により血圧が下がり過ぎる過降圧で転倒や失神のリスクが上がります」(以下、伊賀瀬さん)

 一方、生活習慣の改善で数値を下げようとすると、厳しい食事制限を強いられるイメージが強い。高血圧の主な要因は塩分の摂り過ぎとされ、日本高血圧学会は1日6グラム未満の塩分摂取を推奨するが、個別の事情を鑑みない食事制限についても伊賀瀬さんは疑問を呈する。

「高血圧患者には、塩分の影響で血圧が上がる『食塩感受性高血圧』の人と塩分が血圧に関係せずその他の要因による『食塩非感受性高血圧』の人がおり、日本人は後者が約4割と言われています。食塩非感受性の場合は減塩しても血圧は下がりません。もちろん、塩分を控えめにすることは健康に一定の効果がありますが、1日6グラム未満の制限は難しく、医師が減塩指導をしても徹底できる人は少ない。途中で挫折する可能性が高いのです」

 そこで伊賀瀬さんが提唱するのが、厳しい食事制限や運動を必要とせず、誰でもできる“簡単な動作”で血圧を下げる方法だ。以下、具体的なメソッドを見ていく。

全身の血液循環が改善される「8秒ジャンプ」

 伊賀瀬さんが「短時間で最も効果的な運動療法」と推奨するのが、「8秒ジャンプ」だ。

 やり方は極めて簡単で、その場で8秒間ジャンプするだけ。

「足を肩幅くらいに広げ、背筋を伸ばして力まずに真上に跳びます。1秒間に2回を目安に8秒間(16回)ジャンプしましょう。つま先が浮くくらいの高さで大丈夫です」

「8秒ジャンプ」で血圧が30下がる!

【1】背筋を伸ばして立つ

【2】真上に跳ぶ。1秒間に2回を目安に8秒間(16回)ジャンプする。ジャンプの高さはつま先が軽く浮く程度

【3】跳ぶ時と同じ場所に膝を痛めないように柔らかく着地する

【4】【1】〜【3】の動作を1セットとして5セット跳ぶのが目安。1セットごとに5〜10秒間休む。1日3回行なう

6年間続けると血圧だけでなく体重も10kg以上減った

 着地時に膝を痛めないよう、足は伸ばさず少し緩めておくこともポイントだという。

 伊賀瀬さんが言う。

「私自身、遺伝性の高血圧で、上は160mmHgを超えることがありました。6年前に8秒ジャンプを開発し、毎日実践することで血圧が130mmHg程度に収まり、体重も10kg以上減った。8秒ジャンプの実践で血圧が下がった患者さんも多数見てきました。65才の患者さんは上の血圧が150mmHgでしたが、8秒ジャンプを日課にすると、半年ほどで120mmHg程度まで下がったのです」

 なぜ、8秒ジャンプに血圧を下げる効果があるのか。

 伊賀瀬さんは、「心肺機能の強化」と「ふくらはぎのポンプ機能強化」の2つを指摘する。

「8秒ジャンプによって心肺機能が高まり、血液が全身に送られることで血流が改善し、血管にかかる圧力が減って血圧が下がります。またジャンプによって“第二の心臓”であるふくらはぎが収縮し、足の血液を下から上に吸い込むポンプ機能が強化され、全身の血液循環が改善されて血圧が下がりやすくなります」

 ジャンプには有酸素運動による血管拡張作用も期待できる。

「8秒ジャンプは有酸素運動と筋トレの要素を兼ね備えます。筋肉が収縮すると、血管拡張作用を持つ一酸化窒素(NO)が血流中に放出されます。その結果、血管が広がって血流がさらに良くなり、血圧が徐々に下がっていきます」

 8秒ジャンプをするタイミングについて、「特に決める必要はなく、思いついた時に行なえばいい」と伊賀瀬さん。

「注意点としては、起床直後や就寝前は血圧を調整する自律神経が切り替わる時間帯で、血圧の変動が大きいので避けること。また今の時期は寒さに注意。体が温まってから行ないましょう」

つま先&かかと上げ下げ運動

 膝が痛くてジャンプができないという人は、もっと手軽な方法がある。

「椅子に座ったまま、爪先とかかとの上げ下げを交互に10回ずつ行ないます。この運動によってふくらはぎが刺激され、血液を心臓に戻すポンプ力の強化ができます。8秒ジャンプ同様、リズミカルにテンポよく行ないましょう」

●つま先、かかとを交互に10回ずつ上下する。8秒ジャンプと同様にリズムに合わせて動かす

●第二の心臓ふくらはぎの筋肉を使うことで血液循環が良くなり、血圧が下がりやすくなる

新聞紙握り

 新聞紙を握るだけで血圧を下げる方法もある。

「畳んだ新聞紙を2分間握り、その後1分間休憩します。これを左右交互に2回ずつ行なう。力を入れ過ぎず、最大握力の30%ほどの力で十分です。握るのは新聞紙ではなくタオルなど握れる物なら何でもOKです。握力を弱める際に収縮した血管が緩まり、それと同時に一酸化窒素が血管の内皮から放出されて血管が拡張します。アメリカ心臓協会が血圧改善の補完療法として認定するエクササイズで、同協会によると上の血圧が平均13mmHg下がったといいます」

 楽して血圧を下げる方法はあるのだ。

●ぎゅっと2分間握る → 力を抜いて1分間休む

●握力を弱める時に血管の内皮から、血管を拡張する作用のある一酸化窒素(NO)が放出される

●可能な人は、8秒ジャンプと組み合わせて新聞紙握りを行っても高い効果を得られる

血圧を下げる生活習慣の常識が変わった

※(左)旧常識/(右)新常識

【1】<旧常識>塩分制限が高血圧に最も効果的/<新常識>塩分を控えれば血圧が下がるわけではない。「食塩非感受性」高血圧の人もいる

【2】<旧常識>血圧を下げるために1日1万歩歩く/<新常識>長続きせず膝を痛める可能性が高いため、推奨しない

【3】<旧常識>降圧剤に頼る/<新常識>血圧を下げ過ぎる「過降圧」のリスクもある

【4】<旧常識>お酒は控える/<新常識>焼酎(乙類)は血栓を溶かす酵素「ウロキナーゼ」を活性化させて血圧を下げる作用がある

イラスト/河南好美

※週刊ポスト2025年1月17・24日号

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