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認知症が進行する母が畳のささくれをむしり続ける!不可解な行動の対処法と最終手段

 作家でブロガーの工藤広伸さんの母は認知症で要介護4。認知症の進行とともに行動に変化があり、ひとつのことへのこだわりや執着が強くなったという。「靴下の毛玉を取り続ける」という謎の行動の次に、母が見つけたのが「畳のささくれ」。今回は、母の不可解な執着の経緯と対策についての話だ。

認知症の母が一心不乱に毛玉を取る

 母は認知症の進行によって、短期記憶の保持が難しくなっているのでしょう。自分の寝室に布団が敷いてあるかどうかを、数分おきに確認しに行きます。

 また、デイサービスの送迎車が来る2時間も前から、何度も外の様子を覗きに行きます。

 もうひとつ気になるのが、こだわりの強さです。

 同じ物を何個も買ったり、お風呂に絶対入らないと言ったりしていた時期もありましたが、最近は違った種類のこだわりを見せています。それが「毛玉取り」です。

 毛玉だらけの靴下やセーターを見つけると、なくなるまで何時間でも取り続けるのです。

 認知症になってからの母はどちらかというと注意力散漫で、ひとつのことを長く続けられなくなったと思っていたのですが、なぜか毛玉だけは執着しています。

 母の手の筋肉は萎縮していて、ペットボトルのふたが開けられない不自由さがあるので、この毛玉取りはリハビリの一環と思うようにして、好きなだけ毛玉を取ってもらっています。

 母のこだわりの強さは気になっていたのですが、新しいある場所に対して異常なこだわりを見せ始めたのです。

畳のささくれを見つけた母の行動

 その場所とは、居間の畳のささくれです。母が長時間座る席のすぐ左側に3か所できていて、靴下の毛玉を取るかのように、畳のささくれをむしり始めました。

 最初は直径1㎝くらいの小さなささくれだったので、すぐに終わるだろうと思っていたのですが、母は翌日もささくれをむしっていました。気づいたら、ささくれは3cmくらいまで拡大。このまま放置していたら、どんどん大きくなってしまいます。早く止めさせなければ!

 早速、畳のささくれの補修方法をネットで調べるところから始めました。

畳のささくれの補修方法

 ささくれの補修は、木工用接着剤や透明マニキュアを塗るといいと書いてありました。また補修用のテープも販売されているとのこと。
 
 どの方法にするか悩んでいる間にも、母はささくれをずっとむしっていました。補修用テープがいいと思ったのですが、補修した箇所だけ畳の色が違うと、今度はその部分を気にするかもしれません。

→認知症の母が台拭きで手や顔を拭いてしまう!困った息子が考えたダイソーの100円グッズの使い方

1.マットで応急処置

 とにかく応急処置でもいいから母を止めなければいけないと思ったわたしは、2階にあった畳のマットを持ってきて、ピンで固定しました。これで大丈夫と思っていたら、わたしがトイレに行った隙にピンを外してマットを片づけ、またささくれをむしり出したのです。

 口頭で注意してもすぐに忘れてしまうので、今度はホワイトボードを持ってきて「さわらないで」とひらがなで書いて、ピンで留め直した畳のマットの上に置きました。しかし母はホワイトボードを片づけ、マットを外して、ささくれを取り始めたのです。

→「今日は何日?何曜日なの」と何度も聞いてくる認知症の母に息子が用意した道具と使い方

2.手すりを置いて隠した

 わたしのイライラもピークに達していたので、とうとう最終手段に出ました。

 玄関にあった重さ10kg以上はある、椅子型の手すりをささくれの上にドンと置いたのです。元々この手すりを居間に設置したら母がどう使うかも気になっていたので、一石二鳥でした。

 これで大丈夫だろうと思って様子を見ていたら、母は手すりの下にあるじゅうたんを気にしていました。何があるのかと思ったら、そこにも毛玉が!今度は、じゅうたんの毛玉を取り始めました。

 恐ろしいほど、毛玉にこだわる母。じゅうたんの毛玉は1時間も経たずに取り終え、今度は手すり自体を気にし始めました。

 とはいえ、手すりの重さは10kg以上あります。手足の不自由な母が、簡単に動かせるものではありません。

ふたたび畳のささくれをむしる母、最終手段は?

 ホッとしたわたしは、2階の自分の部屋で仕事を再開しました。しばらくして1階の母の様子を見に行くと、なぜか手すりの場所が変わっていました。あの重い手すりを動かして、再び現れたささくれをむしっていたのです。

 ここまでやっても畳のささくれにこだわり続ける母に、白旗を上げるしかありませんでした。

 遠距離介護が終わる数日後には、東京へ帰ってしまいます。もしささくれを放置したまま帰ったら、畳はボロボロになってしまうでしょう。他の方法を必死に考えて、畳を裏返せばいいと思いつきました。

 畳を裏返すまで勘違いしていたのですが、畳の裏返しは畳床に貼ってある畳表と呼ばれる表面のゴザの部分だけを裏返して貼り直します。なので、単純に畳の裏表をひっくり返せばいいわけではなかったのです。

 時間がなく焦っていたところ、急にある秘策を思いついたのです。畳を裏返すのではなく、180度回転させて、ささくれを隠してしまえばいい!母がデイサービスに行った隙を見計らって、畳を回転させました。

 デイサービスから帰ってきた母は隠れているささくれに気づかず、テレビを見て笑っていました。こうしてわたしと母の戦いは終わり、平穏を取り戻したのでした。

 あとで分かったことですが、このささくれはわたしの妹が白髪染めをこぼしたときにできたようです。母のこだわりの強さ、恐るべしです。

 今日もしれっと、しれっと。

→この連載の他の記事を読む

工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

●認知症の母が「パンツをはかない理由」困った息子が知恵を絞った失禁対策と収納の工夫

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