昔の常識、今は非常識!?「白髪は抜くと増える」「低血圧は寝起きが悪い」…はウソだった!!
医療は日進月歩。病気や健康に関する思い込みや昔の常識にとらわれると、取り返しのつかない事態にもなりかねない。常に新しい情報をチェックして、”当たり前”の更新を!
ひと昔前の部活動では「練習中に水を飲むな!」と当然のように言われていたが、熱中症による死亡事故が多発し、今やタブーとなっている。そういった今昔の変化は、医学や科学の進歩により数多く存在する。そんな、今や非常識となってしまった昔の常識を紹介します。子供や孫に「そんなのありえない! 古っ!」とバカにされる前に、素直な心でご一読ください。
風邪をひいても、風呂に入っていい
「熱が出たら汗をかけ」「風邪をひいたら入浴は厳禁」「ビタミンCは風邪にきく」。どれもよく耳にする話だが、100%正しいとは言い切れないと、医師で医療ジャーナリストの森田豊さんが解説する。
「以前から発汗療法といわれてきましたが、それは間違いです。汗をかきすぎると体力を消耗し、脱水になりかねません。布団に潜るなどして無理に汗をかく必要はありません」
また、風邪をひいた時はむしろ風呂に入った方がいい。
「入浴すれば体に付着したウイルスを洗い流せます。ただし、長風呂や高熱が出ている場合は体力を消耗してしまうので厳禁です」(森田さん)
さらに、ビタミンCは風邪の予防には優れているが、風邪を治すものではないという。
歯の治療も変化してきた。
「以前は“虫歯=削る”治療が一般的でしたが、今は初期の虫歯であれば、フッ素を塗布したり、キシリトール配合のガムを利用すれば進行を抑えられます」(銀座 池渕歯科院長・池渕剛さん)
眼科の常識も様変わりしている。みさき眼科クリニック院長の石岡みさきさんが語る。
「現在、白内障は日帰り手術が可能ですが、30年前は片目ずつ1週間の入院が必要で、保険もききませんでした。医療は日々進化しているのです」
病気・健康の新常識
医療は日進月歩。病気や健康に関する思い込みや昔の常識にとらわれると、取り返しのつかない事態にもなりかねない。常に新しい情報をチェックして“当たり前”の更新を。
【昔】食べてすぐ横になると牛になる
【今】食べてすぐ横になった方がいい
「食後にゆったりせず、すぐに活動すると血液の多くが筋肉に流れるため、消化管の血行が悪くなり、消化不良の原因に」(森田さん・以下森)。腹八分目を心がけるとなお◎。
【昔】白髪を抜くと増える
【今】抜いても増えることはない
「白髪を抜き、数か月後の変化を確かめた実験がありますが、特に増えることはありませんでした。白髪が気になって抜き始めた時期が、白髪が増えるタイミングと重なったための俗説と考えます」(森)
【昔】傷はすぐに消毒して、乾燥させる
【今】傷は水道水で洗い、乾かさない
傷口は水道水で細菌を洗い流し、その後、ラップや次世代絆創膏などで乾燥を防ぐ。「傷口を乾燥させると細胞の増殖が妨げられ、治癒力が弱まります」(森)
【昔】卵は1日1個まで
【今】健康であれば毎食、食べてもいい
「1981年に“1日5~10個の卵を5日間食べる”という調査が行われましたが、コレステロール値は変化なし。健康な人には血液中のコレステロール値を一定に保つ働きが備わっています」(森)
【昔】運動した翌日に筋肉痛になるのは若さの証拠
【今】年齢は関係なし。運動の強度と時間で決まる
「筋肉痛に早くなりやすいのは、マラソンのように長時間に及ぶ運動。短時間でもきついスクワットなどは、筋肉痛になるのが遅いという研究結果があります」(森)
【昔】魚の骨がのどに刺さったらご飯の固まりをのみ込む
【今】ご飯をのみ込むとますます深く刺さる危険が
