死ぬ間際まで元気でいたい!ホルモンを制する者が老化を制する「若返りホルモン・DHEA」の最新データと増やす方法
生涯現役が夢ではない現代で、長生きするのならできるだけ健康に、そして美しく生きたいと願う人が増えている。それを叶えてくれる「物質」は体内にあった。若返り&長寿ホルモン「DHEA」の存在が研究によって明らかになった。その性質やどうしたら増えるのか、専門家に解説いただいた。
教えてくれた人
米井嘉一さん/同志社大学生命医科学部教授。著者に『若返りホルモン』(集英社新書)
ホルモンを制する者こそ老化を制する
日本人の平均寿命は延び続け、2013年には男女ともに80才を超えた。一方、厚生労働省が「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義する健康寿命は、男性は72.68才、女性は75.38才。つまり、人生の終末期には多くの人に、“健康ではない時期”があるということ。
それに抗い、私たちが目指すのは「死ぬ間際まで元気でいたい」ということだろう。そのための老化抑制の研究は、すでに始まっている。
同志社大学生命医科学部教授で『若返りホルモン』(集英社新書)の著者である米井嘉一さんは、「ホルモンを制する者こそ老化を制する」と力強く断言する。
「40代、50代くらいから、『すぐに疲れる』『気力がわかない』『疲れがとれない』『腰や肩が痛い』など、あらゆる老化現象に悩む人は少なくありません。治療が必要な異常は見つからず、“年だから仕方ない”と諦めてしまいがちですが、こうした症状を科学的に追究し、健康長寿を目指すのが『抗加齢医学』です。医療というと病気の治療をイメージすると思いますが、抗加齢医学では、加齢によって起こる変化、つまり老化に抗う方法が研究されていて、究極の予防医学とも呼ばれています」
長寿の人には「DHEA」の血中濃度が高い
研究によって明らかになったことのひとつに、「若返りホルモン」の存在がある。
「いまから20年以上前、当時アンチエイジングの最先端だったアメリカの学会に参加しました。そしてアメリカの国立老化研究所(NIA)の大規模調査から、長寿の人には、血液中の『DHEA』というホルモンの濃度が高いという共通点があることがわかったのです」(米井さん・以下同)
女性ホルモンや男性ホルモン、成長ホルモン、幸せホルモンや愛情ホルモンまで、人生はホルモンに左右されていると言っていい。しかし、そもそもホルモンとは何なのか。
「血液中に分泌される化学的な情報伝達物質の総称です。種類は多く、現在見つかっているだけでも100種類以上あり、もたらす効果は、消化吸収、呼吸、代謝などさまざまに及びます。分泌量は、生活環境や習慣に左右され、なかでも加齢による変化は避けられません。40代以降の体の不調はホルモン分泌量の変化によるところが大きいのです」
そして、その多種多様なホルモンの“親玉的存在”として注目されているのが、若返りホルモン、あるいは長寿ホルモンと称される「DHEA」(デヒドロエピアンドロステロン)だ。
若返りホルモン「DHEA」とは?
「副腎でつくられるホルモンで、免疫機能の維持や生活習慣病のリスク低減、新陳代謝や糖代謝の改善、記憶力の維持、認知症の予防・改善などにかかわっていることがわかっています。
また、健康維持、性ホルモンの安定などに関係する50種類以上のホルモン生成にも関与している。つまりDHEAを減らさず、増やすことが健康な体を作り維持することにつながるということです」
DHEAの生成がスタートするのは、生まれる前の胎児の時期。誕生後に一度ストップするものの、6才くらいから再び生成が始まり、20~25才くらいでピークを迎える。
「ほかのホルモン同様、そこからは生成量が低下します。大きな要因は、DHEAを生成する細胞に、たんぱく質が糖化したものや脂肪が酸化したものなど老廃物がたまることです。
また、ストレスを感じると体内ではコルチゾールというホルモンが分泌されるのですが、これが活性酸素を生み出し体内の細胞を酸化させ、生成を阻害します。DHEAが減少することはがんの罹患にも影響があると考えられ、実際にがん患者のホルモン分泌を調べるとDHEAが少ないこともわかっています」
更年期障害の症状の表れ方にも、DHEAが関与しているという。
「更年期障害は、エストロゲンなど女性ホルモンの分泌量低下によって生じるもの。症状はホットフラッシュやめまい、頭痛など人それぞれです。なかには自覚症状がない人がおり、その理由はDHEAが充分に生成され、エストロゲンが枯渇しないからです」