「紙オムツを拒否する」介護の悩みをプロが回答!はいてもらうための工夫や声のかけ方
シニア世代に向けた紙オムツや紙パンツ、尿モレパッドなど、さまざまなアイテムが登場している。排泄トラブルがあっても「まだいいわ」「使いたくない」と抵抗を感じる人も多いようだ。そこでYouTubeで紙オムツの使い方を発信する看護師の浦田克美さんに、紙オムツと紙パンツの違いや、布パンツから紙パンツにスムーズに切り替えるための声のかけ方などについて教えてもらった。
紙オムツを拒否する理由とは?
「高齢の親の排泄トラブルが気になるけど、なかなか紙オムツをはいてくれないという悩みは多いですよね」
こう語るのは、皮膚・排泄ケア認定看護師として病院で働きながら、YouTube「はぴなぴチャンネル」でオムツについての情報を発信している浦田克美さんだ。
「紙オムツと紙パンツは広い意味では同じものですが、紙オムツというとどうしても介護のイメージが強く、『まだ自分は介護が必要ではないから』と、なかなか最初の一歩が踏み出せない方も多いようです。
また、紙オムツと聞くと、寝たきりの人が使うイメージを持っている方も多いので、紙オムツではなく、紙パンツやリハビリパンツという呼び方をしたほうが敷居は下がるかもしれませんね」
また、使い捨ての紙パンツはもったいないという経済的な理由から拒否感を示すパターンも。その場合、「紙パンツに尿を吸収するパッドを併用して、生理ナプキンのようにパッドを取り替えながら使うという方法もありますよ」
紙オムツ・紙パンツへの移行方法や対処法
排泄ケアのためのアイテムを間違った使い方をして病院に訪れる方も多いという。その事例と対処法を紹介する。
・女性は生理用ナプキンで肌かぶれのトラブルも
「尿モレの対策として、生理用ナプキンで代用されている方が多いんですよ。娘さんの生理用ナプキンをこっそり使っているという方もいました」と浦田さん。
しかし、生理用ナプキンによる肌トラブルは意外と多いという。
「生理用ナプキンは経血を吸水するのが目的。尿の量は経血よりもずっと多いので、生理用ナプキンの吸収量と吸収スピードでは追いつかないんです。下着の中でムレてしまい、肌あれやかぶれてしまうことも多いんです。
尿モレ対策には、かならず専用のものを使いましょう。尿を吸収するためのパッド(吸水パッド、尿モレパッド、尿取りパッドなども呼ばれる)や紙パンツを使うのがおすすめです。
これらの商品には、尿を吸水するためのポリマーが多く含まれていて、尿をしっかりと吸収してくれます。見た目は生理用ナプキンと似ていますが、構造がまったく違います。
また、ニオイの問題もあるという。
「生理用ナプキンはあくまで経血用で、尿のニオイまで配慮されている訳ではありません。尿モレ対策用のパッドや紙パンツには、尿のアンモニア成分に対する消臭作用があるものが多いんです。
こういったトラブルがきっかけで専用のパッドや紙パンツに移行する方は多いですね」
紙オムツをはいてほしいときの声のかけ方「NGワード」
高齢の親を介護していて、そろそろ紙パンツを使ってほしい。そんなとき、浦田さんの経験から、「尿モレしているんでしょ。これを使ったほうがいいよ」などとストレートな言い方は避けたほうがいいとのこと。
「ただでさえ尿モレなど排泄のトラブルは自尊心が傷ついているので、家族とはいえストレートに指摘されると、余計に意固地になってしまうこともあります」
また、つい言ってしまいそうなのが、「外出先で服や下着を汚したら大変でしょ」という言葉。良かれと思ってアドバイスしていても、場合によっては外出への不安をあおり、引きこもる原因になることもあるという。
NGワード
・そろそろオムツにしたほうがいいんじゃない?
・尿モレしているよ、オムツ使ったら?
・人前で洋服を汚しちゃったら大変だよ
紙オムツの抵抗感をなくす声のかけ方「OKワード」
「生理用ナプキンなど間違った使い方をして肌トラブルがある方の場合には、『代わりにこれを使うといいですよ』と言ってパッドを渡すと、すんなりと使い始めてくださるパターンは多いですね。
『毎日じゃなくても、お出かけの時だけでも使うとトイレが見つからなくても安心ですよ』『結婚式などみんなが集まるときも、トイレを気にしないでいいですよ』といった、本人が前向きになる伝え方も」
また、「汚れた下着を、洗濯せずにそのまま捨てればいいのでラクですよ」と、使い捨てのメリットをアピールするのも手。
OKワード
・肌にもやさしいしニオイも気にならないよ
・外出先でトイレが見つからないときに安心だよ
・これをはいていけばトイレを気にせずに楽しめるよ
・使い捨てだから洗濯不要でラクになるよ
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「パッドや紙パンツを使うことで、安心感が得られると思うと、試してみようかなと思ってくれることが多いと思います。なるべくご本人がポジティブになれる言葉がけができるといいですね。
便利なアイテムを活用することで、肌トラブルやニオイも気にならず、快適に生活できることが伝えられるといいと思います」
教えてくれた人
浦田克美さん/皮膚・排泄ケア認定看護師
東葛クリニック病院看護部主任。皮膚・排泄ケア認定看護師。消化器外科配属のとき、人口肛門(ストーマ)造設術を受けた患者が排泄ケアに悩み引きこもる人が多いことを知り、また介護の現場でも紙おむつの情報が少ないことを痛感し、「排泄問題は尊厳に関わる」と実感。自ら紙おむつを使用、実験して検証し、YouTube「チャンネルはぴなぴ」で発信する。共著に『褥瘡ケアのプロになる―看護の技とおむつケア』(医学と看護社)ほか。
撮影/楠聖子 取材・文/別所礼子
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