猫が母になつきません 第382話「のこる」
参列者は家族だけ、お坊さんも頼んでいないので火葬場であっという間に棺は炉に入ることになりました。到着して、火葬許可証を渡して、お焼香をして、と思ったらもう火葬炉の前。もう焼くのか。早い…なんかごめん。
待合室でお昼の仕出し弁当を食べながら火葬が終わるのを待ちます。食べながら家族と父の葬儀のときの思い出話などをしましたが、その一方で私は「葬儀屋さんのお弁当は頼まなくてよかったのか?ひとりしかいないんだから葬儀屋さんのぶんも頼んで食べてもらうべきだったのに」と自分の気のきかなさを責めて後悔していました。でも、お弁当おいしかったです。
火葬が終わって骨と灰になった母、それでも腰の位置に人工関節がふたつ残っていて母なんだなぁとわかりました。チタン製なので黒くはなっているものの、形はそのままで綺麗に残っていました。葬儀場の方の言われる順番で骨壷に骨を納めていき、最後ははみだすくらいまでいっぱいに。それをスタッフの方がちゃんと蓋をして箱にいれてしろい布に包んでくださる間、みんなで人工関節を見ていました。母はたった3か月の間にこの二つの人工関節を入れる手術をしたのです。私は他の家族とは違う思いでそれを見ていたと思います。正しいかどうかは別にして自分ができることは全部やった、それでも後悔にさいなまれる…←私、今ココです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。