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介護施設の種類・選び方【最適施設がわかるチャート付】費用・親の状態で施設を見つける

 自宅介護が続くと、ヘルパーによる支援を受けていても、家族の疲労は確実に蓄積する。自分の親は自分で面倒を看るべき…、そんな義務感を持つことは美徳とは言えない。

 親の介護施設入所を検討することも、親孝行の一つ。施設入所を検討する際のアドバイスを専門家に伺った。

施設サービスは、親のため、家族のため

「施設を利用することは悪ではありません。むしろ、無理をすることのほうが禁物。介護の負担が増え、仕事を辞めてしまう人が年間10万人ほどいますが、家計が立ち行かなくなって家庭不和になったり、不幸を招く例は少なくありません。親もそんな状況は望まないはずです。施設サービスは、親のためでもあり、また家族のためでもあるのです」

 と介護アドバイザーの横井孝治さんは語る。

週末だけショートステイを利用してみる

 介護度が低ければ、送迎付きのデイサービスに送り出したり、週末だけ短期間の宿泊サービスであるショートステイを利用する方法もある。親にとっても家族にとっても、心身のリフレッシュにつながる。

 実際に、ショートステイを利用し、その期間に家族が旅行に出かけるといった使い方をしている人も多くいるという。

→ショートステイを賢く利用するコツ<1>~プロが教える在宅介護のヒント~

親の状態、費用をしっかり見極め施設を決める

 いよいよ在宅での介護が難しくなったら、介護施設への入居を検討しなければならない。介護問題に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授の結城氏が話す。

「自宅にある設備で介護に対応できなくなったりしたほか、徘徊とは言えないまでも目的なく外出したり、昼夜が逆転して生活リズムがくずれたら入居を検討すべき」

 一口に施設と言ってもそれぞれ特性がある。親の状態と費用をしっかりと見極める必要がある。

介護施設の種類と特徴

特別養護老人ホーム

 安い費用でケアが受けられ、終末期まで生活できる施設。基本的に待機者が多く、すぐ入所はできない。原則、要介護3以上が対象だが、要介護2以下でもホーム以外の生活が困難な場合は特例的に入所できる。個室と多床室(大部屋)がある。

介護老人保健施設

 自宅に復帰するためのリハビリが中心の施設。医師や看護師などが常駐し、医学的な管理のもとで、日常生活の介護に加え、機能訓練が受けられる。入所期間は原則3か月だが、実際は長期にわたる入所がいる。多床室(大部屋)が多い。

介護療養型医療施設(介護医療院)

 脳卒中などの治療を終えて、医学的な管理のもとで、長期治療を行う施設。常駐する医師や看護師が多く、医療的ケアが充実。個室と多床室(大部屋)がある。2024年3月末に廃止予定で、順次、新設された介護医療院へ転換される。

認知症高齢者グループホーム

 認知症の高齢者が9人程度の少人数で共同生活する施設。スタッフの援助を受けながら、個々の能力に応じて料理や掃除などを行い、自立した生活を目指す。基本的に待機者が多い。暴力など迷惑行為があると退去させられることがある。

サービス付き高齢者向け住宅

 一般的な賃貸住宅に近い高齢者向けのバリアフリーの住宅。日中は職員が常駐し、安否確認と生活相談のサービスを提供している。介護や生活支援などのサービスは、別に契約する外部の事業者から受けられる。基本的には、個室に入室する。

介護付き有料老人ホーム

 比較的費用は高く、住居と介護や生活支援などが一体になった施設。サービスはホームスタッフから受けられる。要介護度が重い人まで入居できるが、迷惑行為があると退去させられることがある。個室中心で、食事など付加価値のある施設が多い。

→介護施設や介護サービスについてもっと詳しく見る

介護施設選びの最適チャート

 下の表は、親の要介護度や費用の観点から、施設選びのヒントをまとめたものだ。適した施設でなければ親にも家族にも負担やストレスとなってしまう可能性があるだけに注意したい。

生活全般で介護が必要な場合→特別養護老人ホームか介護付き有料老人ホーム

 生活全般の介護が必要である場合、特別養護老人ホーム(特養)か、介護付き有料老人ホーム(有料老人ホーム)が主な選択肢になる。

 どちらも要介護度が高い人の入居に対応しているが、大きな違いは特養が社会福祉法人や自治体が運営する「公的施設」であるのに対し、有料老人ホームは民間企業が運営する「民間施設」であることだ。

 特養への入居は原則要介護3以上が必要となり、有料老人ホームには要介護度による制限がない場合が多い。

 金銭面に不安がある場合、費用が安い特養は心強いが、都市部では希望者も多く、順番待ちとなっている施設も少なくない。

「対する有料老人ホームは一口で分類できないほど様々なものがあります。介護職員の割合や、居室の広さ、スプリンクラーの設置など、様々な基準をクリアしているので、一定程度介護サービスを包括的に受けることができる。その分料金は高めです」(同前)

日常生活のほとんどを自力でこなせる→サービス付き高齢者向け住宅

 日常生活のほとんどを自力でこなせるようなら、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も視野に入る。

「“安否確認”と“生活支援”というサービスがついている手狭なワンルーム賃貸マンションと考えていい。施設という印象も薄いため、親のプライドを損ねなくて済む。

 しかし、サービス付きといっても“24時間体制で様々なことに対応してもらえる”というわけではない。本格的な介護を必要としているのに入居してしまって、“こんなはずじゃなかった”というケースも少なくない。サ高住の中には、“深夜にいるのが警備員1人だけ”“通報装置のみ”といった施設もあるのが現状です」(ケアタウン総合研究所代表・高室成幸氏)

入院で体の機能が低下し、自宅に戻るのは難しい:介護老人保健施設

 入院中に体の機能が低下してしまい、そのままでは自宅に戻ることが難しいという親には、介護老人保健施設(老健)がある。

 老健は基本的にリハビリ施設だ。身体機能が回復するか、原則3か月を過ぎると退所を求められる。自宅に戻ることが前提のため、入居中から要介護者のリハビリの状況や回復具合をチェックしておくと、いざ帰ってからも混乱なく普段の生活に戻れる。

長期的な治療が必要な場合→介護療養型医療施設

 一方、医学的な管理の下、長期的な治療が必要という場合には、介護療養型医療施設(介護医療院)を選びたい。医師や看護師が常駐するため、体調の急変などへの迅速な対応も期待できる。医療に不安のある場合は心強いが、あくまでも「療養」がベースだ。一般的な老人ホームのように、レクリエーションや各種イベントなどは多くないため人間関係が希薄になりがちで、家族が頻繁に顔を出すなど相応のケアが求められる。

→長嶋茂雄氏も!老人ホームより「療養型病院」を終の棲家にという選択

→やりたいことを叶える…療養型病院で家族の思い出づくり

認知症が進行している→認知症高齢者グループホーム

 認知症が進行しているなら、「認知症高齢者グループホーム」への入居が適している。

「1ユニット9人の単位で共同生活をしながら自立した生活を目指します。9人という少ない単位で生活する分、家庭的でアットホームな雰囲気が特徴です」(同前)

 ただ、どんな認知症の患者にも対応できるわけではない。共同生活が前提となるため、他の入居者に迷惑のかかる場合は退去を迫られることがあるので注意が必要だ。

 介護は「人生最後の親孝行」とも言われる。それにどう取り組むかで、介護を受ける親の人生だけでなく、介護をする家族の人生も大きく変わってくる。

※週刊ポスト2019年3月15日号

●介護施設紹介の記事を読む

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