認知症の母の「失禁問題」が99%解決した!息子がポータブルトイレに施した工夫
作家でブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡でひとり暮らしをする認知症の母を東京から通いで遠距離介護している。認知症の症状が徐々に進行する中で、悩まされてきたのが「失禁問題」だ。寝室にポータブルトイレ設置しているが、失敗してしまうことが増えてきた。そこで工藤さん考えた、失禁対策とは?
認知症の母の失禁問題を解決したある方法
わたしの1日の予定を狂わすのが、朝に行う母の失禁の後処理です。
いつも母の寝室に入るとき、心の中で「今日は失禁していませんように!」と祈り、シーツや布団を手で触って、尿で濡れているかどうかを確かめます。
前回、岩手の実家に帰省した際は、2週間で6回の失禁がありました。ひどいときは3日連続で失禁があり、汚れたシーツの洗濯と布団を干す重労働を繰り返していたのですが、さすがに毎日だと介護ストレスもたまります。
ヘルパーさんからも母の失禁が増えたとの報告があったので、本気で失禁対策を考え始めました。
一般的な失禁対策は一通りやった
一般的な介護の失禁対策は、一通りやっています。例えば、布のシーツの下に敷布団まで尿が染みない失禁対策用シーツを被せています。
また、シーツの交換がしやすい介護ベッドも検討したのですが、認知症が進行している母は布団の感覚のまま起床し、ベッドから転落する恐れがあったのでやめました。
寝室に設置したポータブルトイレは効果がありました。母が寝ている布団の真横に設置したところ、使ってくれるようになって失禁の後処理の回数は激減しました。しかし、トイレを使った形跡があっても、なぜかシーツや布団が尿で汚れる日もあるのです。
当然、寝る前にリハビリパンツやオムツを母に履いてもらったこともあります。これで失禁対策は万全と思っていたのですが、まさかの失敗に終わりました。
リハパンを履いてもらった日の翌朝に母の布団を確認したら、なぜか布団の周りと敷布団ではなく、掛布団が尿で汚れていました。肝心のリハパンはカラッと乾いていて、万全の対策が意味をなさないことを思い知られたのです。
朝から毎日2時間近くも、布団を干したりシーツを洗濯したりで時間を取られたくありません。
何かいい手はないのか? 理由を探していたところ、ある方法を思いついたのです。
母が抱える2つの問題
母の寝室には、見守りカメラがあります。この見守りカメラは、暗視撮影機能がついていて、暗闇でも母の動きがハッキリわかりますし、録画機能もついています。
早速、母の深夜の行動を動画で分析してみたところ、オムツやリハパンでは決して解決しない理由が見つかったのです。
母には2つの問題があって、1つは認知症です。深夜に尿意で目が覚めたとき、真横にあるポータブルトイレの存在を思い出せません。しかも真っ暗な部屋でないと眠れない母にはポータブルトイレが見えないため、間に合わず失禁するようです。
もう1つの問題は、シャルコー・マリー・トゥース病という難病も抱えているため、手足が不自由なことです。いつも立ち上がりに時間がかかってしまうため、トイレに座る前に失禁してしまうのです。
シーツではなく、布団の周りの畳や掛布団が尿で汚れる理由は、母が布団の真横にあるトイレを思い出せず、しかも暗闇でトイレの存在がわからない。さらに立ち上がるのに時間がかかるために、トイレが真横にあっても間に合わずに失禁していたのです。
常夜灯(豆電球)をつけて寝てくれれば解決すると思ったのですが、寝る前に母が消してしまいます。これ以上、わたしも失禁処理はやりたくありません、必死に考えた結果、ある方法にたどりついたのです。
センサーライトを購入
母にトイレの存在をわかってもらうために、布団から出た瞬間に照明がつく仕掛けはできないかと考えて購入したのが、センサーライトでした。
始めは、母の足元のコンセントにセンサーライトを設置しようと考えました。しかし、ライトを抜いてしまう可能性があります。ポータブルトイレ付近を見渡してみたところ、ちょうどトイレの真上に何十年も使っていなかった電球を見つけたのです。
使えるのか不安でしたが、スイッチを入れたら電球は光りました。ここに人感センサーのついた電球をつければ解決すると思い、早速ネットショップで電球を購入し、取り付けました。
センサーライトの取り付け自体は簡単でしたが、問題は母がトイレに起きたときだけライトが反応するようにしなければならない点でした。寝返りをするたびにセンサーライトが反応してしまうようでは、母が夜中に起きてしまいます。
布団を敷く位置とライトの角度の微調整を繰り返して、設置は終了。あとは問題なくライトが反応するか、数日様子を見ることにしました。
失禁処理がなくなった!
センサーライトを取り付けてからというもの、99%の確率で布団を汚さなくなりました。母の2つの問題を取り除いたことが、功を奏したようです。
残りの1%は何が起きたかというと、センサーライトが反応しない方向に母が立ち上がってしまい、トイレに間に合わずに失禁した日が1日だけありました。
2時間の失禁処理で、わたしはどうしてもイライラしてしまいがちだったのですが、センサーライトのおかげで、母に対して優しく接するようになったと思います。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。