「自治体の防災無線対応の防災ラジオとスマホ、両方の活用が安心」防災士&家事アドバイザーが実感した「本当に必要な災害への備え」
大地震や台風、豪雨による甚大な被害――。明日は我が身という自然災害の脅威が迫っている。何からどう準備しておけばいいのか、防災士の資格をもつ家事アドバイザーの矢野きくのさんが指南。今すぐに着手すべき「本当に必要な」防災対策について解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん
節約・家事アドバイザー。防災士の資格を持つ。家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』(講談社)、『「節電女子」の野菜レシピ!』(アスコム)、『50代からの自宅の片づけ 実家の片づけ』(扶桑社ムック) など。https://yanokikuno.jp/
例年以上に「防災」を意識する年に
今年は8月に日向灘を震源とする地震が発生。それに伴い「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されたこともあり、例年以上に「防災」に意識を向けている人も多いのではないでしょうか。
ホームセンターなどでは非常用持ち出し袋やミネラルウオーターが一時的に完売になる店も出てきていました。
災害への備えは、実施しているかたと全くやっていないかたが、はっきり二分されてしまう印象です。しかし、自分の身を守るために、まずは自分でやらなくてはならないのが防災。シニアのかたや、在宅介護中などシニア世代がいらっしゃるご家庭ではとくに、万全を期しておくにこしたことはありません。
家の耐震補強は必要? 調べておきたい家の耐震性
家の耐震補強については、お金がかかることなので今すぐにとはいかないかもしれませんが、耐震基準に満たない建物にお住まいの場合は検討しておいたほうが良いでしょう。
建築基準法で定められた耐震基準は、数度改正されていますが、「新耐震基準」と言われているのが1981年に施行されました。これは、1978年の宮城県沖地震を受けて改正されたものです。
1995年の阪神・淡路大震災でも新耐震基準を満たした建物は比較的損傷が少なかったと言われています。
その後、2000年に木造住宅の耐震性を向上することを目的とし新耐震基準を強化した「2000年基準」と言われるものが設けられています。
現在お住まいの建物の耐震性がどれくらいなのか、耐震補強が必要なのか、一度検討してみることをおすすめします。
家具や家電が倒れない・飛ばない補強の仕方
大きな揺れのとき、家の中で家具が倒れてケガや圧死の危険もあります。また、目の前で揺れているものが目に入ると、自分の安全よりもその揺れているものを抑えに行くという心理が働いてしまいがちです。
揺れているものは抑えず、離れることが先決。あらかじめ、家具や家電は倒れたり飛び出したりしないような対策をする必要があります。さほど時間やお金をかけずにできるものなので、今日にでもやっておくことをおすすめします。
タンスや本棚
確実なのはL字型の留め具で壁に固定することです。賃貸物件などで壁に穴が開けられない場合は、家具固定用のつっぱり棒や、家具店では下に敷く耐震マットを販売しているところもあります。
ただし、耐震マットを敷くためにはタンスや本棚を持ち上げないとならないので作業としては重労働にはなります。
食器棚などの扉
食器棚自体も固定する必要がありますが、扉が開いて食器が落ちてこないようにする必要もあります。これは100円ショップなどで「安全ロック」として扉を固定するアイテムもあるのでそのようなものを利用するのも良いでしょう。
テレビを固定
近年は薄く大型の画面が主流となりつつあるテレビはいちばん揺れやすいものと言っていいでしょう。テレビの固定にはいくつかのタイプがありますが、テレビ裏の穴にベルトを2本つけて下の台と固定するものなどは簡単に取り付けることができます。
防災無線は聞こえていますか?「自治体によっては防災ラジオを配布」
自治体が運営している防災無線。災害時にはとくに重要なことをアナウンスしてくれるものです。しかしスピーカーの位置や風向きなどによっては聞こえづらい家もあります。とくに台風のときなどは窓を締め切っているので、防災無線のスピーカーがよほど近所にない限り、よく聞こえないということもあるでしょう。
自治体によっては防災無線に対応している防災ラジオを配布しているところもあります。無償の自治体や有償の自治体さまざまあり、有償の金額も自治体によって大きく変わってきます。
防災ラジオがあるとラジオをONにしていなくても、従来外のスピーカーで流れる防災無線がラジオから流れてきます。家にいて確実に防災無線を聞くことができるので、防災無線が聞きづらいご家庭は一度自治体に確認してみてはいかがでしょうか。
筆者が実感した緊急情報にはスマートフォンが必須
先日、筆者の自宅がある近辺でも台風の影響で警報や避難指示が数回出るということがありました。
その際、防災無線は防災ラジオで確実に聞ける状態だったのですが、防災無線で流れる内容や回数と、スマートフォン(以下、スマホ)に登録している自治体からの通知では情報量が全く違ったのです。
スマホには「河川が危険水位に達したから新しく避難所を開設した」等、随時、災害の状況や、避難所情報が流れてきていました。
「防災無線だけだったら情報として足らなかったかも…」と感じた経験でした。
防災ラジオに加えて、やはりスマホを持っておくのが安心。
防災無線とデジタル情報の使い分けは、もちろん自治体によって運用方法も違うと思います。しかしスマホがあれば自治体の発表する情報だけでなく、さまざまなアプリがあり、自分からページを開かなくても通知設定をしていれば自動で次々に通知を表示してくれる機能もあります。
シニア世代にはスマホはハードルが高いと思われることもありますが、災害時こそ情報入手のため、そして身を守るためにスマホやタブレットが必要なのではないでしょうか。まだ所有していないシニアの方は一度検討してみてください。
災害は本当にいつ起こるかわからないものです。「自分のところは大丈夫」とは思わずに、万全の備えをおすすめします。
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