猫が母になつきません 第433話「うでまくら」
夢を見ました。私はひとりで都会のオフィス街を歩いているのですが、パジャマ姿で片手には枕を抱えています。雪が降っていて、行き交う人たちは分厚いコートを着込んで足早に通り過ぎる、誰も私の存在を気に留めていません。積もった雪が半分溶けたアスファルトの歩道を私は裸足で歩いていました。だれかに手紙を出すつもりで、私は封筒を買おうとしていました。でもなかなか売っているお店が見つかりません。バスに乗ったりタクシーに乗ったりしながら街をさまよいました。途中で何人かの知り合いに会い言葉をかわしました。仕事先の人とか、長いあいだ会っていない友人とかです。そして黒いタイル張りの古いビルにたどりつきました。ひとけのない暗い建物の中をひとりで歩きながらだんだん心細くなる私…そのときふいに誰かが私の手をとりました。あたたかい手に私はほっとしました。目を覚ますと私の手はさびの小さな前脚を握っていました。とても寒い朝、カーテンを開けると庭の木が雪で白くなっていました。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。