「毎年受ける自治体の検診で子宮頸がんが発覚したパート主婦」「検診を怠っていた大学病院の医師」実例に学ぶがん検診の重要性
2人に1人が「がん」になり、4人に1人が「がん」で亡くなっている日本。厚生労働省も、受診率60%以上を目標にがん検診を推進している。がん検診で早期発見し、命が救われたというがんサバイバーたちは、会社などで人間ドックや健康診断を受ける機会がない人ほど、自治体などが行っているがん検診を積極的に受けるべきだという。大学病院の医師、パートや専業主婦のケース別に、検診の重要性を解説する。
教えてくれた人
小西敏郎さん(77)/消化器外科医。
1972年東京大学医学部卒業。胃や食道・大腸がんなど消化器がん専門の外科医として辣腕を振るった後、管理栄養士を養成する教育職に。2007年に胃がんが、その2年後には前立腺がんが判明するも完治している。
大学病院の勤務医「がん検診」を受けていない人も
「大学病院の勤務医は口では早期発見が大事と言いながら、自分らはあまり検診を受けていないんですよ」
そう語るのは、東京医療保健大学副学長で医師の小西敏郎さん。49才で関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)に移るまで、勤務先の大学病院では毎年の検診を受けていなかった。
「“こんな元気なのにがんになるわけがない”という自負がありました。ほかの医師も同じで、大学病院の勤務医で検診を受けず、症状が進んでからがんが見つかる人が時々いましたね」
新しい勤務先の病院では年に一度の人間ドックが義務づけられ、そこで初めて定期的に検診を受ける習慣がついた。59才のときに胃カメラ検査で初期の胃がんが見つかり、内視鏡で除去した。
「症状はまったくなく、実質4mmほどの小さながんで助かりました。ただ胃の上方にある未分化のがんで、放っておいたらタチの悪いがんになる可能性がありました。あのとき人間ドックを受けていなかったら、2~3年のうちに、命を失うタイプのがんに悪化していたと思っています」
その2年後には前立腺がんが見つかるも、早期の状態だったため手術によりほぼ根治した。
「前立腺がんは血液検査のPSA検査をすればほぼ100%見つかります。PSA検査は標準的な検診には含まれないので、50才を過ぎた男性はオプションで検査するべきです」
2度のがんを経験した医師の立場から、小西さんはこうアドバイスする。
「がんは小さな状態で小規模な治療を施せば完全に治る時代になってきました。自治体で行われるスタンダードなメニューに加え、胃カメラ、そして可能ならばCT検査や大腸カメラなどより精度の高い検査を受ければ、早期発見の確率がさらに高まります」
パートや専業主婦のケース「先延ばしにせず自主的に」
パート勤めの山崎好子さんは子供が独立した50才から、自分自身の健康を維持するため、自治体のがん検診を毎年受けるようになった。しばらくの間「異常なし」が続いたが、検診結果に「要再検査」とあったのは54才のときだった。
山崎好子さん(60)/パート主婦。
娘が独立後、事務のパートをしながら夫とふたり暮らし。50才からがん検診を毎年受け始め、54才のときに子宮頸がんが判明。「円錐切除術」を日帰りで受け、完治。その後も自治体のがん検診を毎年受診。
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「その文字を見たときは本当にびっくりしました。子宮頸がんを告知されたときは“ごく初期で切除すれば問題ない”と医師に言われたので、“だったら、さっさと切ればいいや”と開き直りました。ただし、夫が体調を崩していたうえ娘は妊娠中だったので、家族には手術を内緒にしていました」
医師のすすめで、日帰りで円錐切除の手術を受けた。
「局所麻酔をかけて15分ほどで手術が終わり、術後は生理痛のような痛みが3~4日あっただけです。それから3か月に1回の定期検診を2回受け、その後は半年に1回。1年に1回になってからは通常のがん検診を毎年受けています」
早期発見が功を奏した山崎さんは、タイミングがよかったと振り返る。
「もしあの段階で受けていなかったら、翌年以降は娘の出産や育児の手伝いで忙しくて検診を受けなかったかもしれないし、違和感があっても放置して手遅れになったかもしれません」
誰もががんになる可能性があると実感した彼女は「パート」や「専業主婦」に注意を呼びかける。
「正社員とかならば毎年健康診断が義務づけられていますけど、パートや専業主婦の検診は任意ですよね。強制されるわけではないからといって、面倒臭がってずるずると先延ばしにするのではなく、自主的に検診を受けてほしい。
私も若い頃から検診の大切さは聞いていたものの、定期的に受け始めたのは50才からでした。間に合ってよかったと思います」
写真/PIXTA
※女性セブン2024年6月27日号
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