老化を引き起こす糖の過剰摂取に注意!体の「糖化」を予防改善する方法
すっかり日差しも強くなり、肌の老化を避けるため、UVケアや日傘を欠かせない人も多いのでは。
さて、ここで問題。紫外線の他にも老化のスピードを速くする、最強の敵とは何でしょう?答えは“糖化ストレス”。私たちが大好きな甘~い食べ物が関係しているようですよ。
老化を促進する危険因子は5つ
同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一さんは、この糖化を人類史上最強の敵だと考えている。
「そもそも老化には『正常な老化』と『病的な老化』があります。前者は加齢によるもので、後は食べすぎや飲みすぎ、運動不足などが原因でメタボや高血圧などの病的な要因が加わり表れるもの。生命体の宿命として、正常な老化は避けられませんが、病的な老化は元の状態に戻すこができます。そのカギとなるのが糖化です」(米井さん・以下同)
米井さんによると、老化を促進する要因は次の5つ。
【1】免疫ストレス:生体防御システムである免疫細胞の働きが落ちて、免疫力が低下すること。
【2】酸化ストレス:紫外線や有害物質などにより活性酸素が発生し、体がサビること。
【3】心身ストレス:精神的要因などによってストレスを感じること。
【4】生活習慣ストレス:不規則な生活や睡眠不足、運動不足などで体のバランスが乱れること。
【5】糖化ストレス:過剰に摂取した糖と体内にあるタンパク質が結びついて、体内で変性・劣化すること。
「糖化が進むと体中のタンパク質が変性・劣化して本来の役割を果たさなくなり、老化が促進。万病のもとといわれる糖尿病をはじめ、高血圧、がんなどの成人病の原因にもなると考えられています。私が『最強の敵』と危惧している理由は、現代のように豊富に糖分をとるようになったのは人類史上初めてのことで、糖化に対応する術を、人の体はまだ身につけていないからです」
しかも、糖化に関する研究は、70年ほど前に始まったばかりで、まだわからないことも多い。 しかし、糖化は私たちの体内で日々起こっている現象。糖分をため込み、体に悪影響を与える「糖化ストレス」を増やさないよう、日常生活から注意する必要がある。
まずは、自分の体内の糖化がどこまで進んでいるのか、以下のリストでチェックしてみよう。1つでも該当すれば、糖化ストレスにより老化している可能性がある。
日常生活でわかる、あなたの糖化度チェック!
次の15項目のうち、何個当てはまるかをチェックしてください
□便秘や下痢をすることが多い
□休日はいつもゴロ寝
□生活が不規則で、睡眠不足
□エスカレーターやエレベーターをよく使う
□UVケアは気にしない
□たばこがやめられない
□ひざの関節が痛むことがる
□間食がやめられない
□白いご飯が大好き
□子供のころから野菜嫌い
□とにかく早食い
□朝食を抜くことが多い
□夕食は22時以降に食べることが多い
□お酒が大好きでほぼ毎日飲む
□いつもストレスを抱えている
0個…今のところは問題なし。このペースを守って規則正しい生活を。
1~2個…安心は禁物。将来糖化の可能性あり。がついたところの改善を。
3~4個…糖化リスクの高い状態。1つでも項目を減らす努力を。
5~6個…糖化ストレスがたまり始めた状態。すぐに生活習慣を見直し、対策を。
7個以上…すでに糖化が加速度的に進行中。病気が隠れていないか専門医に相談を。
“サビ”ではなく体が“コゲる”老化。糖化のメカニズムとは
酸化を“サビる”と表現するのに対し、糖化は“コゲる”と表現される。
「たとえば、ホットケーキを作る時、卵や牛乳などのタンパク質と、小麦粉や砂糖などの炭水化物、それに糖分を混ぜて焼き上げます。この時、糖分はこんがりしたきつね色に変化し、あめ状になるのですが、これが糖化反応です。食べ物の場合は、香ばしい風味を生み出しますが、余分にとりすぎてしまうと体内でも同様のことが起こり、細胞を老化させる悪玉物質AGEs(糖化最終生成物)を作り出してしまうのです」
そのメカニズムはこうだ。食事でとった糖分は、消化吸収を経てエネルギーとして使われる。だが、吸収されず残った糖分は、肝臓ではグリコーゲンに、脂肪細胞では脂肪に変換され、いざという時のエネルギー源として蓄えられる。
「しかし、糖分をとりすぎると、さらに余った糖分が、血液中をウロウロと漂い、全身の細胞の中でタンパク質と結合します。これが体温の熱で温められると糖化反応が起きて、強い毒性を持つAGEsになり、どんどん蓄積してしまうわけです」
さらに、このAGEsは、RAGE(レージ)という受容体を介して細胞と結びつき、炎症反応を進めて糖化ストレスを深刻化させる。
余分な糖分をとりすぎると血糖値が高くなることから、血糖値に気をつけることが糖化予防につながるが、これだけでは不充分。中性脂肪やコレステロール、睡眠不足も糖化を促進しやすいのだ。また、アルコールを飲むと顔が赤くなるのは、アルコールを分解する成分であるアルデヒドの量が体内に少ないからといわれるが、このアルデヒドとタンパク質が反応すると、大量のAGEsを作り出すこともわかっている。
糖化は骨折や動脈硬化も引き起こす
AGEsがたまると、体に悪影響を与えるのがわかったが、さらに以下のようなさまざまな疾患を引き起こすこともわかっている。
