全国の駅弁食べ歩き歴20年のライターが選ぶ「忘れられない駅弁」10選&旅の楽しみ方
駅弁ライターの望月崇史さんは、ウェブサイトで駅弁の記事を連載するほどの駅弁好き。駅弁食べ歩き歴はなんと20年! 望月さんは駅弁を食べると「旅先の余韻に浸れる」と話す。それは一体どういうことなのか? 今まで食べてきた中で忘れられない思い出の駅弁10選とともにご紹介する。
旅の余韻に浸れるのが駅弁
日本各地のおいしい駅弁を人から人へと紹介してもらう“友達の輪”方式で取材し続けてきた望月崇史さん。新潟の駅弁をすべて食べるだけでも1年かかったという。
「駅弁は現地の空気や風、水を感じて食べるのがいい。旅でその土地の名産を味わい、その帰り道に再びその地の食文化が詰まった駅弁を食べると、旅の余韻に浸れます」(望月さん・以下同)
東京から西に向かう場合は、しばし食べるのを我慢する「沼津食わず」がおすすめとも。
「沼津あたりから駅弁を広げると、車窓から富士山を眺めながら味わえますよ」
駅弁ライター望月さんが選ぶ駅弁10選
駅弁ライター望月さんの旅の余韻を味わう全国忘れじの駅弁10選!
【1】氏家かきめし / 1250円(氏家待合所)
厚岸駅(北海道)
山海の幸を盛り合わせた名物弁当
大正6年創業の老舗駅弁店が、60年前から販売している厚岸名物の元祖かきめし。
「ひじきとかきの煮汁の炊き込みご飯に、かき煮やあさり煮、しいたけ煮、フキ煮などがずらり」(望月さん・以下同)
【2】シウマイ御弁当 / 900円(崎陽軒)
横浜駅(神奈川県)
ボリューミーで冷めてもおいしい
横浜名物シウマイをメインに、ジューシーな鶏の唐揚げやたけのこ煮などの組み合わせ。
「発売から69年。お米は蒸気炊飯、シウマイの隠し味は干帆立貝柱。ほかでは作れない味です」。
神奈川・東京を中心に約160店舗で販売。
→崎陽軒のシウマイ弁当が“冷めてもおいしい”理由「60年以上売れ続ける7つの工夫」
【3】あなごめし弁当レギュラー / 2430円(うえの)
宮島口駅(広島県)
120年変わらない老舗の味
穴子の骨や頭でとった脂ののっただしで炊き上げたしょうゆ飯に、甘辛く焼いた穴子の蒲焼きを敷き詰めた弁当。
「穴子の焦げ目や焼き上げ方が秀逸。タレとの相性、折箱、掛け紙もよい塩梅」。
宮島口駅前本店うえのなどで販売。
【4】鶏めし弁当 / 950円(花善)
大館駅(秋田県)
70有余年続く歴史あるお弁当
秋田県産あきたこまちを秘伝のスープで炊き上げたご飯と、国産鶏もも肉の甘辛煮は相性抜群。
「賄いとして作られていたものが商品化。甘辛な鶏の味わいがたまりません」。
秋田駅や新青森駅などでも販売。
【5】高原野菜とカツの弁当 / 1150円(丸政)
小淵沢駅(山梨県)
日本初、生野菜が主役の駅弁
新鮮な高原野菜を駅弁に取り入れた画期的な一品。
「生野菜が主役の駅弁はほかに例がない。これを50年以上前に打ち出した先見の明が素晴らしい。生野菜のシャキシャキ感、チキンカツのサクサク感が魅力です」。
■高原列車の車窓風景とワインが似合う
小淵沢駅5番ホーム売店の壁に「小淵沢の名物は駅弁です」の看板があるほど、小海線に乗るなら、丸政の駅弁を買っておくのがおすすめ。
週末等に走る観光列車「HIGH RAIL 1375」は、清里~野辺山間にある標高1375mのJR鉄道最高地点などを走る。
高原風景が35kmも続き、壮大な車窓風景とともに駅弁を味わえる。全席指定なので必ず事前予約を。
【6】鮭の焼漬弁当 / 1250円(三新軒)
新潟駅(新潟県)
駅弁愛好家にも大人気の一品
新潟の郷土料理“鮭の焼漬”をメインにしたロングヒット商品。添えてあるベビーパインがアクセントに。
「秘伝のタレに漬け込んだ鮭は焼き上げているのにしっとり感があって、コシヒカリのご飯によく合います」。
【7】海苔のりべん / 1200円(福豆屋)
郡山駅(福島県)
食材にこだわった手作りの逸品
南三陸産のみちのく寒流のりを使ったこだわりの二段のり弁。
「タレで炊いたおかかや脂がのった焼鮭、厚焼卵などすべてが手作りで、すごくありがたみを感じます」。
福島駅、新白河駅、会津若松駅でも販売。
【8】かつおたたき弁当 / 1300円(仕出しのあんどう)
高知駅(高知駅)
保冷剤つきで鮮魚の弁当を実現
鮮魚であるかつおのたたきを弁当に入れた、駅弁の常識を覆した一品。
「高知の料理屋さんでいただくのと遜色ない味が楽しめます。にんにくや玉ねぎ、みょうがなど、薬味もたっぷり。個数が少ないので予約がおすすめ」。
【9】かしわめし / 大880円(東筑軒)
折尾駅(福岡県)
ご飯がうまい九州屈指の人気駅弁
鶏のだしの炊き込みご飯の上に鶏のそぼろ、錦糸卵、刻みのりを敷き詰めた彩りのよい駅弁。つけ合わせは漬物や佃煮程度だが、食べ応え充分。
「地元で長年愛されるソウルフード駅弁です」。
【10】湖北のおはなし / 1400円(井筒屋)
米原駅(滋賀県)
季節ごとのおこわが楽しみ
琵琶湖・湖北地方の名産、鴨のロースト、赤かぶ、わかさぎのほか、鶏のくわ焼き風、こんにゃく煮などがぎっしり。
「春は山菜、夏は枝豆、秋冬は栗と、季節ごとにおこわが変わるのが魅力。どれも美味」。
創業102年いまも残る立ち売り 福岡・東筑軒 「かしわめし」
全国でも数少ない駅弁の立ち売りが、JR九州・折尾駅では健在。福岡・東筑軒の「かしわめし」は、大正10(1921)年に創業した初代が、福岡らしい鶏肉をいかした弁当を、と考案したのがはじまり。
1日の売り上げは約1900食。経木の折箱や掛け紙なども当時のスタイルを守り、地元住民や鉄道ファンから愛されている。
「おりお~」という第一声に続き、鶏のように手を羽ばたかせながら自作の歌でアピールすると、客が駆け寄る。
小南さんは、「目の不自由なかたが、売店のある別の駅から“元気をもらえる”と、折尾駅まで買いに来てくださったことが。人との出会いこそ立ち売りの醍醐味」と目を細める。
教えてくれた人
望月崇史さん / 駅弁ライター
放送作家、ライター。全国の駅弁食べ歩き歴20年。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」で駅弁のウェブ記事を連載中。
撮影/浅野剛、小原亮二
※女性セブン2023年7月27日号
https://josei7.com/