価値観の違う娘婿の言動に腹を立てる男性に毒蝮三太夫がズバリ「もう縁を切ってしまえ」|「マムちゃんの毒入り相談室」第43回
悩みの原因の王道は、今も昔も「人間関係」である。感覚や考え方が違う相手と、どう付き合っていくか。あるいは、付き合う必要はないのか。孫が夜間に緊急入院したときの言動をめぐって、娘の配偶者と大ゲンカした52歳の男性。そんな夫に抗議しない娘への怒りも収まらない。マムシさんは「もう縁を切ってしまえ」と言い切る。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「娘婿のありえない態度に腹が立つ」
大沢悠里ちゃんとやってる「GG放談」に、このあいだ遠藤泰子さんがゲストに来てくれた。ラジオの世界で同じ時代を過ごしてきた超ベテランアナウンサーだ。永六輔さんがいかに厳しかったか、いかにスゴかったかって話で大いに盛り上がった。あの時代には、あの時代にしか作り出せない面白さがあった。今の時代も、今の時代にしかできない面白いことがたくさんあるはずだ。俺は常に若い人たちに期待している。思いっ切りやってくれ!
今回は、娘婿のことで怒っている52歳の男性からの相談だ。
「娘婿に腹を立てています。先日、孫が夜間緊急入院、あわや開腹手術ということがありました。 その日、娘と孫は実家である我が家にいたので、すぐに病院に行き娘婿に連絡をしました。ところが、駆けつけることもなく家で寝ていました。娘の家から病院までは15分くらいです。 後日、なぜ来なかったかを問い質したところ、『医者もいて安心だし、行ってもすることないですからね』との回答。あまりにも腹が立ち、抗議しましたが、まったく聞く耳を持たず、意味がわからないと怒りました。
翌日、娘から『親と絶縁しろ、できないなら離婚だ』と言われたと連絡がありました。娘も納得がいっていないが、離婚したくないとのこと。今度私が連絡してきたら離婚と言われているそうです。当然、この男には腹が立ちますが、そんな夫に抗議しない娘もどうかと思います。娘から直接の連絡はしないでくれとお願いされて了解しましたが、どうしても許せません。私は、どのようにしたらよいのでしょうか?」
回答:「修復したがるのが人間の悪い癖。嫌なことは切り捨てればいい」
あなたが腹を立てる気持ちは、よくわかる。我が子が夜中に病院に運ばれたら、何をおいても駆けつけるのが親としての「常識」だと思うよな。ただ、それを「常識」だと思う人もいれば、お婿さんみたいに思わない人もいる。そして、それぞれ自分が正しいと思っているから、相手に対して「理解できない」と腹が立つんだよね。
話し合ったからって、お互いに「なるほど、そういうことか」と納得するのは難しいだろう。とくに、どっちも頭に血が上っている今は、じたばたしても仕方ない。娘に言われているように、しばらく連絡しないってことでいいんじゃないか。
今回のことに限らず、前々からお婿さんのやることや言うことに、「えっ?」と思うことが多かったんじゃないかな。ここまで価値観が違うとなると、相手のやることなすことにいちいちカチンと来ていたかもしれない。とうとう爆発しちゃったけど、これから先も相手は変わらないだろうね。あなただって自分を変える気はないだろうし。
できることはふたつ。娘を別れさせるか、娘一家と縁を切るかだ。娘が離婚したくないと言ってるんだったら、縁を切るしかない。娘に男を見る目がなかったんだから、そう育てた自分たちが悪かったと諦めよう。あなたは今、お婿さんに腹を立ててるけど、どんなことも本をただせば自分のせいでもあるんだよ。
娘やかわいい孫とだけ付き合って、旦那とは完全に縁を切るという方法もあるかもしれない。ただ、妻子が実家と連絡を取ることを旦那が許さなくて、娘もそれをよしとするなら、もうお手上げだ。先々はともかく、当面は縁を切るのがお互いのためじゃないかな。
関係がこじれたときに、どうにか修復しようと悪あがきするのは、人間の悪い癖だ。修復することで、自分の「正しさ」を証明したいのかもしれない。時には切り捨ててもいいんだよ。ボタンの掛け違いは、最初から掛け直さないとどうしようもない。そもそもボタンと穴の間隔が大きく違っていたら、がんばればがんばるほど余計にイライラするだけだ。
俺も過去に、縁を切った人は何人かいる。たいていは金が原因だな。拝み倒されて金を貸したら、ひどい踏み倒され方をしたとかね。そんなヤツに怒りや恨みを抱き続けるのは、エネルギーの無駄だ。病気になったら患部を切り取るみたいに、嫌なことというデキモノは切り取って忘れてしまおう。執着したら、どんどん悪い影響が広がるだけだ。
冷たい言い方に聞こえたかもしれないけど、そうは言っても親子の絆は簡単には切れない。娘さんと憎み合ってるわけじゃないし、奥さんだってあいだに入ってクッションになってくれそうだ。疎遠な関係であることに慣れるか、娘さんが旦那を見限って戻ってくるか、どういう形かはともかく、時間が経てば解決することもきっとあるよ。
とりあえず今は、娘の家族のことは頭から追っ払って、自分たち夫婦の生活を楽しんでくれ。毎日、怒りながら暮らしてたってしょうがない。それにしても、夏目漱石が言うように「兎角に人の世は住みにくい」だな。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。86歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。大沢悠里さんとの80代コンビによるポッドキャスト配信番組「大沢悠里と毒蝮三太夫のGG放談」も絶好調(毎週土曜日午後3時)。ストリーミングサービス「スポティファイ」で過去の回も含めて無料で楽しめる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。最新刊『無理をしない快感‐「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が好評発売中。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。