猫が母になつきません 第381話「わんおぺ」
葬儀を家で家族だけで、つまり最小単位で行う葬儀は葬儀屋さんも最小単位。病院から家まで母を運ぶ時だけは二人体制でしたがその後はずっとひとりだけのワンオペ葬儀でした。こちらも家族はすぐには来れなくて、私と葬儀屋さんのふたりだけで葬儀の準備を整えていきました。死亡届を出して戻ってきた葬儀屋さんとまずは母の着替え。パジャマから私が用意していたレースのジャケットとインナーとパンツ。パンツはゴムのウエストのものだったので履かせるのは楽でしたが、インナーはかぶりだったので腕を通すのにちょっと苦労しました。二人で協力してなんとか着せることができましたが、お仕事とはいえ死んだ人に服を着せるなんて、しかも「お母様すみませんね」とやさしく声もかけながら…大変なお仕事だなぁと思いました。棺に入れるのも二人で。母の体重はかなり落ちていたので全然重くはありませんでした。装花の到着がちょっと遅れて葬儀屋さんはやきもきしていましたが、届いてみると暖色系で「棺がいっぱいになるくらい」の量で発注したお花はとても華やかで、お花屋さんが配置を終えたのを見た葬儀屋さんは「きれいですねぇ!!」と大盛り上がり。実際お葬式らしくないピンクやオレンジのガーベラ、バラ、百合などを使ったアレンジはとっても明るくてきれいでした。
翌日家族だけが集まり、読経も頼んでいないのでお花と一緒に手紙や写真や小物をみんなで棺に入れて小一時間で出棺というとき、「それではこれより出棺させていただきますので…」と言う葬儀屋さんの声は「え?泣くの?」と思うくらい本当に悲しそうで、やっぱり大変なお仕事だなぁと思いました。
家族と葬儀屋さんひとりのお葬式は、型を気にせず誰に気を遣うこともなく母のことだけを見て送れたいいお葬式でした。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。