「階段を使う」は逆効果?足腰の老化を防ぐ20の生活習慣【整形外科医解説】
「老いには抗えない」と諦めてしまいがちだが、実年齢よりも若く見える人は確かに存在する。近年の研究で、日頃の生活習慣次第で老化は限りなく遅らせることが可能だとわかってきた。年齢による足腰の機能低下を防ぐ最強の習慣を名医が指南する。
教えてくれた人
戸田佳孝さん/整形外科医・戸田整形外科リウマチ科クリニック院長
衰えやすい足腰の筋肉を守って鍛える
年齢とともに足腰の衰えを感じ、ひざや腰の痛みに悩まされる人も少なくない。
「その理由は下半身の筋肉が痩せやすいことにあります」と話すのは、整形外科医で戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師だ。
「加齢による筋力低下は上半身よりも下半身が顕著で、特に曲げる筋肉より伸ばす筋肉の衰えが大きい。30才時の筋力を100%として、70才ではひざを伸ばす大腿四頭筋が40%まで減っていたとの調査結果もあります」
そこでチェックすべきは、普段の「歩き方」だという。
「大腿四頭筋が衰えるとひざが伸びきらずに歩くことになり、腰とひざにかかる負担が大きくなります。歩く時の基本はひざをしっかり伸ばし、かかとから着地すること。着地時の衝撃が股関節や骨盤に分散し、ひざの負担を軽減することができます。また、足首が硬くなると転倒しやすくなるので、かかとから着地してつま先で蹴り出し、足首をしっかり動かす癖をつけましょう」(戸田医師。以下「 」内は同じ)
高齢者は前かがみになり、頭が前に出た状態で歩く人も多いが、その姿勢では約7kgある頭の重さを支えるために、首が傾くことで腰とひざへの負担がさらに増す。あごを引き、頭が出ないように歩くのが鉄則だ。
「足を鍛えようと、エスカレーターやエレベーターを使わないようにしている人もいますが、階段の下りはひざへの負担が非常に大きいので逆効果。下りは無理せずエスカレーターやエレベーターを利用するほうがいい」
ひざや腰の老化は「履き物」によっても左右される。
「夏場はサンダルで出かけたくなりますが、かかとが固定されない履き物は、脱げないよう無意識に指先で踏ん張ることで足裏のアーチが崩れ、本来の正しい歩行ができなくなる。ひざにも腰にも負担が増えるので、底が平坦なスニーカーを履きましょう。室内でも足裏をよく使えるようにスリッパを履かず、裸足で過ごすのが一番いいのです」
筋トレは毎日より3日に1度 60代以上はラジオ体操にも注意
日常生活では座っている時に「足を組む」癖を直したい。股関節に負担がかかり、腰やひざにも悪影響を及ぼすからだ。
戸田医師が推奨するのが「正座」。ひざに悪いイメージを持たれがちだが、実際は逆だという。
「実はひざにいちばん負担をかけないのが正座で、ひざをしっかり曲げる訓練にもなる。痛くて正座できない人は入浴時に浮力を利用して行なうのがおすすめです。浴槽の縁に両手をつき、ゆっくり縁に体重をのせながらひざを曲げ、腰を落としていくと、大腿四頭筋のストレッチにもなります」
ひざの負担軽減は肥満の解消も有効だが、「60代以上の人は注意が必要です」と戸田医師は言う。
「肥満体型の人が減量することは、ひざの痛みのセルフケアで大きな効果をもたらします。ただし、中高年世代が食事制限だけで痩せようとするのは禁物。骨粗鬆症のリスクが高まるうえ、脂肪より先に筋肉が落ちるため、かえって足腰の老化を加速させてしまう。
大切なのは体脂肪を落とすことと同時に運動で必要な筋肉を落とさないようにすることです」
ひざを守る大腿四頭筋を鍛えるうえで、スクワットやサイドブリッジなどの筋トレが有効だが、戸田医師は「行なうタイミングが大切」と話す。
