認知症の母の失禁で大量の洗濯物が!寒さで衣類が乾かない問題を解決した道具と使い方
岩手・盛岡で暮らす母を東京から通いで介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。母の認知症が進行し、トイレの失敗が増え衣類や寝具などの洗濯物と格闘する日々だという。冬場は大量の洗濯物がなかなか乾かないという問題が。極寒の岩手で母の洗濯物を乾かすのに使った道具とは?
寒い冬は認知症の母の失禁が増えて大量の洗濯物が!
今シーズンの岩手県盛岡市の冬は正月明けこそ暖かかったものの、1月後半から大寒波がやってくるなど、日中も真冬日(最高気温が0℃未満)が多くなっています。
寒い日が続くと、高齢の母のヒートショックが心配になります。ヒートショックは急激な温度差による血圧の変動で身体に悪影響を及ぼしますが、築50年以上が経過し、断熱効果のない実家は驚くほど寒く、エアコンのない部屋への移動だけでも心配です。
冬は母の失禁が増えます。日中はひとりでトイレに行くことができる母ですが、それでも予想していないタイミングでズボンを濡らす日もあります。そのため、常時リハビリパンツを履いてもらうようにして対策しましたが、問題は夜です。
母の寝室は、エアコンをつけないと夜間の室温は5℃くらいまで下がります。布団から出られないほどの寒さになるので、たとえ布団の真横にポータブルトイレがあったとしても、立ち上がりに時間がかかる母はトイレまでの移動を諦めるほどです。
また、布団と室温の急激な温度差によるヒートショックの心配もしているので、電気代はかかりますが、エアコンは一晩中つけるようにしています。
いろいろ失禁の対策は行っているのですが、それでも下着やシーツ、ズボンなどを汚してしまうので、ひとり暮らしとは思えないほど洗濯物は多くなります。洗濯機を何回も回すのですが、寒さのせいで洗濯物がなかなか乾かず、どんどんたまってしまいます。
母は濡れたままの洗濯物をタンスにしまう
本当はエアコンが設置されている、暖かい居間や寝室で洗濯物を乾かしたいのですが、わが家ではそれができません。母の見える場所に洗濯物を干すと、来客があったときに恥ずかしいといって、寒い部屋に洗濯物を移動するか、外に干して凍らせます。
また完全に乾いていない洗濯物を、洗濯ハンガーから外して、キレイに畳んでタンスに片づけてしまうのです。母だけかと思いきや、認知症の人の中には洗濯物が乾かないうちに取り込んでしまう人もいるようです。
最近では生乾きどころか、ほぼ濡れた状態の洗濯物を畳んで、タンスに片づけたこともありました。その対策のため、母の見えないところで洗濯物を干すのが日常で、わたしの部屋にすべての洗濯物を移動して干す日もあります。
灯油ファンヒーターしかない部屋で、断熱効果ゼロの部屋なので洗濯物が2日経っても乾かず、部屋が洗濯物だらけになる日もあります。あまりにひどい時は、近くのコインランドリーまで行って、乾燥機でまとめて乾かします。
わが家は車がないので、重く湿った洗濯物を持って、路面の凍結した道を歩かなければならないのです。わたしは時間があるので問題ありませんが、ヘルパーさんの滞在時間はわずか1時間。料理や掃除など他の生活援助も必要なので、コインランドリーに行く時間がありません。
洗濯の困った問題を解決した道具
乾燥機の購入は今も悩んでいるのですが、高額でなかなか決断できずにいます。しかし洗濯物はたまる一方。困ったあげくネットで探して見つけたのが、約2000円で購入した衣類乾燥袋です。
衣類乾燥袋は、洗濯物を干す洗濯ハンガーの上から洗濯物を覆うようにして被せ、ふとん乾燥機のホースを袋の下の穴から通して、袋の中を暖かくして洗濯物を乾かすシンプルな仕組みです。
冬は雪が降るため、外でふとんを干せないので、ふとん乾燥機を多用していました。このふとん乾燥機を、洗濯物の乾燥にまで使うなんて驚きでした。
わたしの購入した衣類乾燥袋の説明書には、ふとん乾燥機は低温設定(45℃~55℃)にし、90分ほどで乾くと書いてありました。洗濯物の量の目安はフェイスタオル8枚、靴下5枚。室温など使用環境やふとん乾燥機の機種で、洗濯物の乾く時間は異なるようです。
本来の使い方では、少量の洗濯物しか乾かせません。しかし介護で大量の洗濯物が出るわが家では、洗濯ハンガーにめいっぱい洗濯物を干し、途中乾いた洗濯物を取り込みながら、2時間~4時間近くかけて乾かしています。
衣類乾燥袋のおかげで、2日経っても乾かなかった洗濯物が乾いてくれるようになり、役割を果たしています。コインランドリーの利用回数が減ってラクにはなりましたが、処理能力が高いとはいえないので、たまにコインランドリーを利用しています。
ふとん乾燥機のホースに近い場所にある洗濯物が特に乾きやすいので、厚手のものは洗濯ハンガーの中心に干し、すぐ乾く薄手のタオルや靴下は端で干すなどのコツも必要です。
昨年の大晦日にコインランドリーを利用したところ、駐車場が満車で、乾燥機の前で順番待ちをしている人がいて驚きました。介護に関係なく、寒い地域では洗濯物がなかなか乾かない悩みを抱えている人が多くいるようです。
今日もしれっと、しれっと。
●「今日は何日?何曜日なの」と何度も聞いてくる認知症の母に息子が用意した道具と使い方
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。