年金が3年ぶりの増額で1.9%アップ いくら増える?いつから?FPが解説<増加金額リスト>
年金生活者にとって近年の物価上昇は大きな痛手だが、今年度は3年ぶりの年金増額となる。厚生労働省は令和7年度(2025年)の年金改定についての通知を発出した。これによると、年金額は昨年度に比べて1.9%の引き上げとなる。いくら増えるのか、いつから支給されるのか、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。増加額をリストにまとめたので参考にしてほしい。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
年金額は前年度から1.9%増 いくら増える?いつから?
令和7年度から年金額が改定されます。年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年度見直されます。今年度は、昨年度に比べて「1.9%」のプラス改定となり、3年ぶりの増額改定となりました。
厚生労働省の通知※によると、国民年金の支給額は、令和6年度の月額68,000円から1,308円増加し、月額69,308円となります。なお、昭和31年4月1日以前に生まれたかたの場合、月額69,108円です。
また、老齢厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)は、令和6年度の月額228,372円から4,412円増加し、令和7年度は月額232,784円となります。
※厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001383981.pdf
■年金額(月額)
国民年金(老齢基礎年金:満額1人分)…令和6年度:68,000円|令和7年度:69,308円|増加額:1,308円
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)…令和6年度:228,372円|令和7年度:232,784円|増加額:4,412円
※国民年金…昭和31年4月1日以前生まれのかたの老齢基礎年金(満額1人分)は、月額69,108円(対前年度比+1,300円)。
※厚生年金…男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金・満額)の給付水準。
年金の増額はいつから?
年金は年度(4月~翌年3月)で受給額が決定しているため、令和7年度の増額分は6月から反映されます。
令和7年4月15日に受給する年金は2月分、3月分になりますので、令和6年度分の年金額になります。また、令和7年6月15日は日曜日のため、6月13日の金曜日が支給日となります。
令和7年度から増えるそのほかの年金と増加額
国民年金や厚生年金のほかにも、増額されるものもあります。該当するかたは、確認しておきましょう。たとえば、夫に先立たれた妻など遺族年金を受け取っている場合、以下のようになっています。
遺族年金
遺族年金は、被保険者が死亡した場合に残された遺族が受け取れる公的年金です。「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族基礎年金は老齢基礎年金の満額と同額で、令和7年度は年額831,700円となります。子の加算額は、1人につき年額239,300円、3人目以降は1,500円増えて年額79,800円となります。遺族厚生年金は、厚生年金の加入期間やその間の収入によって異なります。
中高齢寡婦加算額
また、「中高齢寡婦加算額」は、被保険者である夫を亡くした妻(寡婦)が、老齢基礎年金が支給されるまでの間、遺族厚生年金に上乗せして受け取れるものです。令和7年度の中高齢寡婦加算額は、令和6年度に比べ11,800円増え、年額623,800円になります。
■遺族基礎年金…令和6年度:816,000円|令和7年度:831,700円|増加額:15,700円
■中高齢寡婦加算額…令和6年度:612,000 円|令和7年度:623,800円|増加額:11,800円
※日本年金機構 中高齢寡婦加算額
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html#cms04
各種手当・給付金も増額へ
給付金や特別手当なども物価変動に応じた改定ルールが法律で定められており、令和6年度の物価変動率(2.7%)に基づき、2.7%の引上げとなります。
■各種手当(月額)
特別障害給付金(1級)…令和6年度:55,350円|令和7年度:56,850円|増加額:1,500円
特別障害給付金(2級)…令和6年度:44,280円|令和7年度:45,480円|増加額:1,200円
特別障害者手当…令和6年度:28,840円|令和7年度:29,590円|増加額:750円
老齢年金生活者支援給付金|令和6年度:5,310円|令和7年度:5,450円|増加額:140円
障害年金生活者支援給付金(1級)…令和6年度:6,638円|令和7年度:6,813円|増加額:175円
障害年金生活者支援給付金(2級)…令和6年度:5,310円|令和7年度:5,450円|増加額:140円
遺族年金生活者支援給付金|令和6年:5,310円|令和7年度:5,450円|増加額:140円
各種手当や給付金は、要介護認定を受けている人や障害者控除を受けている人が対象となる場合があり、手当等がアップする可能性があるので自治体に確認しておきましょう。
→障害者手帳がなくても申請できる「障害者控除」の実例【介護のお金FP解説】
年金はアップするが国民年金保険料は負担増【まとめ】
令和7年度の年金額は、令和6年度から1.9%のプラス改定となります。
一方で、国民年金保険料は令和6年度に比べて530円増えて月額17,510円にアップしています。なお、来年度はさらにアップする見込みで、現役世代にとっては負担増が続きそうです。
年金額の増額は喜ぶべきことですが、物価や光熱費などの上昇を考えると、この増額では十分とはいえないかもしれません。年金額の変更や保険料の増加など、該当するかたは確認をしておきましょう。