「水を飲む程度の自宅での対処は構いませんが、それでも取れない時は、耳鼻咽喉科で抜いてもらいましょう」(森)
【昔】ムダ毛は剃るたび濃く太くなる
【今】太く見えるだけで、変わらない
「実験ではそういった事実はありませんでした。剃毛直後は毛の断面積が大きくなるため、毛が太くなったように見えるだけです」(森)
【昔】朝が弱いのは低血圧のせい
【今】寝起きが悪いのは自律神経の切り替えがうまくいっていない
「低血圧にはめまいなどの症状があるため、寝起きの悪さと混同されがちですが無関係。原因は自律神経です。交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないと、寝起きの悪さにつながります」(森)
【昔】熱が出たら額を冷やす
【今】冷やすのはお腹やわき
「額を冷やすと脳を高熱から守ってはくれますが、体全体の熱を下げるのであれば、いちばん太い血管の通っているお腹を冷やすのが効果的」(森)。首やわきの下、そけい部を冷やすのもいい。
【昔】運動前のストレッチは念入りに
【今】ストレッチするなら運動後に
「運動前に屈伸運動やアキレス腱伸ばしを入念に行うと、関節まわりの筋肉や腱のゆるみ、腱の弾力性を損ない、けがをしやすく可能性があるという研究結果があります。運動前は運動中に出て来る動きを軽く行うなどのウオーミングアップで充分。また、運動後のストレッチであれば筋肉疲労の回復や筋肉痛予防に◎」(森)
【昔】お酒の前に牛乳を飲むと悪酔いしない
【今】牛乳を飲むぐらいでは防げない
飲む前の牛乳が胃に膜を張り、アルコールの吸収を妨ぐというが。「牛乳の膜ができたとしてもすぐに剥がれるので意味なし。ただし、胃の痛みがあるときに牛乳を飲むと粘膜を保護してくれて一時的な効果が期待できます」(森)
【昔】プール後は洗顔器で目をよく洗う
【今】水道水で洗うと目に傷がつく
プールの水は塩素で消毒されているため、目に入ると細胞膜を破壊し、目の表面を傷つける危険がある。「そのうえ、洗眼器やシャワーなどで目を洗うとさらに傷がつき、目の表面を保護している成分も流してしまいます。防腐剤の入っていない人工涙液を数滴たらして洗い流してください」(石岡さん。以下石)
【昔】近視の人は老眼になりにくい
【今】誰しも100%老眼になる
「老視(老眼)は調節力の低下。近視も遠視も手元が見えにくくなる年齢は40才前後です。ただ、近視は近くを見るのが得意なので、老眼を感じるのが遅いだけです」(石)
【昔】歯ブラシは毛先が広がったら交換
【今】見た目はきれいでも1週間で取り替える
「歯ブラシには1億個以上の細菌が付着しているとの報告もあります。毛先の広がった歯ブラシでの歯磨きは、大量の虫歯菌や歯周病菌を歯にこすりつけているようなもの。見た目に変化がなくても、1週間で取り替えるのが理想です」(池渕さん・以下池)
【昔】食べたらすぐ歯磨きで虫歯予防
【今】少なくとも7~8分たってから磨く
「食後の口の中は酸性に傾くので、唾液が中性に戻し、歯の成分を再石灰化しています。再石灰化する前の歯はもろいため、食後すぐの歯磨きはNGです」(池)
教えてくれた人
森田豊さん/医師・医療ジャーナリスト。著書に『今すぐ「それ」をやめないさい!』(すばる舎)などがある。
池渕剛さん/銀座池渕歯科院長。著書『今日も銀座は診療日和。』(世界文化社)を11月上旬に発売予定。
石岡みさきさん/みさき眼科クリニック院長。横浜市立大学眼科講師も務める。近著に『点眼薬の選び方』(日本医事新報社)。
イラスト/うえだのぶ
※女性セブン2018年10月4日号
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