がんを患う父、肺炎での入院から自宅へ…。在宅介護の再開に娘としては複雑な気持ち【実家は 老々介護中 Vol.26】
80才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私は、たまに実家を手伝っています。父の退院が決まり、なんとまた自宅に戻れることになりました。うれしい反面、たくさんの人の手を借りてまた老々介護が始まると思うと、やっぱり不安。娘としてどのようにサポートしていけばいいのか、思案中です。
肺炎が治り、ついに退院が決定
「入院した当初、電解質解離で脱水がひどく、意識が落ちていました。今は改善されて肺炎もよくなっています」
今日は父の入院している病院へ医師の話を聞きに来ています。コロナ療養中の母に代わって退院の日取りも決めなくては。
がんが見つかった当初から、万一のときも延命治療はせず自然に任せたいと父本人が希望しており、病院にもそう伝えてあります。医師が口を開くとやはりその話が出ました。
「やれることはすべてやりました。これからですが、年齢的にも退院までに体調の急変がないとも限りません。もしものときも心臓マッサージはしませんし、呼吸器もつけません。自然なお体の状況に任せますので、よろしくお願いします」
父の体調が悪くなると毎回この確認をされます。父母の希望だから納得しているけれど、聞くたびに胸がキュッとする思いです。
「はい、わかりました。その通りの対応で問題ありません」
大元の病気であるがんはもう治療しないので、やれることはもうないのはわかっているけれど、なんだか切ない。
病院のソーシャルワーカーさんとも打ち合わせ、父の退院は1週間後に決まりました。コロナ療養中の母の外出自粛期間がちょうど終わるタイミング。そして意外にも、というと変ですが、父は家に戻れることになりました。
「これを機に、ターミナルケアの病院に移るのも選択肢のひとつではありますよ」とソーシャルワーカーさんが言ってくださいましたが、ターミナル期(終末期)こそ、家で過ごしたいという父の希望を叶えたい。
とはいえ、老々介護の母が限界なので、介護保険の範囲のヘルパーさん以外に、自費で頼むヘルパーさんも動員することに。段取りを組んでくれたケアマネさんに感謝しかないのですが、介護チームの皆さんに大変な思いをさせてしまわないか、不安は尽きません。
さて、病室の父に会いに行くと、目をぱっちり開けて「ああ、なに、また来てくれたの」と、父のレベルの中では快活な感じ。すごい回復力…。体力があるのかな、気力かな。うれしいけれど、高齢者の体のことは読めないことばかりなんですね。
退院したら、実家の介護がまた始まるのだと思うとドキドキです。お金のやりくりも確認してはいるけれど、終わりがわからないものだし、やっぱり心配。なるようになれ、後悔しないように、と思いながらぐるぐる考えがまとまらないです。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