抗菌薬と抗生物質の違いは?してはいけない薬ののみ方NG例<薬の疑問>に医師がアンサー
体調を崩した時に医療機関で抗菌薬(抗生物質)を処方された人も多いはず。しかし、「抗菌薬は何にでも効く」と思っているあなた、ソレ、間違っています──。抗菌薬の基本をQ&A形式でお届けする。そもそも抗菌薬とは何なのか、抗生物質とどう違うのか、抗菌薬の正しい飲み方について、専門医に解説してもらった。
教えてくれた人
藤友結実子さん/国立国際医療研究センター病院・AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長。専門分野は臨床感染症、感染対策、呼吸器疾患。
あなたは知ってた?「抗菌薬」にまつわるQ&A5選
【Q1】抗菌薬は抗生物質とは違うのか?
【A】
「抗菌薬は細菌を壊したり、増えるのを抑えたり、文字通り細菌だけをやっつける薬です。抗菌薬には自然界の細菌やカビなどの生き物の成分から作られるものと、化学物質を合成して人工的に作られるものがあり、前者(生き物の成分から作られるもの)を抗生物質(抗生剤)といいます。ですので、抗生物質(抗生剤)は抗菌薬と同じものと思っていただいてかまいません」(藤友結実子さん・以下同)
【Q2】抗菌薬ののみ方でしてはいけないことは?
【A】
「医師は患者の年齢や体格、症状などに合わせて抗菌薬を処方しています。薬の種類・量・のみ方はそれぞれ異なるので、指示通りののみ方を守ることが重要です。
不適切な使い方をしていると、病気が治らないだけでなく、予期せぬ副作用が出てしまったり、耐性菌が増える原因にもなったりするので注意しましょう」
【Q3】抗菌薬にはどんなものがあるの?
【A】
「抗菌薬には100以上の種類があり、系統によってそれぞれ分類されています。
中でも有名なのがペニシリン系。人類初の抗生物質として知られています。日本で多く使われている抗菌薬は、セフェム系、マクロライド系、キノロン系などです。体のどこで起きた感染症なのか、どの菌によるものなのかなどによって適切な抗菌薬が処方されます。処方箋を見ると<細菌に効くお薬です>とか<抗菌薬です>などと書いてあるので確認できます」
【Q4】抗菌薬の内服薬が市販されないのはなぜ?
【A】
「抗菌薬が少しだけ入った塗り薬や目薬などは市販されていますが、市販されている内服薬は皆無といっていいでしょう。
それは、感染症の原因となる細菌を推定し、その菌に合う抗菌薬を処方する必要があること。どんな薬でもそうですが、抗菌薬には副作用があるため患者の状態に合わせて処方する必要があり、それらは医師の専門的な知識が必要だからです」
【Q5】抗菌薬が効かなくなると、手術できない?
【A】
「手術のときには術後感染を防ぐために抗菌薬を予防投与しますが、抗菌薬が効かない耐性菌を体内に保菌していると手術が難しくなることがあります。というのも、抗菌薬が効かないので、術後感染を予防することができないからです。すると、手術自体を取りやめるという選択をせざるを得ない場合も。
また抗がん剤治療などで免疫が弱っている人は感染症を起こしやすく、耐性菌による感染症が起こると、効く抗菌薬がないため治療ができないことも起こりえます。もっと身近には、子供の中耳炎の原因菌が薬剤耐性菌だと、治りにくくなることもあります」