いまこそ大地震に備える「行楽地で地震にあったら?車で移動中の行動」専門家が指南【お役立ち記事まとめ】
気象庁による「南海トラフ地震臨時情報」が発令されてから約1週間が過ぎた。お盆休みに台風が直撃するなど常に自然災害の脅威と隣り合わせの日本列島。いまこそ大地震に備えておきたい。夏の観光シーズンにもしも地震が起きたら――注意すべきこと、覚えておくべき情報をまとめた。
行楽先の山・川で地震が起きたら…河川津波、山津波に要注意!
今後30年以内に70~80%の確率で起きるといわれている南海トラフ巨大地震でも、河川津波が各地で発生すると予想されている。
●地震が起きたら、川からすぐ離れる
「全国的に海岸周辺の津波対策は進んでいますが、河川津波の対策は遅れています。地震が起きたら、川からすぐに離れてください」
と語るのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんだ。
さらに川での被災は、上流・中流・下流によって注意点が変わるという。
●川から10kmまでに地域は、川から充分な距離のとれる高い場所へ逃げる
下流では、河口が外洋に面している場合、津波が川を遡上する可能性がある。
「河口から10km程度までの地域は、海から離れるとともに、川からも充分に距離をとれる場所、かつ高い建物の上などで身の安全を守りましょう」(和田さん・以下同)
河口が外洋に面していない場合(東京では隅田川や多摩川など)、津波の遡上は警戒しなくてよいが、地盤沈下や堤防決壊などの恐れがある。土のうを用意するなどの浸水対策が必要だ。
●豪雨などの後で、水位が高いときは、中流付近も要注意
一方、中流付近は地震による影響が少ないため、河川敷が地震時の避難場所に設定されることもある。だからといって安全とは言い切れない。
「梅雨時や豪雨の後などで水位が高いときは、地震によるダム決壊などで被害が発生する可能性があります。安全が確認できるまではなるべく近づかないようにすべきです」
では、山間部の上流付近はどうか。
●山間部は山津波の危険性が。一刻も早く下山を
「地震によって土砂が津波のように押し寄せる“山津波”などの土砂災害が起きる危険性があります。山の中では、川などの谷筋に沿って土砂崩れが発生しやすいので、揺れが収まったら一刻も早く川から離れ、下山してください」
土砂災害は、余震の発生時に発生することも。下山中は落石や崖崩れなどに注意し、平地にたどり着くまで油断しないでおこう。
※女性セブン2020年9月17日号
海岸近くにいるとき地震が発生…津波が見えてから逃げるのは遅い!ではどこへ避難?
「警戒すべきは津波です」
と話すのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんだ。
政府の中央防災会議は「南海トラフ巨大地震」が発生した際、関東から九州にかけての太平洋沿岸に10mを超える大津波の襲来を想定している。
●高さ20~30cmの津波でも大人を倒す威力
そもそも津波は、地震により海底が動き、その上の海水が押し上げられることで発生する。高波は、強い風で海水の表面が波立つだけだが、津波は海水全体がかたまりとなって押し寄せるため、高さ20~30cmの津波でも、大人を倒すほどの威力がある。
揺れが収まったら一刻も早く海から遠い、高い場所へ逃げる
「東日本大震災で岩手県宮古市の重茂半島を襲った津波は時速115kmだったとされています。ですから、津波が見えてから逃げるのでは遅い。揺れが収まったら一刻も早く、できるだけ海から遠く、高い場所に逃げるのが基本です」(和田さん・以下同)
●徒歩で「津波避難ビル」や「津波避難場所」へ逃げる
「車での避難でいちばん怖いのは渋滞に巻き込まれること。東日本大震災でも高台に向かう道で大渋滞が起こり、そこに津波が押し寄せて多くの犠牲者が出ました。やみくもに車を走らせるよりも、近くに『津波避難ビル』や『津波避難場所』などがある場合は、徒歩でそこに避難するのがおすすめです」
津波避難ビルとは、新耐震基準で建てられた3階建て以上の鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造のビルのこと。基本的にそのビルの近くの海に起こる津波の想定浸水深以上の高さとなっている。海岸近くに行く場合は、近くにそのような建物がないか、市のホームページや防災マップなどで事前に確認しておくことも大切だ。
●高齢者や子供など一緒の場合は、車で遠くまで避難する
また、車での避難も間違いとは言い切れないケースもある。避難時は基本的に徒歩を優先すべきとされているが、津波は例外。高齢者や小さな子供など、徒歩では逃げ遅れる可能性のある人が一緒にいる場合、動けるうちになるべく車で遠くまで行き、危険が迫ったら車を降り、高台や建物の上層階へ避難すればいい。
津波は複数回続くこともある。警報・注意報が解除されるまでは気を抜かず、避難場所で待機していよう。
※女性セブン2020年9月10日号
運転中に地震が起きたらすべきこと
運転する上で知っておきたいのが、車を運転中に地震が起きたらどうするかだ。
「急ブレーキや急ハンドルは事故のもとなので絶対にしないこと。揺れに気づいたらハザードランプを点灯させ、周囲に注意しながらゆっくりと減速し、道路の左側に車を停めましょう」
と語るのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんだ。
車を停止させた後、車外に出るのは危険。揺れがおさまるまで、ラジオなどで地震情報を聞きながら車内で待機を。
「火災が迫っているなど、やむなく徒歩で避難するときは、車を路上に放置せず、なるべく駐車場や空き地などに移動させること。車から離れる際はエンジンを止め、ドアはロックせずに鍵はつけたままにしておきましょう。そして、連絡先を残しておきます」(和田さん、以下「」)
●ガソリンスタンドで地震が起きたら…
運転の機会が増えれば給油の回数も増える。もしガソリンスタンドにいるときに地震が起きたら、どうすべきか?
大量に保管されているガソリンや灯油が地震で漏れ出る可能性を考えると、すぐに離れた方がよさそうだが‥‥。
「実は、ガソリンスタンドはかなり安全な場所なんです」
というのも、ガソリンスタンドの設置には、消防法や建築基準法で厳しく制限がかけられており、それらをクリアして建設されるため、耐震性や耐火性が非常に高いのだ。万が一、地表が火事になっても、地下に埋められているガソリンタンクに引火しないように、タンクは厚いコンクリートで覆われている。
「建物も頑丈ですが、ガソリンスタンドの周囲には、耐火性の高い防火壁の設置が義務づけられているので、延焼も防いでくれます。さらに一部のガソリンスタンドは、断水時に周辺住民に生活用水を供給するなど、災害対応型施設にも指定されています」
また、車にも簡易トイレなどの防災用品を積んでおくと安心だ。
※女性セブン2020年7月30日・8月6日号
教えてくれた人
和田隆昌さん/災害危機管理アドバイザー
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