《長続きせず…》糖質制限ダイエットで失敗する3つの理由「思考放棄」「ガマンと忍耐」「見返りの快楽」
糖質制限をはじめとする、何かをやめるだけで痩せられるといったダイエット法は簡単に見える一方で、失敗に終わってしまうことが多い。『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(アスコム)を上梓した、管理栄養士の笠岡誠一さんによると、その背景には3つの理由があるという。糖質制限などの簡単ダイエットが失敗する理由と、ダイエットを成功させるために必要なことを教えてもらった。
教えてくれた人
管理栄養士・笠岡誠一さん
かさおか・せいいち。東京農業大学大学院卒業。山之内製薬(現アステラス製薬)を経て、2000年より文教大学専任講師を務め、2014年より現職。専門分野は栄養生理学、食品科学で、「レジスタントスターチ」に早くから注目し、腸内環境を改善する”腸活”を多方面で世に広める。著書に『炭水化物は冷まして食べなさい。』(アスコム)、『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(同)など。
糖質制限などの簡単ダイエットが失敗する理由
世の中には、これだけやればOK、といった簡単そうなダイエット法が多くある。炭水化物の代わりに野菜などを採る「糖質制限」も一見簡単そうに見え、かつ短期的には効果が出ることもあるが、長続きせず、失敗につながってしまうことが多い。
「なぜ、長続きしないのか、それはこうした『最速・最短ダイエット』の類には、
【1】思考放棄に陥りがち
【2】ガマンと忍耐を強いられる
【3】見返りに快楽を求めてしまう
という挫折のトライアングルがあるからです」(笠岡さん・以下同)
思考放棄で継続するのは難しい
これをやめるだけ、これを食べるだけ、といった簡単ダイエット法は、そのルールを守りさえすれば、他のことは考えなくてもいいため、誰でも簡単に採り入れられそうに見える。しかし、だからこそ思考放棄におちいってしまい、継続は難しくなっていく。
それは、取り組んでいるダイエット法に理論的に納得している場合は、これが自分の健康につながっていると納得感がある分、ストレスは軽減されるが、思考放棄で取り組んでいる場合、ストレスと闘いながら継続しなければならなくなるためだ。
「キャッチコピーによくある『1週間で3キロやせる』『10日間で10キロやせる』ほど、簡単なことではありません。」
我慢と忍耐を強いられ、食事の満足感が低下する
何かをやめるだけのダイエット法は、身近にある食品を制限するものが多い。しかし、いつも身近にある食品を食べることができないのは、想像以上に苦痛を感じるものだ。特に、糖質制限の場合は主食を削ることになり、精神的なストレスは大きくなる。
「実践したことのある人ならわかると思いますが、糖質を削ると、メニューの多様性や食事の満足感が恐ろしく低下します。そして、目的達成のためにそれを続けるのは、ガマンと忍耐がいるのです」
見返りを求め、もとの生活に戻ってしまう
人間は、我慢をしたら、その「見返り」を求めてしまうもの。目標の数値まで体重が落ちれば大きな達成感があり、頑張ったご褒美に好きなものを食べようと考える人も多いだろう。
しかし、人間には無意識のうちに自分が「居心地がよいと感じる習慣」に戻ってしまう特性があり、我慢を強いられたという実感が大きければ大きいほど、リバウンドも早く、そして激しいものになってしまう。
「ガマンを強いられる食生活は、それこそ『居心地が悪い状態』ですから、意識し続けないとすぐに『居心地がいい状態』に戻っていきます。それとともに体重もいとも簡単に戻ってしまうことが容易に想像できます」
ダイエットで挫折しないためには「ゆっくり変わる」こと
正しい理解をしないまま糖質制限ダイエットを始めると、すぐにリバウンドしてしまい、ダイエットは失敗に終わる。健康的にダイエットをするためには、持続可能な方法にする必要がある。
「挫折しないためには、『ゆっくり変わる』ことが大切です。持続可能な健康法=新しい習慣として定着させる必要があります。そのために必要なのが、『炭水化物の摂り方』についての知識です」
炭水化物は体に必要なもの
糖質制限ダイエットのブームによって、糖質(炭水化物)は体に悪いものと見なされやすくなっているが本来炭水化物は「体に必要なもの」だ。炭水化物を食べないことによる健康的悪影響を示す報告は非常に多く、「炭水化物を食べないのは危険」と言える。
「大切なのは、『炭水化物の摂り方』です。どれくらい、どのように炭水化物を摂るかを知ることです」
糖質と食物繊維で構成される炭水化物
そのためにまず知っておきたいのは、そもそも炭水化物がどういうものかということ。炭水化物は「糖質」と「食物繊維」で構成されており、体内で消化され、エネルギー源となるものが「糖質」、体内で消化されず、ほとんどエネルギー源にはならないものが「食物繊維」だ。
「糖質は『炭素』と『水素』と『酸素』でできています。『炭素』と『水(水素+酸素)』でできていることから、『炭水化物』と呼ばれるんです」
炭水化物が不足するとエネルギー不足に
炭水化物に含まれる糖質は、人間にとって非常に重要なエネルギー源だ。たんぱく質や脂質もエネルギーとして活用できるものの、たんぱく質には筋肉や骨などを作るという本来の役割があり、脂質にも血管や細胞膜を作るという重要な働きがある。そのため、エネルギーを作り出すのは炭水化物の重要な役割だ。
「もし炭水化物が不足して、エネルギー不足になり、その代わりにたんぱく質からエネルギーを補給するとなると、今度は筋肉や骨がうまく作れなくなってしまいます」
炭水化物は悪ではない
笠岡さんは「とりたてて重大な持病がないのであれば、無理に食事を制限する必要はないと考えます」と話す。むしろ、無理に我慢をし、幸福感を犠牲にした食生活を続けようとするとストレスが溜まり、結果的には健康を害することにつながるためだ。
「炭水化物は、からだに悪いものではなく、人間が健康であるために必須のもの。毎日、おいしく味わっていただきたいと願っています」
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