介護食作りに役立つ最新注目アイテム「見た目を変えずに食材が柔らか!炭酸にとろみ!?」【イベントレポート】
90代の母を通いで介護している記者。食が細ってきた母においしいものを食べてもらいたくて日々工夫をしているが、自分たち家族の食事のほかに柔らかい食事を用意するのはなかなか骨が折れる。そこで活用したいのが、介護食作りに役立つアイテムだ。介護食の試食イベントで見つけた注目アイテムをレポートする。
介護食作りに役立つアイテムを探して…
介護食を作るには、食材をペースト状にしたり柔らかく煮込んだりと手間がかかる。誤嚥をしないようにとろみをつけるなどの工夫も必要になる。そこで記者は、介護食の試食イベントに参加してみることに――。
調理家電を手がける家電メーカーのギフモと、とろみ剤などえん下困難者用食品を販売するニュートリーがタッグを組み、都内で試食会イベントが開催された。
ギフモの『デリソフター』は、介護食作りに特化した注目の調理家電だ。10月に炊飯器・電気圧力鍋としても活用できるレシピ本を同梱した『デリソフター DS-1D』が登場した。
試食イベントでは、この『デリソフター』を使ったデザートと、ニュートリーのとろみ調整用食品『ソフティアS』を使った炭酸ドリンクが振舞われた。
イベントで調理実演を担当したのは、兵庫県のレストラン『癒しの森のAlice』のフードコーディネーター・八濱貴将さんだ。
「私のレストランでも一般食とえん下食を区別するのではなく、調理法に工夫を凝らすことで、皆さんが同じ物を召し上がっていただけることを目指しています。
皆さんにも便利な調理器具をうまく採り入れて『食』を楽しんでいただきたいですね」(八濱さん)
食材の見た目を変えずに調理
『デリソフター』は、やわらか調理・炊飯・圧力調理ができる1台3役。食材の見た目を変えずに歯や舌でつぶせる柔らかさに調理できるのが特徴だ。
食材を柔らかく煮込める電気調理鍋は、さまざまなものが登場しているが、『デリソフター』は介護食に特化した機能が注目を集めている。
「やわらか食調理」機能を搭載し、蒸気と高い圧力で食材の見た目を変えることなく柔らかく仕上げることができる。
試食会で調理実演していたのは、八濱さんオリジナルのレシピのスイーツだ。普通に焼いて仕上げたクレープを「やわらか食調理」モードで、さらに柔らかく仕上げてある。
早速記者も試食してみたところ、紫芋を練り込んだクレープが舌でつぶせるほど柔らかく、薔薇の香りのソースとともに喉に滑るように入っていくので食べやすい。
試食会で司会を務めていた介護食アドバイザーの水野時枝さん(ギフモ)は、家族の介護経験がある小川恵さん(ギフモ)とともに『デリソフター』を共同発案したという。
「介護食は食べる側だけではなく作る側にとっても負担が大きいので、それぞれが笑顔になれる製品をという思いから開発しました」と、水野さん。
炭酸にとろみがついて爽やか!
次に試食したのが、ニュートリーのとろみ調整用食品『ソフティアS』を使った、目にも鮮やかな炭酸カクテル風ドリンク「いちじくとミントのサワー」だ。
とろみ調整用食品とは、えん下(飲み込み)が困難になった人の誤嚥を防ぐことを目的にした食品。料理や液体に混ぜてその人に合わせたとろみを付けることで飲み込みやすくするもの。ニュートリーの『ソフティアS』は、消費者庁から「えん下困難者用食品」として表示を許可されたもので、在宅介護のほか、病院や施設などでも幅広く活用されている。
炭酸にとろみをつけると、炭酸が抜けてしまうのではないかと思ったが、口の中で炭酸がプチプチと優しく弾ける。
『ソフティアS』自体には、味にも香りにも影響を与えないので、飲み物の風味や味わいはそのままいかすことができるため、ミントの香りが爽やか。
「料理や飲み物にとろみをつけることで、高齢者やえん下機能が低下したかたに飲食をとりやすくしていただけます。食べ物や飲み物の種類は選びませんので、幅広く使え、楽しみが広がります。高齢者施設でも使用されていますが、在宅介護でもご活用いただけます」と、ニュートリーの広報・横山祥子さん。
便利なアイテムを介護食作りに活用すれば、家族みんなで「おいしいね!」と笑い合うことができる、そんな豊かな気持ちになった。
【データ】
・兵庫県のレストラン『癒しの森のAlice』
https://www.garden-alice.com/
・デリソフターDS-1D(ギフモ)
https://gifmo.co.jp/delisofter/
価格:6万1600円 ※月額2500円などでレンタルも可。
重量:8㎏
・ソフティアS(ニュートリー)
https://nutri-shop.jp
価格:831円(50包/袋)※公式通販価格
容量:3g(1包)
※とろみ調整用食品は、事前に主治医、管理栄養士などの指導に沿って使用してください。
介護をターゲットにした便利アイテムは市場が拡大中
高齢化が進む中、メーカー各社から介護シーンを想定した商品が続々と登場している。
シニア向け調理家電が熱い
火を使わない電気調理鍋は、高齢者も安心して使える調理家電だ。なかでも自動調理鍋『ヘルシオ ホットクック』(シャープ)が市場をけん引した。水なしで食材を柔らかく仕上げることができ、介護食作りに活用している人も多い。
また、圧力鍋の老舗、ワンダーシェフも介護食と一般食が作れる電気圧力鍋『やわらかさん3.0L』を販売している。
また、T-falが販売する、通常の鍋としても電気圧力鍋としても使える『クリプソ ミニットデュオ』も興味深い。前述の『デリソフター DS-1D』同様、今後は介護食と家族の一般食が1台で作れる調理家電にも注目が集まりそうだ。
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とろみ飲料のトレンドは“炭酸”
今回参加したイベントでは、とろみ調整食品を使った炭酸飲料の実演も行われたが、とろみ剤市場では、“炭酸”がじわじわとブームになっているよう。
記者の90代の母も、食欲が落ちてきくると口の中がさっぱりするので炭酸飲料を飲みたいということがある。市場でもさまざまな商品が登場してきている。
介護食品ブランド「エバースマイル」(大和製罐)から、病院・介護施設向けとして、いち早く『炭酸とろみレモンスカッシュ』が発売された。さらに、炭酸飲料に特化したとろみ調整食品『つるりんこシュワシュワ』(クリニコ)や、液状のとろみ剤『液体とろみ かけるだけ』(ピジョン)も登場している。
えん下食が必要な人でも、一般食と同じものをおいしく食べられるような調理器具や食品のニーズは、今後もますます高まっていくだろう。記者も便利なアイテムを活用して、母と食を楽しんでいきたい。
取材・文・撮影/本上夕貴
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