在宅介護13年、父母の介護費用の内訳と総費用を公開!「我慢や時間をかけずに節約するヒント」【社会福祉士解説】
介護が必要になった高齢の親には長生きして欲しいけれど、介護はいつ終わるのかわからないという側面もあり、お金の不安を感じている人は多いだろう。両親の介護を13年に渡り続けた社会福祉士でFPの資格も持つ渋澤和世さんに、実際にかかった介護費用や、介護費用を抑えるためのポイントについて解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
介護費用は節約できるのか?
親の介護が始まると、思ったよりもお金がかかると感じるものです。要介護度が高くなるほど、おむつ代、介護サービス費用のほか、医療費もかかるもの。介護は身体的にも精神的にも負担がかかりますが、これに経済的負担が重なると何もかもに余裕がなくなってしまいます。
介護費用は節約できるものならば、したいところですが、そのために、自分が我慢したり、時間を費やしたりするのは本末転倒です。そこで、介護保険サービスを利用する際に節約になるヒントを中心にご紹介していきます。
在宅介護と施設介護、どのくらいお金がかかる?
生命保険文化センターが行った調査※によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。
また、介護を行った場所別に介護費用(月額)をみると、在宅では平均4.8万円、施設では平均12.2万円です。
介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1か月(5年1か月)なので、月々の平均8.3万円を5年としても、ひとり500万円ほどの介護費用が必要なことがわかります。
出典: 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html?lid=mm479
筆者の実録/父母13年の介護にかかった費用を公開
筆者は在宅で実父母の介護を行いましたが、その時のおおよその費用をご紹介します。
両親の介護年数は13年以上、費用は要介護3くらいまでは月額(1人)約3.5万円、要介護5のときには約7万円でした。
トータルで介護にかかったお金は、2人で1,000万円強なので、この金額を考えると調査結果に近いものがあります。ただし、介護費用は家庭ごとに全く異なりますので一事例として参考までに確認していただければと思います。
13年間で父母の介護にかかった総費用と内訳
父/要支援1、母/要介護1の頃
・デイサービス(食費実費含む):22,000円
・訪問介護:4,000円
・福祉用具貸与:500円
・介護費用合計:26,500円
・配食サービス:夕食週3回:16,800円
・帰省交通費:月3回:20,000円
1か月 約63,300円
父/要支援2、母/要介護3の頃
・小規模多機能(食費実費含む)33,500円
・紙おむつ他500円(自治体補助あり)
※住宅改修(トイレ・廊下の手すり):介護保険1割:5,000円
1か月 約34,000円
母/要介護5の頃
・小規模多機能型居宅介護(食費実費、泊り実費含む):52,000円
・福祉用具貸与:3,000円
・介護費用合計:55,000円
・紙おむつ、栄養補助食品他(自治体補助あり):15,000円
※住宅改修(畳からフローリング)介護保険1割:15,000円、全額自己負担30,000円
1か月 約70,000円
介護にかかったお金総額 10,379,400円
在宅介護の費用を節約する3つのポイント
読者のみなさんは、「月に××円までしかお金は出せない」という上限額を把握されていますか?
各家庭で年金額や保有財産も異なるはずです。実は、この金額をきちんと把握しておくことも介護費用節約のひとつのポイントなのです。
介護保険サービスを利用する際、ケアマネジャーと、どのサービスを利用するか相談する機会があります。その際、月にだせる上限額を伝えることで、介護サービス費用を抑えるプランを検討してもらうことができます。
「デイケア」より「デイサービス」のほうが費用はお得
通所サービスには、「デイケア」と「デイサービス」があります。
デイケアは、医師の指示によるリハビリや健康管理など医療的サービスのこと。デイサービスは、食事や入浴、排泄などの生活支援サービスを指します。
基本的にデイケアよりも、デイサービスのほうが費用を抑えることができます。少し身体を動かしたいのであればリハビリ特化型のデイサービスを選択するのも一案です。
また、利用者数や利用時間ごとに料金も細かく設定されています。利用者を多く受け入れていている大規模なデイサービスを短時間で利用することで費用を抑えることができます。
ショートステイは施設の種類によって価格が変わる
ショートステイも利用する施設の種類によって基本料金が異なります。
医療的サービスが主体の介護老人保健施設(短期入所療養介護)よりも、特別養護老人ホーム(特養)や一部の有料老人ホーム、ショートステイ専門施設(短期入所生活介護)のほうが安くなります。
また、居室の種類によっても費用が異なり、ユニット型より従来型が、個室よりも多床室が安くなります。
また、単独型のショートステイ施設より特養に併設している施設の方が安い傾向にあります。
単発利用よりも「月額定額制」で節約を
サービスの利用が多くなってきたら小規模多機能型居宅介護などの月額定額制のサービスの利用をおすすめします。
デイサービスやショートステイを個別に利用すると、回数によっては、介護保険支給限度基準額を超えて全額自己負担になってしまうこともあります。
月額定額制であれば介護保険支給限度基準額からはみ出す心配もありません。週に3~4日の利用を希望するのであれば費用を抑えることができます。
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筆者が働きながら在宅介護をしていたとき、色々と調べた結果、小規模多機能型居宅介護を利用しました。
もともとは絶対に必要だった通いと泊りのサービスがひとつの事業所で完結することに魅力を感じたのですが、結果的に定額制で予算も目途がつけやすくとても利用しやすかったです。
介護は何年続くのか、見通しが立てられないので難しいことではありますが、お金のことは非常に大切な問題です。情報を集めながら支払える金額の中で納得できる介護ができることを願っています。