親の施設介護の費用は節約できる? 施設選びでチェックすべき5つのポイント【社会福祉士&FP解説】
在宅介護からそろそろ施設介護に切り替えたいが、選ぶ施設の種類やサービスよっては費用がかさむケースも。親の年金や貯金で介護費用を捻出できればいいが、入居期間が長くなる場合にはお金が足りないという事態にも…。そこで介護経験のある社会福祉士でFPの渋澤和世さんに、施設介護の費用を節約するポイントについて解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
施設介護にかかる費用の節約を考えてみる
生命保険文化センターの調査※によると、介護にかかる費用※は、在宅介護が平均4.8万円、施設介護は平均12.2万円となっており、施設は在宅の約3倍の費用がかかることになります。
親のお金だけで賄えればいいのですが、入居年数によっては、それなりの費用が必要になります。物価高騰の今、自分たち家族の生活費や老後の費用の不安も感じているかたもいらっしゃると思います。
そこで、施設介護における費用は節約できるのか、考えてみたいと思います。
出典: 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html?lid=mm479
誰もが公的な施設を選べるとは限らない
介護施設の費用を節約するのであれば、できるだけ公的施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)を選びたいところです。
ただし、入居に要介護度や在宅復帰を条件とするなど色々と制限があります。また待機者によってはなかなか順番がまわってこないというデメリットがあります。
公的施設に比べ、施設数が多く、入居の敷居が低いのは、介護付有料老人ホーム(有料老人ホーム)です。節約ポイントとしては以下のようなものがあります。
【1】施設の立地条件を見直す
有料老人ホームの月額費用は家賃と管理費の比率が高いものです。家賃は一般的な賃貸と同様、都市部や駅に近いほど高価となります。
例えば、東京・世田谷区や目黒区と、都内からそれほど遠くない神奈川・武蔵小杉や溝の口の老人ホームは、同じ経営母体でも月に10万円ほど差が出ることもあります。
許容できる範囲で別の地域の有料老人ホームも候補にすることで費用を安く抑えることも可能です。
→老人ホームの費用はエリアで変わる「東京・世田谷と神奈川・川崎市で10万円の差も」【社会福祉士解説】
【2】入居一時金のかからない施設を選択する
入居一時金はまとまった金額が必要となります。払う、払わないどちらが得かは居住年月によっても異なりますが、初期費用を抑えるためにも入居一時金が不要な施設を選択することもひとつの手段です。
【3】障害者認定を検討する
認知症などが進行した場合、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などが取得できる場合があります。認定されると障害者控除を受けることができます。ただし、下記の条件を満たす必要があります。
・すでに障害者手帳を持っている
・要介護認定において、認知機能や日常生活能力が一定以下と判定
・65才以上で市区町村長の認定を受けた「特別障害者」
→要介護1の父に約10万円が還付された!障害者手帳がなくても申請できる「障害者控除」の実例【介護のお金FP解説】
【4】介護保険外の利用料に注意
介護施設に支払うお金は、利用料以外にも食費やおむつ代、別途宿泊費などは介護保険適用外となり、全額自己負担となります。施設によって、食費は1食300~800円程度、宿泊費も1泊3,000~7,000円くらいの幅があります。
【5】介護施設の体制による“加算”をチェック
スタッフの配置や勤続年数・介護福祉士の割合、看護職員配置加算や看取り連携体制加算など、施設の運営体制に応じた加算もあります。これらの金額が少ない事業所を選ぶということで費用の節約につながる場合もあります。
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介護費用を抑える方法は、国の補助金や助成金の利用や、どこのどんな施設やサービスを利用するのかによって違いがでてきます。すでに施設に入居している場合にも「転居」することで費用を節約できるケースもあるかもしれません。入居する親もケアをする家族も納得いく選択ができるといいですね。