転院しようとした矢先、父危篤との連絡が。家族は慌てて病院へ【実家は老々介護中 Vol.39】
81才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私と3歳上の兄は、実家に通って母を手伝っています。終末期の父を家で看るのが難しくなり、父は急性期病院へ入院。その後少し安定した父はターミナルケアの病院へ転院することになりました。ところが、転院の手続きを始めた矢先、危篤の知らせが。毎日がジェットコースターのように慌ただしいです。
→38話「終末期の父、転院を迫られる…。どこに行けばいいのか母も私も苦渋の選択をしなければいけません」を読む
「手遅れになると困るので、面会にいらっしゃってもいいと思います」
深夜0時を回ったころ、いきなり電話が鳴り飛び起きました。父が入院している病院の看護師さんからでした。
「尿が減り、血圧も下がっています。手遅れになると困るので、面会にいらっしゃってもいいと思います」
慌てて夫に車を出してもらい、父が入院している実家近くの病院へ向かいました。往復3時間余りを送り届けてくれて、夫には感謝しかありません。
病院に着くと、すでに到着していた母、兄と看護師さんがヒソヒソと話していました。看護師さんは、
「ご本人が寝ていたとしても、ずっとそばに居て、肌に触れていてあげてくださいね。いよいよか、というとき、近くに人がいるのって気配でわかるものなんですよ」
と教えてくれました。
さて、父の顔を覗きこむと薄目を開けています。寝ているのに目が開いてしまってるのかな?とりあえず母、兄と一緒に父の手や足を揉んだり、昔行った旅行の思い出話をしたり。家族がそばにいると父にわかるようにして過ごしました。
「お父さん、見える?孫たちの写真だよ」
こんなときに見せても…なのですが、最近あった、学校行事の晴れがましい写真をいくつか見せると、「うん、うん」と反応する父。認識できたかわからないですが、いつもと同じように話しかけていると、父の頬に赤みが戻ってきて、明け方には血圧も持ち直したのです。良かった…!
実家に戻ると、母は「最近の父の様子を見て覚悟していた」とポツリ。
「お父さんここのところ、『暑い、暑い』って、布団を蹴飛ばしてたから、もうそういうときなのか、と思っていたのよ」
平熱を保てなくなって暑がるのはよくあることなのだそうです。
このように私たちが終末期の様子を冷静に予習してあるのは、母はこれまでの経験値、私と兄は、訪問診療の看護師さんがくれた「人が亡くなるとき、どんな様子となるか」 が書かれた冊子によるところが大きいです。
その冊子によると、「数週間くらい前から、食事・水分を摂る量が少なくなり、眠っていることが多くなる」ことや、「外のことに興味がなくなる」といったこと、また、実践できませんでしたが、家で看取る場合は「呼吸数が少なくなったら主治医を呼ぶように」という指示も書かれていました。
「掛け布団が呼吸で上下する回数を数えて、1分間に10回以下となったら、もう間もなくなので、主治医に連絡するように」という内容だったのですが、私たち家族は、「今は冬だから、布団が分厚すぎて呼吸で上下する様子なんて数えられないよね?ティッシュをお父さんの鼻の前に当てて、息の回数を数えようか…?」と、対策まで考えていたのです。
病院の人がパソコンに打ち込み、オリジナルで作ったもののようで、 コピーをパチンと留めただけの冊子 でしたが、心づもりができてありがたかったです。
父の状況が乱高下する状況となり、私は、「このまま転院せずに済むのかもしれない」と思っていました。しかし、またも病院から「状況の安定しているうちに転院をお願いします」と言われ、慌ててバタバタと段取りを組むことになります…。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(81才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
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