飲酒習慣は7種類のがんを引き起こす!?自分のがんリスク因子を知っていますか?
今、若い人にも増えているがん。医療の進歩と共に「治療」も「がん検診」も、選択肢が多くて複雑になり、情報が氾濫していて何が正しいか分からない状況を生み出している。「実は、がん検診にも、専門家でなければ分からないような盲点や落とし穴がたくさんある」と言うのは、医師の近藤慎太郎さん。
『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP刊)を刊行した近藤さんに、生活習慣が引き起こすがんリスクについて聞いた。
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がん検診の種類は自分のリスク因子に応じて選択を
乳がん検診で、マンモグラフィーはあまり意味がないという意見もあるが、近藤さんは、人それぞれで、一概に意味があるかないかは語れないという。
「乳腺濃度が高い人は、マンモグラフィーを撮ってもきれいに写らないんですね。乳腺が真っ白に写ってがんも白く写るので、わからない。だから、乳腺濃度が高い人は、マンモグラフィーはあまり有益ではないので、撮影して、自分の乳腺濃度が高いのか低いのかを担当の方に確認するといいと思います。その上で、高い人は乳腺エコーをドックのオプションで併用したり、セルフチェックを欠かさずするなどをおすすめします」(近藤さん、以下「」同)
マンモグラフィーがいい、悪いということではなく合う、合わないがあるというのだ。
「乳がんに限らず、本当は、自分のリスクに応じて検診の方法を変えていくべきなんです。乳腺濃度が高ければマンモグラフィーだけでは危ないかもしれないし、ピロリ菌がいたら胃カメラのほうがいいし、たばこを吸っていたら、ちゃんとレントゲンや胸部CTを撮った方がいい」
自治体の検診程度でいいか、人間ドックで全身を診てもらうほうがいいか迷ってしまうが、近藤さんはこう語る。
「それも個人のリスク因子によって違う。リスクが高いところは手厚くする方がいいし、リスクによって違うので、そこを認識した上で選択肢を考える必要があります」
酒好きは7つのがんのリスクが
酒好きな人は多いが、酒は肝臓がんだけでなく、7つのがんにつながるという。
「たばこは15種類、お酒は7種類のがんのリスク因子を上げることは、疫学的にわかっています。疫学というのはたくさんの人を集めて、たばこを吸っている人、吸っていない人、お酒を飲んでいる人、飲んでいない人…というように分けて、どのがんがどのくらいリスクを上げるのかを調べています」
酒は量が問題ではなく、少し飲むだけでダメージを与える場合も。
「お酒には、強い弱いがあるので個人差はありますので、お酒を代謝するのがすごく早い人は、ある程度量を飲んでも大丈夫ですが、飲めない人は少しでも影響があると考えます。もともとお酒に強くなく、飲んで顔が赤くなる人でも、全くの下戸じゃなかったら、飲んでいるうちに鍛えられ、だんだん飲めるようになるんですが、そういう人は、本来は代謝能力が低いのに無理して飲んでいることになるので、ダメージが出やすく、がんのリスクも高まりやすいことがわかっています。お酒に関しては無理をせず、ご自身の体質に合わせて適量を決めていただくことが大事ですね」
また飲酒は、発がんリスクのみならず、脳にも影響を与え、認知症にもつながると警告する。
「以前は、適量の飲酒は認知療法に良いといわれていましたが、最新の研究では、少量でも脳にダメージを与えることがわかってきました。認知機能を落としたり、記憶に関わる「海馬」が萎縮したりするという、コルサコフ症候群という病気になるということがわかっています。お酒を飲んでいた方は発症しやすく、特にアルコール中毒のような、飲み続けている方に顕著なのですが、主に記憶障害が見られます。新しいことが覚えられない、以前のことが思い出せないなどの症状や、忘れてしまった記憶を埋め合わせるように間違った情報で話をつくり上げてしまったり、おかしなことを言い出したりしますね」
特に若い世代は、今から自分の体のことをよく考えることが大事で、リスク因子のない人も、自治体の検診を受けることを近藤さんは積極的に勧める。
「1回検診を受けて大丈夫だからもう受けてなくても大丈夫、ということではなく、ある程度定期的に受ける方がいいと思います。
新著にも書きましたが、医療はものすごい勢いで高度化、細分化しています。それも病気が進行するほど、状況は複雑になっていっています。病気はごく初期であれば、選択肢は少なく、「正解」が求めやすいので、そういう意味でも、がんの予防や早期発見はとても大切です。みなさんが正しい情報を得て、状況が複雑になる前にコントロールできる一助となることを願っています」
近藤慎太郎(こんどう・しんたろう)
1972年生まれ。医学博士医。北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任。消化器の専門医として、数多くのがん患者を診療。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。著書に『がんで助かる人、助からない人』(旬報社)。ブログ:『医療のX丁目Y番地』(http://blog.medicalxandy.com/)
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