介護施設の喫煙事情を徹底調査【1】|喫煙する従業員の7割が「勤務先でも吸いたい」。環境整備の現状は?
介護施設と聞くと、「利用者の健康のため、施設内は完全禁煙であるべき」というイメージを持つ人は多い。事実、2020年に「健康増進法」(※)が施行されて以降、介護施設では「原則禁煙」が一般的になりつつある。
一方で、長年喫煙してきた人にとって、喫煙制限は生活満足度やストレスに直結する問題でもある。
介護施設は「利用者の健康」を守る場であると同時に、「職員が定着する職場」でなければ成り立たない。その中で、従業員の働きやすい環境づくりは施設運営において重要な要素だ。
本記事では、喫煙環境が”働きやすさ”にどのような影響を与えているのかを把握するために、介護施設の従業員583名を対象に実施した喫煙実態調査をもとに、喫煙ニーズの実像と環境未整備がもたらすリスクを明らかにする。
※2020年4月施行。「第一種施設」である介護老人保健施設(老健)、介護医療院は、敷地内禁煙が義務づけられ、「第二種施設」であるその他の多くの介護施設(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、デイサービス)は、原則屋内禁煙。
調査結果サマリー
1. 喫煙者は約17%。その約7割が「勤務中も喫煙したい」
2. 約3割の施設に喫煙場所がない。結果、車内や公園での“隠れ喫煙”が発生
3. 喫煙の代替手段は「ない」が4割。喫煙不可は「イライラ」「集中力低下」など業務への影響も
4. 喫煙環境が整っていないことで「におい問題」「人間関係悪化」「安全・コンプライアンスリスク」を増幅
調査詳細
喫煙者は約17%。その約7割が「勤務中も喫煙したい」
介護施設に現在または過去に勤務した従業員583名のうち、16.98%が「現在喫煙している」と回答。さらに喫煙者のうち68.68%が「勤務中も喫煙したい」という結果だった。
喫煙者は少数派ではあるものの、喫煙の必要性は非常に高く、業務の合間に喫煙することが実態として定着していると言える。
約3割の施設に喫煙場所がない。結果、車内や公園での“隠れ喫煙”が発生
勤務施設の喫煙環境については、「喫煙可能な場所はない:33.33%」と、約3割の施設が実質的に“全面禁煙”の状態だった。
また、喫煙者の内80.8%が実際に勤務中に喫煙しており、喫煙場所は「施設内の決められた場所」が56.57%であり、残りは「車内」や「公園」など独自の場所で喫煙している実態が明らかになった。
これは、喫煙希望と環境のミスマッチが施設管理外の場所での「隠れ喫煙」を誘発していることを強く示唆しており、安全面やコンプライアンス上のリスクなどの無視できない問題が生じていると言える。
喫煙の代替手段は「ない」が4割。喫煙不可は「イライラ」「集中力低下」など業務への影響も
喫煙できないときの代替行動については
●コーヒーやお茶でリラックスする:35.35%
●ガム・ミント・キャンディを噛む:32.32%
などにより代替できる人もいるが、「代替手段はない:40.4%」の回答が最多となった。
一定層にとって喫煙は“唯一のリラックス手段”であり、喫煙環境の有無が働きやすさに直結していることが窺える。
また、喫煙できない場合の影響の自由回答では、喫煙できない状況が業務に与える影響について
「当然イライラしてしまう」(45歳 女性)
「ストレスに押しつぶされそうになる」(40歳 女性)
「集中力が散漫になる」(32歳 男性)
「喫煙しないとめまいがして立っていられなくなり、仕事に差し支える」(60歳 男性)
などの声が挙がっており、喫煙は単なる嗜好ではなく、ストレスコントロール並びに業務パフォーマンスと結びついたニーズであることを示唆している。
喫煙環境が整っていないことで「におい問題」「人間関係悪化」「安全・コンプライアンスリスク」を増幅
さらに自由回答を深掘りすると、喫煙に関して施設で起こっている様々な問題が明らかになった。
「臭いが気になるという声が職員と入居者の両方から上がる」(45歳 男性)
「タバコの煙が室内に入ってくる」(53歳 男性)
「吸っていない人との休憩時間問題。ずるい・ずるくないのお互い言い分有り」(42歳 女性)
「イジメやパワハラの原因になっています」(56歳 女性)
特に目立つのは、「喫煙所をなくすと、隠れ喫煙を誘発して別の問題が生まれる」という指摘である。
「喫煙場所がないので隠れて吸っている職員がいる」(57歳 男性)
「吸いたい人は建物の陰に隠れるように吸っているし、灰皿がないので下に吸い殻が落ちてるから掃除する人は大変」(62歳 女性)
「本来吸ってはいけない場所から吸い殻が見つかって問題になったことがある」(55歳 女性)
喫煙所は“喫煙者のための設備”ではなく、“非喫煙者を守るための隔離設備“という側面もあるのかもしれない。
本調査結果を通じて
今回の調査により「介護施設従業員には一定の喫煙ニーズが存在する」。
しかし、喫煙ニーズに対し「施設の喫煙環境は十分に整備されていない」ことが明らかになった。
喫煙環境の整備は喫煙者を優遇するためのものではなく、介護施設にとって
●従業員のストレス軽減
●隠れ喫煙の防止
●非喫煙者の受動喫煙対策
●安全管理の強化
●職員定着率の向上
といった安全管理上のリスクヘッジとなると同時に、“働きやすい介護施設”として選ばれるための取り組みのひとつになりうると言える。重要なのは、「健康増進法」に則りながらも、喫煙を「許す」「禁止する」ではなく、「どう管理するか」という視点ではないだろうか。
(介護ポストセブン・介護マーケティング研究所 編集長・大橋拓哉)
アンケート概要
調査主体:介護マーケティング研究所by介護ポストセブン
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査対象:『介護ポストセブン』会員組織『介護のなかま』登録者
調査地域:全国(国内)
調査期間:2025年10月31日(金)~11月16日(日)
有効回答者数:3,635名
調査データのご利用について
本記事に掲載している調査データは、出典を明記いただければ自由に引用いただけます。
出典:介護施設の喫煙事情を徹底調査【1】|喫煙する従業員の7割に勤務先での喫煙ニーズあり。環境整備の現状は?(介護マーケティング研究所 by 介護ポストセブン)
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