大人用のおむつ着用時にやりがちな5つの間違い|漏れやムレ、肌かぶれを防ぐ対策を排泄ケアの専門家が解説
介護が必要な人にとって、「大人用のおむつや紙パンツは、正しい使い方ができていないと肌トラブルなどの原因になります」と語るのは、現役看護師で排泄ケアの専門家でもある浦田克美さんだ。おむつを装着するときに間違っている人も多いという。正しい着用法や肌トラブルを防ぐ対策を教えてもらった。
教えてくれた人
皮膚・排泄ケア特定認定看護師 浦田克美さん
東葛クリニック病院看護部主任。皮膚・排泄ケア特定認定看護師。紙おむつやおむつ交換に関する情報が少ないと、YouTube「はぴなぴ チャンネル」などで、初心者でもわかりやすいように情報を発信中。看護師として、介護する人・される人に寄り添った活動を継続している。共著に『褥瘡ケアのプロになる 看護の技とおむつケア』(医学と看護社)など。
大人用の紙おむつ・紙パンツの間違い
排泄ケアに使用するおむつは、「ご自身でトイレで排泄できないなど介護度の高いかたが利用されるテープで留めるタイプの『テープ型紙おむつ』と、自立度の高いかた向けの『紙パンツ』の2種類があります。着用の仕方やサイズ選びの間違いなどから、皮膚トラブルを起こしてしまうことも。
とくにテープ型紙おむつは、周囲の介護者がケアや交換することとなるので、気を配ってあげることが大切です」
こう話すのは、皮膚・排泄ケア特定認定看護師の浦田克美さん。浦田さんは病院に勤務しながら、YouTube「はぴなぴ チャンネル」で排泄ケアや大人用のおむつなどに関する情報を発信している。
「一番に気をつけていただきたいのが、『サイズが合っているか』『適切な付け方をしているかどうか』ということです」(浦田さん、以下同)
紙おむつや紙パンツの利用時に、やってしまいがちな間違いについて以下で解説する。
1.サイズ選びを間違っている
「紙おむつや紙パンツは、利用者の今の体のサイズや介護状態に合わせて、適したものを選ぶことが大切」と、浦田さんは話す。
「普段の洋服のサイズがLだからと同じLサイズのおむつを選ぶのはNG。加齢や筋肉の低下などで痩せてしまい、МやSサイズになっていることもあります。今現在の体のサイズを見て合った紙おむつを選ぶようにしましょう。
間違えがちなのが、大は小を兼ねるという考え方からか、大き目のサイズを選ぶこと。紙おむつも紙パンツも、大き過ぎると身体にフィットせずに浮いてしまったり、ズレたりして排泄物が漏れてしまったりすることがあります。
反対に小さすぎると下腹部の圧迫や不快感の原因になります」
テープ型紙おむつはヒップサイズ、紙パンツはウエストサイズで選ぶのがポイントだという。
2.尿パッドを重ねて使っている
「紙おむつや紙パンツの中に、尿パッドを装着して使用するケースが多いのですが、このパッドの使い方を間違っている場合があります。
この方法は、排泄時にパッドだけを交換すればよく、経済的で使用済みのゴミの量を減らせるというメリットはありますが、これは介護をする側の人にとっての話。使い方によってはムレたり擦れたりして皮膚がかぶれる原因になります。
パッドを何枚も重ねて汚れたパッドを1枚ずつ抜いていくという排泄介助をしているという話も聞きますが、利用者はモコモコして不快に感じますし、発汗してムレる原因にもなるので、このやり方はやめましょう。
また、パッドがしっかり尿道口にフィットしているか、正しい位置にあてることも大切です。パッドがズレてしまうと、排泄物の漏れはもちろん、擦れて皮膚トラブルに繋がります」
3.紙おむつやパッドの容量が間違っている
「おむつやパッドには、排泄物を吸収する“容量”を正しく選ぶ必要があります。容量が少ないと寝ている間に漏れてしまったり、排泄物を吸収できずに肌に触れたままになったりと、不衛生です。
介護が必要なかたのおおよその排尿量を把握し、介護する人が1日に何回交換できるかで、用意する紙おむつやパッドを決めるといいでしょう。
例えば、1日2000CC排尿があるとして、朝・昼・夕・晩の4回交換できるのなら、500CC~750CCを吸収できるパッドを用意します。
介護士さんなどが1日に2回来て訪問してくれる際に変えるだけなら、1000CC以上対応できるパッドやおむつが必要です。
紙おむつや尿パッドの吸水の容量や付け方はパッケージに書いてあります。みなさん見落としがちなのですが、必ずチェックしましょう」
4.紙おむつのテープの留め方が間違っている
紙おむつはテープの留め方に注意が必要だという。
「赤ちゃん用のおむつを交換したことがある人がやりがちなのは、テープをウエスト部分で平行に留めてしまうことです。これは鼠径部を圧迫してしまうことがあるのでやめたほうがいいですね。大人用の紙おむつのテープは、クロス留めにしてください」
OK:クロスに留めるのが正解
NG:平行に留めるのは間違い
5.紙パンツのギャザーが立ち上がっていない
紙パンツのギャザーが寝たままだと、フィットせず漏れの原因に。
「紙パンツはウエストと股の部分のギャザーがついていますが、使用前は、このギャザーがたたまれているので、しっかりギャザーを立ち上がらせることが必要です。
まず、着用する前に紙パンツの中に両手をパーにして入れて広げ、ギャザーをしっかり立たせます。
さらに、紙パンツの後ろ側には中心線がプリントされているので、中心線と背骨を合わせることで正しい状態に装着できます。
最後に、紙パンツの後ろ(背骨にあたる部分)の上部を指で上にピッと軽くつまみあげると、より鼠径部の正しい位置にギャザーがあたって落ち着き、漏れにくくなります」
商品の使用方法を確認することが大切
平成25年度の内閣府の世論調査※によると、「介護で苦労したこと」の1位は、「排泄時の付き添いやおむつの交換」となっている。紙おむつや紙パンツは、着用する人だけでなく介護者も、正しい方法を知ることで負担やストレスを軽減できると浦田さんは話す。
「ドラッグストアなどで大人用の紙おむつはたくさん販売されていますし、介護が必要なご家族がいらっしゃる人にとっては毎日使うもので身近な商品ではあるのですが、なかなか正しいおむつ交換について知る機会は少ないですよね。
商品のパッケージには使用方法が明記されているので、必ず最初に読んで正しい着用方法を守ってほしいですね。それだけでもおむつ利用は快適になると思いますよ」
※内閣府「介護ロボットに関する特別世論調査の概要」より。
https://survey.gov-online.go.jp/hutai/h25/h25-kaigo.pdf
撮影/楠聖子(浦田さん写真)、黒石あみ 構成/介護ポストセブン編集部
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