猫が母になつきません 第383話「いっしゅうかん」
母のお葬式が終わった次の日。亡くなった人を偲んで静かに過ごす、つまり喪に服すのが普通ですが、一週間後は引越しです。偲んでいる暇はまったくありません。それまでにも準備をしていたとはいえ、母の入院でしばらくバタバタしていたし、母の容態の変化が激しくて担当医に「もう覚悟してください」と言われたと思ったら持ち直したり、転院先を探して移ろうとすると悪くなって中止になったりで、引越しの日を決めることがなかなかできませんでした。でも家の引き渡しの日は迫っていて、悩みに悩んで引き渡し3日前というギリギリのタイミングに引越しを決行することにしました。実家の引越しはただでさえ大変ですが、母が危篤状態のさなかでの引越し準備なんて考えてもみませんでした。結果的に引越す前に母は亡くなり、母を実家から送り出すことができたのは本当によかったのですが、その後の一週間は記憶がないくらい動き続けることになりました。こんなタイミングでお葬式なんてほんとうに最後の最後まで慌てんぼな母らしいと思います。従姉妹からもLINEで「慌ただしくてほんとうに叔母ちゃんらしい。小学生の私に初恋の人の相談したりかなりユニークでした」と。ひと回り以上年下の姪っ子に恋愛相談…そんな人でした、母は。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。