「筋肉が太くなるのは、筋トレで筋肉を動かして傷をつけることで筋繊維が補修される時に、前よりも太くなる『超回復』が起こるからです。修復は成長ホルモンによって睡眠中に行なわれます。超回復には48~72時間要するといわれており、毎日やるよりも2~3日に1度行なえば筋力がつきやすい。自転車に乗った際に逆回転で漕ぐなど日常のなかでできる動きも筋肉アップには効果的です」
一方でやらないほうがいい運動もあり、その一例が「ラジオ体操」だという。ジャンプする動作が多く、「ひざや足腰全体に負担がかかるため、60才以上の人は避けるべき」と戸田医師は言う。
足腰の老化を防ぐ食材もある。
「鶏むね肉がおすすめです。筋肉の材料となるたんぱく質が豊富なうえ、比較的低脂肪なので、筋力を落とさずにダイエットするにはもってこい。筋肉の持久力向上や疲労回復効果のあるカルノシンという成分が豊富に含まれているので、積極的に摂取したい」
「足腰の老化対策20」スリッパを履かない、あごを引く、足を組まない
【対策1】下りで階段を使わない
下りはひざへの負担が大きいので無理せずエレベーターやエスカレーターを使う。
【対策2】ラジオ体操をしない
両足でジャンプするなどの飛び跳ねる動作がひざや足腰全体の負担になる。
【対策3】1時間以上座り続けない
骨盤周辺の筋肉が固まってしまうことで、腰への負担が増え様々な障害の原因に。
【対策4】歩き方に変化をつける
有酸素運動が目的の場合、15分早歩きをする、大股で歩くなど工夫する。
【対策5】浴槽で正座をする
可動域が広がり、変形性膝関節症からひざを守る大腿四頭筋がストレッチされる。
【対策6】かかとが平坦なスニーカーを履く
歩行時重心移動する際の力を小さくして、ひざの横揺れを防いで、軟骨を守る。
【対策7】スリッパやサンダルを履かない
特に外出時はかかとが固定されないものは履かない。夏はメッシュ生地のものを選ぶ。
【対策8】室内では裸足でいる
裸足で足の裏をよく使い、足の指を動かすことで、外反母趾や内反小趾防止につながる。
【対策9】ストレッチは20秒以内にとどめる
20秒以上行なうと筋肉の反射が起き、筋繊維が剥がれ断裂しやすくなる。
【対策10】筋トレは3日に1度にする
筋トレでダメージを受けた筋肉が回復し筋力がアップするまで48~72時間を要す。
【対策11】痛む足と逆の手で杖を持つ
痛みがある足とは逆側の手に体重を分配するからこそ杖の効果が発揮される。
【対策12】鶏むね肉を積極的に食べる
筋肉の持久力の向上や疲労回復効果がある成分、カルノシンが豊富に含まれている。
【対策13】ビタミンB12を摂る
昆布だしや貝類に含まれ、神経の材料の核酸やリン脂質を増やし神経を治す働きがある。
【対策14】自転車を逆回転で漕ぐ
歩くだけでは鍛えられない、ひざを守る大腿四頭筋を効率的に鍛えることができる。
【対策15】歩く時にひざをしっかり伸ばす
着地時にひざを伸ばすことで地面の衝撃が股関節や骨盤に分散され、ひざの負担を減らす。
【対策16】起きたら和式トイレのポーズをする
寝ている間に動かさず硬くなった筋肉を伸ばす。腰が反らないように注意する。
【対策17】柔らかすぎる寝具を避ける
柔らかいベッドに沈み込むことで、背骨全体が丸くなり、腰の負担が大きくなる。
【対策18】歩く時はかかとから着けて歩く
足首が硬くならないようにかかとから着けて爪先で蹴り出し、足首をしっかり動かす。
【対策19】あごを引いて歩く
前屈みになると頭が出て、その重さを支えるために首が傾き、腰とひざの負担が増える。
【対策20】足を組まない
足を組む姿勢がひざや腰とつながる股関節に負担をかける。
※週刊ポスト2026年7月17日号
●通院しても治らない腰痛の正体とは?5万人を治療した理学療法士が教える根本原因と対処法
●「一発で腰痛改善」を謳う施術サービスは要注意!「施術所任せ」の腰痛治療に隠れた5つの重大リスクを整形外科専門医が警鐘
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