認知症の母が台拭きで手や顔を拭いてしまう!困った息子が考えたダイソーの100円グッズの使い方
岩手・盛岡で暮らす認知症の母を東京から通いで介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。母は要介護3となり、生活の中でできないことが増えてきた。最近は、台所の台拭きや手を拭くタオルの違いがわからなくなってきて――。介護生活で困ったときは、100円ショップを訪れるという工藤さんが頼ったダイソーのアイテムとは?
認知症の母がタオルの使い分けができない!
母は認知症の進行とともにタオルの使い分けができなくなっています。
実家の台所には、食器を拭くためのタオルと、手を洗ったあとに拭くためのタオル、油汚れや水滴を拭きとる台拭きがありますが、母はすべて同じタオルとして扱ってしまいます。
そのため食器を拭くタオルで手を拭いてしまったり、手を拭くタオルを台拭きとして使ってしまったりするのです。
キレイ好きな母は台所の水滴がとにかく気になるようで、水滴を見つけたら最初に目に入ったタオルを使って、用途に関係なくキレイに拭き取ってしまいます。掃除好きの几帳面な母と思うかもしれませんが、このタオルを「逆」に使ってしまったらどうでしょう?
衛生的ではないタオルの使い方
例えば手を拭いた汚れたタオルを使って、洗い終わった食器を拭くケースです。その食器を使って食事をするのは心地いいものではありませんし、衛生面も心配です。
他にも、母が油汚れなどを拭きとった台拭きを使って、自分の顔を拭いたときは思わず「ダメ!」と声を荒げてしまうほどでした。せっかくキレイに洗った顔を、汚れた台拭きで拭いてしまったら台無しです。
さらに水仕事で台所の床に飛んだ水滴を食器拭きで拭き取ったあと、そのままハンドタオルとして使用したり、食器拭きとして再利用したりするので目が離せません。
このように母は、本来の目的以外のところでタオルを使ってしまうので、遠距離介護で帰省した際はすべてのタオルを信用せず、少しでも使った形跡があったタオルは次々と洗濯機に入れて生活しています。
とはいえ、母がひとりで生活する時間が長いので、間違いを指摘する人がいなければ止められません。口頭で注意したとしても、すぐに忘れてしまいます。
そこで、タオルの違いを分かってもらうために行った工夫をご紹介していきます。
認知症の母にタオルの違いを分かってもらうための工夫
まずは、最も汚れのひどい台拭きから対策を始めました。使い捨てのダスターはポリエステルや紙でできているので、タオルと素材が違います。
しかしダスターは食器拭きや手拭きにも使われ、使い捨てなのに洗濯機の中に入っていました。素材の違うダスターも、タオルと認識してしまうようで、こちらは失敗に終わりました。
次に手拭き用のタオルの工夫です。わが家では台所のシンクの下に、鍋や調味料などを入れるスペースがあり、その扉の取っ手に手拭きタオルを掛けて使っています。
そのタオルを取っ手に巻き付けてギュッと縛れば、母は他の用途に使わなくなるかもしれないと思ったのです。わたしの力で強く縛ったのですが、母は時間を掛けてタオルをほどいてしまい、気づいたら台拭きとして使われていました。
母とタオルの攻防を2年以上続けてきましたが、これといった解決策は見つかりません。わたしは認知症介護の壁にぶつかったとき、近くの100円ショップやホームセンターへ行って、介護に使える道具を探す習慣があります。
今回も解決策を求め100円ショップを歩いてみたところ、思わぬものが目に飛び込んできたのです。
ダイソーで見つけた100円アイテム
100円ショップで偶然見つけた2つの商品を組み合わせて使えば、解決するのでは? と思って購入した商品が「カラビナ」とひも付きの「ハンドタオル」です。
まず、台所の取っ手にカラビナを付け、ひも付きのハンドタオルを掛けてみました。
母がカラビナを外してしまう可能性もありましたが、外し方が分からないようで、手拭きタオルは無事、手拭き専用として使ってもらえるようになりました。床を拭いたり、食器を拭いたり、顔を拭いたりしなくなったので、うまくいったと思ったのですが、別の問題が発生してしまいました。
新たな問題が発生!妹の力を借りてみたら…
料理が得意だった母は、昔の名残なのか台所によく立ちます。料理に必要な材料も調味料も分からないので、水を出して何度も手を洗い、周りに飛び散った水滴を拭きとる行動を繰り返します。
紐付きハンドタオルを探したのですが「キッズ用」しか見つけられず、しかも何度も手を拭く母の水の量に耐えられなくなり、乾く間もなく常に濡れた状態になってしまい、生活しづらくなってしまいました。
そこで岩手に居る妹にこの写真をLINEで送って相談したところ、次のような工夫をしてくれました。
息子と娘、両方の工夫のかいもあって、母は手拭きタオルだけは本来の使い方をしてくれるようになりました。未解決な部分もありますが、これからも工夫を重ねて母には住み慣れた家で生活してもらいたいと思っています。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。