介護職の夜勤手当調査「2交替制で5976円」は妥当か? 夜勤経験者が明かす給料の実態
介護施設の夜勤調査(日本医療労働組合連合会)で明らかになった過酷な夜勤労働に関する記事に多くの反響が寄せられた。介護職の夜勤専従で働くブロガーのたんたんさんこと、深井竜次さんが夜勤の働き方に続き、「夜勤手当」について考察。夜勤の業務内容と夜勤手当は妥当なのか――。
介護職の「夜勤手当」について考察
介護士ブロガーのたんたんと申します。
介護現場で働いてきた経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いを込めて、ブログを運営しています。
介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験した出来事や学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる多くの人に参考になれば」と思って記事を書いてきました。
2月に発表された介護施設夜勤の実態調査をもとに、僕なりの意見をまとめた記事『介護施設の夜勤は本当に過酷か? 8割が長時間勤務、ワンオペや仮眠室なしの実態』は、多くの方に読んでいただきたくさんのコメントがありました。
→介護施設の夜勤は本当に過酷か? 8割が長時間勤務、ワンオペや仮眠室なしの実態
現在、実際に老健(介護老人保健施設)で夜勤専従として働いている僕の視点から、今回は同じ調査で発表された介護職の「夜勤手当」にまつわる話について書いていきたいと思います。
日本医療労働組合連合会(日医連)が実施した「介護施設の夜勤に関する調査」※によると、夜勤手当の平均額は以下のようになっています。
■「夜勤手当」の金額(日医連調査)
・正規職員の2交替夜勤:平均5976円
・3交替夜勤の準夜勤:3630円、深夜:4325円
はたしてこの金額は妥当でしょうか?
※参考「2021年介護施設夜勤実態調査」結果概要
http://irouren.or.jp/news/f524cbf5956c60b5e34efaf02bb440985c9996eb.pdf
僕自身の「夜勤手当」は5000円
夜勤をすると「夜勤手当」がつくので日勤帯に働くよりも多くの収入を得ることができます。
僕自身、これまで4か所の施設で夜勤をした経験がありますが、1回の夜勤で3000~5000円の手当が相場でした。最初に正社員として働いていた介護施設も、その後派遣で働いたときも、同じように夜勤手当は5000円でした。
今回の調査で判明した2交替夜勤の5976円という夜勤手当ですが、この金額では少ないと僕は感じています。2交代制は「ロング夜勤」とも呼ばれ、拘束時間も長く、少ない職員で対応する必要があり、5000円では厳しいかもしれません。
介護業界で働く友人の話では夜勤手当が1万円を超える施設があると聞いたことがあるのですが、それはレアケースだと思います。
「夜勤で効率よく稼ぐ」という考え方
スキルや経験を積んで役職について昇給すれば、夜勤をやめても昇給した給料でカバーできることもあるかもしれません。
しかし、施設の給与体系によって昇給額は全然違うため、昇給額や役職、資格による手当ての額が低ければ、夜勤をしている職員よりも給料が低いということもあります。
以前、僕が働いていた介護施設では役職に就いて夜勤をすることがなくなると、夜勤している職員よりも給料が低くなってしまい、問題になったこともありました。
役職者は、責任の重さやそれまで培われた経験やスキルからしても、他の職員の倍近くの給料をもらってもいいと思います。役職についても給料が上がらないようでは、多くの介護従事者のモチベーションを奪う結果になってしまいます。
「出世しても夜勤手当て以上の手当てはないから給料アップは見込めないし、大きな責任と仕事量をかかえるだけ」という状況の中で、頑張って資格取得や日々の仕事をしていくのは大変なことです。
したがって、夜勤はキツイけど給料をアップさせるには効率がいいと考える職員がいても全然不思議ではないと思うのです。
もちろん夜勤のキツさは、施設によって全然違うので一概には言えませんが、「出世するよりも夜勤を多くこなしたほうがいい」と思っている職員は多いように感じます。
夜勤を多く入れたいと思っている職員は多い
老健や有料老人ホームなどさまざまな形態の介護施設で働いた僕ですが、どの職場でも月の夜勤の回数を気にしている職員は多いと思います。
勤務表が出たときはその月の夜勤の回数をチェックして「今月は夜勤が少ない。どうしようかな」と話している職員もいました。つまり夜勤が少ない=稼ぎが減ってしまうということです。夜勤をこなして手っ取り早く収入を上げたいと思っている人は結構いるのです。中には上司に夜勤の回数を増やして欲しいと直訴する職員もいました。
介護施設での夜勤の仕事はラクなものではありません。生活が不規則になったり少ない職員で入居者を見ないといけなかったり、体への負担は大きいいと思っています。
そんなに大変な夜勤を給料を上げるためにやるべきなのでしょうか。夜勤をしないと給料が上がらないというのは、基本給の低さに問題があります。介護職の給料や手当に関しては、施設だけの問題ではなく、国に責任があると感じています。介護職員の処遇改善を早急に行って欲しいと思います。
夜勤を含め介護職の手当の改善を
介護業界には「2025年問題」を抱えています。これは「2025年には介護従事者が約38万人も不足する」と厚生労働省が発表して話題となりました。
そんな中で、介護職の給料の水準が低いままでは、介護職が集まらないだけではなく、現在働いている介護職が他の職種に流れてしまう可能性もあります。
実際に僕の周りの介護職でも結婚や出産を機にもっと多くの給料が欲しいからと、介護の仕事を離れた人を多く見てきました。
最近は国もこの事態を問題視していて、介護職員の待遇改善に関する政策の提案や実施が増えてきましたが、それでもまだ充分とは言えず、経済面で苦しい思いをしている介護職員はたくさんいます。
夜勤手当について【まとめ】
僕が介護施設の「夜勤専従」で働いている理由は、「介護でいかに一番効率よくお金を稼ぐ事ができるのか?」ということを考えたからです。「介護は夜勤で稼げ」といわれることがありますが、あながち間違いではないと僕は思っています。
現在僕が働いている派遣会社の制度では、「夜勤手当」はなく、深夜帯の時給アップとなっています。ちなみに、過去に派遣会社の担当者から「職場で給料の話はしないほうがいい」というアドバイスされたことがありました。
理由としては、派遣先の施設の職員よりも多くの給料をもらっているケースもあり、お金の話をすることで良好な人間関係を築けなくなるかもしれないという配慮からです。
僕自身、今は夜勤で得られる収入に関して納得しています。それは、ブログや執筆など、介護の仕事以外の収入源を確保しているからであって、介護職の収入だけで暮らしていこうと思えば、また話が違ってきます。
繰り返しますが、生活のために夜勤を多くこなさないと厳しいという現状の介護職の給与体系には、大きな問題がある。そもそも「介護は夜勤で稼げ」といわれていること自体おかしな話ですし、普通に働いてある程度生活できる給料水準になって欲しいと思っています。