卑弥呼は80才まで生きた!清少納言など歴史上の偉人に学ぶ健康長寿の食生活【食文化史研究家が考察】
「女の一生」が限りなく延びた現代、世の中に大きな影響を与えた女性たちが晩年をどう生きたのか。女性偉人が好んで食べていた食事から、健康長寿のヒントを学びたい。80才まで生きたと推測される卑弥呼、平安時代に活躍した清少納言、春日局の長寿食とは?日本の食文化史研究家の永山久夫さんに解説いただきました。
教えてくれた人
永山久夫さん/食文化史研究家
歴史上の女性偉人たちの知恵に学ぶ
女性の平均寿命が大幅に延びて久しいが、誰もが健康長寿を全うできるわけではなく、誰でもいつかは人生に幕を下ろす瞬間がやってくる。50才、60才を過ぎて、“後半戦”に差し掛かった際に最期を見据えて毎日を過ごすことはごく自然なことだろう。
実際、2021年に株式会社ハルメクが行った調査によれば、「終活は必要だと思う」と答えた男性が68.6%に留まった一方、女性は89.3%にのぼった。しかし同調査によれば「終活を始めている女性」は必要だと思っている人の半数にも満たない43.3%だった。
つまり、残された大切な時間をどう生かすべきかについて高い関心があるものの、いざ自分に当てはめて考えてみると何が正しい方法かわからずに悩んでいる女性が多いのが現状なのだ。
そんなときは歴史の知恵が頼りになる。情熱と胆力を持って世の中に大きな影響を与えた彼女たちは、何を食べ、どう生きたのだろうか。
卑弥呼を作った長寿食「野菜スープ」
2~3世紀に存在した邪馬台国の女王・卑弥呼。日本史上初めての女王とされる“伝説の巫女”が実は長寿だったことは知られていない。
日本の食文化史研究家の永山久夫さんが解説する。
「3世紀に中国で書かれた『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』などの歴史書から推計すると、卑弥呼は80才前後まで生存していました。しかも彼女はいまわの際までまつりごと(政治)にかかわり、最後の5年間も、国を動かしていたと推測されます」
喜寿を超えるほどの長命を支えたのは「長寿食」だった。
「『魏志倭人伝』には“卑弥呼は生菜(せいさい)を食していた”という記述があります。“生菜”とは“生のおかず”という意味で、いまでいう魚介類の刺し身のことだと推測できる。脂がのった魚には生活習慣病や脳の老化を防ぐオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれます」(永山さん)
もう1つの注目メニューは「菜茹(さいじょ)」だと永山さんは続ける。
「『魏志倭人伝』に続いて5世紀に中国で書かれた『後漢書倭伝(ごかんじょわでん)』には、“倭の国は、冬も夏も菜茹を食す”と記されていました。
菜茹とはいまでいう野菜スープのことで、当時の日本人はねぎや三つ葉、ごぼう、しょうが、かぶなどを煮込んで食べていた。それらの野菜が含有するβカロテンやポリフェノールなどの抗酸化成分には細胞の老化を防ぐ効能があるうえ、熱を加えることで吸収されやすくなります。『生菜』と『菜茹』が卑弥呼の長寿の秘訣だったことは間違いないでしょう」
ただし、当時卑弥呼だけがずば抜けて長生きしたわけではない。『魏志倭人伝』には「邪馬台国人は長命で、100才あるいは80才、90才まで生きる」との記述があった。食が長寿の基本であることの何よりの証拠だろう。
清少納言も春日局もご飯をしっかり食べていた
平安時代に『枕草子』を記した清少納言や、江戸時代に徳川3代将軍・家光の乳母として活躍した春日局も食生活にこだわりがあった。
「清少納言はご飯の上に、みそのルーツとされる大豆食品の『醬(ひしお)』や、煮出したかつおぶしのだしを濃縮した『色利(いろり)』をのせて食べることを好みました。
『醬』はたんぱく質や女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンが豊富なうえ、発酵食品のため整腸効果も期待できます。
『色利』はオメガ3系脂肪酸のDHAやEPAが豊富。頭の回転がよくなり、彼女の豊かな発想力や表現力に一役買ったと考えられます。
一方、春日局は食が細く体が弱かった家光のために、赤小豆飯や粟飯、麦飯など栄養価の高い7種類のご飯を一度に出す『七色飯』を考案しています。おかげで家光は元気になり、立派に将軍職を務めました。2人が口にしていた食事に共通するのは、質素でありながら栄養豊富であったこと、そして主食であるご飯をしっかり食べていたことでしょう」(永山さん)
清少納言は宮仕えをやめたのちに60才くらいまで生きたとされる。春日局も家光の将軍就任に伴い大奥の公務を取り仕切る大役を担ったのち、64才で生涯を閉じた。2人とも晩年まで健康なまま、当時としてはかなりの長寿を全うしたのだ。
文/池田道大 取材/小山内麗香、桜田容子、田村菜津季、祓川学、平田淳 写真/アフロ イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2023年10月26日号
https://josei7.com/
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