【1】アルツハイマー型認知症
脳細胞にβアミロイドやタウタンパクというタンパク質がたまり、神経細胞が減少することで発症。これらのタンパク質が糖化すると、認知症の発症率が大幅に高まる。
【2】骨折
骨の3分の1はタンパク質でできているが、糖化すると骨は折れやすくなる。
【3】動脈硬化や大動脈、腎臓などの機能低下
肌が糖化してAGEsがたまると黄ばんだ肌になり、新陳代謝がスムーズにいかなくなる。また、コラーゲンが糖化すると血管内膜が傷つきやすくなり、動脈硬化に。そのほか、大動脈や腎臓などの機能低下をも招く。
「糖化ストレスによるAGEsは、エネルギー代謝や細胞の新陳代謝も低下させます。体内にあるさまざまな酵素もタンパク質なのですが、DNAを修復する酵素が糖化されると、がん発症率が上がると考えられています」
糖化ストレスが体に及ぼす主な症状
●認知症
・βアミロイド・タウタンパクの糖化で毒性が高まる
・神経細胞の繊維化を促進
・酸化ストレスの増大
●白内障 加齢黄斑変性
・目のレンズ(水晶体)や網膜のタンパク質が糖化
●皮膚の老化
・皮膚コラーゲンの硬化
・新陳代謝の阻害
・シミ、しわ、黄ばみなど
●動脈硬化
・コレステロールが血管内膜にたまり、粥状のプラーク化するのを促進
●大動脈、腎臓などの機能低下
・コラーゲンの架橋(※)によるダメージ
●糖尿病合併症
・神経障害、網膜症、腎症
●骨粗しょう症 骨関節症
・骨や関節軟骨の劣化 ・骨の新陳代謝が阻害される
※コラーゲンの架橋とは、AGEsがコラーゲン繊維同士をつなげて固め、弾力を失わせて劣化すること。
以上のような理由から、糖化ストレスは万病のもとといわれている。
「先にあげたチェックリストにあるような生活習慣をしていれば、年齢が上がるにつれてAGEsの蓄積は進み、老化も進みます。とはいえ、生活習慣を改善して糖化を抑えることができれば老化も抑えられ、若返りも可能です」
糖化を予防·改善する7つの知恵
糖化ストレスを撃退し、老化を早めないためにできることをご紹介。
日常生活のちょっとした緩みから、どんどん進んでしまう糖化。予防するためには、次の7つのポイントに気をつけることが必要だ。さっそく普段の生活に取り入れましょう!
【1】抗糖化食品をとる
糖化ストレスを防ぐには、糖化を抑制する食品を積極的にとることが大切。
「糖分を控えるのはもちろん、モロヘイヤや新しょうが、ヤーコンなどの野菜、みそやしょうゆなどの発酵食品、緑茶、甜(てん)茶、どくだみ茶などに抗糖化作用が期待できます」。血糖値の上昇を抑える、きのこや海藻などの低GI食品も◎。
【2】血糖値を上げない食べ方をする
「血糖値の急上昇を防ぐためには、朝食は必ず食べて、1日3食にすること。また、食事の最初に野菜を食べる“ベジタブルファースト”も有効です。野菜をそのまま食べるより、お酢と油を一緒にとった方が、血糖値が上がらないことがわかっています」。
夜は遅ければ遅いほど血糖値が上がりやすいので、夕食はできるだけ20時までにとろう。
【3】腸内環境を整える
腸の善玉菌を増やして腸内環境を改善することは、便秘の解消と免疫力を高めることになり、糖化を抑制する。
「ビフィズス菌を含むヨーグルトなどを毎日食べるといいですね。善玉菌は腸内で酸を作り、エネルギー代謝の活性化につながるため、抗糖化にも、肥満予防にもおすすめです」。
【4】ストレスをためない
ストレスが続くと、副腎からコルチゾールというホルモンが分泌され、新陳代謝や免疫機能が低下し、糖化が進行してしまう。ストレスを食で解消しようとすれば、糖化の深刻度は増すばかりだ。
「自分なりのリラックス法を見つけること。朝起きたら、まず朝日を浴びて幸せホルモンのセロトニンを増やし、ゆったりと腹式呼吸を数回行いましょう」。
【5】良質の睡眠でメラトニンを出す
睡眠不足は糖化を促進する。
「朝日を浴びて体内時計をリセットし、夜にメラトニンを分泌させ、いい寝具で良質の睡眠を心がけること。目覚めがすっきりせず、歯ぎしり、寝汗が気になる人は、睡眠中に低血糖になっている可能性があり、起床後、高血糖になるので要注意」。
睡眠中の血糖値は、80~140㎎/dLが理想。気になる人は医療機関で測定を。
【6】筋肉をつけて基礎代謝を上げる
糖を消費しやすく、エネルギー代謝のいい体になることも大切だ。
「健康で長寿の女性を調べたところ、ふくらはぎの筋肉がしっかりついていることがわかりました。スクワットなどのエクササイズもいいのですが、3~5㎝のヒールなど、無理のない高さのパンプスで2~3時間歩くと、骨盤や背筋、腹筋に適度な負荷がかかり、ふくらはぎが鍛えられるのでおすすめです」。
【7】AGEsを分解させて排出する
一度できてしまったAGEsは分解されにくいものの、タンパク質分解酵素などによって分解され、尿として排泄されることがわかっている。
「AGEsの分解促進作用がある食品の研究は、まだ始まったばかりですが、ハーブのローズマリー、ざくろ、スーパーフードのノニの果実にあることがわかっています」。
メラトニンにもAGEsの分解作用があるため、良質の睡眠は、糖化の抑制にも解消にもなる。
イラスト/秋葉あきこ
※女性セブン2019年6月6日号
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