「慢性膵炎と戦う母の密かな抵抗」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第6回
慢性膵炎を抱える母のために、脂質制限食作りに張り切る漫画家で栄養士のうえだのぶさん。脂肪分の高いコンビニスイーツにダメ出しばかりしていたら、母の表情は暗くなる一方。そんなある日、いつものんきな母が静かに感情を爆発させました。まだ始まったばかりのNOオイル生活に起きた、母の密かな抵抗とは?
母の乱
脂質制限ばかりに夢中になり、母の気持ちとズレが生じていることに気づかずにいた私。
「ケーキはダメ、プリンもダメ!」脂肪分の高いコンビニスイーツにダメ出しばかりしていたら、母は静かに爆発しました。
私が仕事の打ち合わせから早めに戻ると、まさかの光景が……。母がお友達と賑やかにケーキパーティーをしていたのです!
母は脂質たっぷりのショートケーキを頬張りながら、意を決したように言いました。
「お友達がせっかく持ってきてくれたのに、食べないと申し訳ないじゃない!」
私がショックだったのは、母がこっそりケーキを食べていたことではありません。
母のお友達に「お母さんを叱らないで!」と言われたことでした。
母は基本のんきな天然系で、怒鳴るとかキレるということはありません。かといって気が弱いわけではなく、自分の考えや思いはハッキリ口にするタイプです。
そんな母が今回は、自分で食事管理ができないため、愚痴も不満も言えずにいたんでしょう。同情してくれるはずの家族に指示をされ、息苦しかったんでしょう。
退院から3週間、母に寄り添ってきたつもりが、母はやりきれない気持ちでいた。お友達に悲しそうに話しているところを想像して、急に自分が「鬼」になったような気がしました。
これって「介護あるある」というか、「人間関係あるある」でしょうか。
「よかれと思って」「あなたのためを思って」
そういうこちら側の想いが空回りし、当の相手に疎まれてしまうという…。
母を追いつめてしまったという申し訳ない気持ちと、突如「鬼」の立ち位置にされてしまった無念さが入り混じって、私は何も言えない気持ちのまま仕事部屋に入りました。
この時私も母も同じ事を考えていたと思います。
「これからどうしよう…」と。
NOオイルMemo
母が抱える慢性膵炎は、なぜ脂質制限が必要なの?と疑問に思われるかたも多いと思います。
担当医によると、そもそも膵臓は食べ物を消化する酵素を作る場所。「膵炎」はその消化液が活性化し、自らを消化しちゃって炎症を起こす病気なのだとか。
母の場合、薬の処方はなく、炎症が治まるまでの間、脂っこい食べ物や刺激物、お酒などを控えて膵臓を安静にすることが対処法なのです。
まだまだ始まったばかりの母と娘のNOオイル生活。抑えていた感情が静かに爆発した母の乱、その後はいかに――。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。57才。山口県で80才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja