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母の認知症介護に重要な3つの道具「10年使っているホワイトボードと伝え方の工夫」

 岩手・盛岡でひとり暮らしをする認知症の母を東京から通いで介護している作家でブロガーのくどひろさん、こと工藤広伸さん。認知症が徐々に進み、伝えたことをすぐに忘れてしまう母に、3つの道具を使って工夫をしているという。どんな風に活用しているのだろうか?

1.認知症介護に欠かせない10年使っているホワイトボード

母:「ねぇ、何時に病院に行くんだっけ?」

わたし:「10時に家出るよ~」

 眼科を受診する日の朝、母は同じ質問を何度も繰り返し、わたしも何度も答えるのですが、認知症なのですぐに忘れてしまいます。何度も答えていると疲れてくるので、ホワイトボードを購入しました。

 ホワイトボードには、今日の予定(出発時刻、訪問場所、目的)をすべて書いて、母から質問されるたびにホワイトボードを見せて対応し、口頭で何度も答えるストレスを軽減してきました。

 この方法を取り入れて10年目になりましたが、今でもホワイトボードはわが家の認知症介護には欠かせない、重要なツールです。ただ最近になって、母が読めない文字が増えてきたので、ある工夫を加えてみました。

 以前の母は、「A眼科、10時出発」とホワイトボードに書けば、用件を理解してくれました。

 しかし今は、この書き方だと伝わらず、2つ質問されます。ひとつは「眼科」で、文字の読み方が分かりません。もうひとつは「眼科」の意味です。眼科は何をするところなのか、分からないのです。

 どう解決するかというと、「目のけんさ、10時出発」と書きます。画数が多くて難しそうな感じはかな表記にし、言葉の意味が分からない文字は、より分かりやすい表現に書き直すのです。

 日によっては、母は「眼科」の文字を読んで、理解できる場合もあります。どの文字が読めて、どの文字が読めないかまでは分かりませんが、きっとこの漢字は読めないだろうなと思ったら、基本はかな表記にしています。

2.メモで伝える場合は書き方を工夫する

 こうした工夫はホワイトボードだけでなく、ちょっとしたメモ書きでも同じで、例えば、夕食にマーボー丼を用意したとして、ご飯にかけて食べるよう、母に伝えたい場合は次の写真のような伝え方にしています。

 母は、麻婆豆腐の意味が分かりません。どんな料理で、どんな味がするのかイメージできません。でも豆腐は理解しているので、読めないであろう豆腐をかな表記にして、フライパンの中のとうふと書くことで、理解してもらうようにしたのです。

 こうした伝え方の工夫は、母と一緒にいるときには問題ないのですが、わたしが東京へ帰ってしまったら、文字では伝えられません。そこで文字ではなく、音を積極的に活用するようになりました。

3.スマートスピーカーを積極的に活用

 音でまず思いつくのは、電話です。東京から岩手の母に電話で、「今日はデイサービスの日だよ」、「ヘルパーさんが10時に来るよ」と声掛けすればいいのですが、時間もお金もかかります。

 そこで、我が家ではスマートスピーカーを居間に設置して、母への声掛けを自動で行っています。

編集部注:スマートスピーカーとは、AI(人工知能)によって音声操作や音声認識が可能な機器。話しかけることでさまざまな操作ができ、予定を登録しておけば自動で音声を流すことなども可能。AmazonやGoogleほか、さまざまな商品がある。

 まず、スマートフォンのgoogleカレンダーに母の1週間分の予定を入力し、毎週繰り返される定期的な予定として登録します。あとは母に声掛けして欲しい時間をスマホで設定すると、スマートスピーカーからその日の予定が自動で流れる仕組みです。

 例えば、母がデイサービスに行く日の朝は、起床時間からほぼ5分おきに「今日はデイサービスの日です」と何度も音声が流れるので、母は忘れずにデイサービスに行く準備ができます。

 居間の壁掛けカレンダーに書いてある、今日の予定の文字を母が理解できなかったとしても、スマートスピーカーの音声がサポートしてくれるのです。

 他にも、ヘルパーさんが来る1時間くらい前から、「10時にヘルパーさんが来るよ」と自動で音声を流すことで、母は居間で待機してくれるようになりました。
 
 認知症の進行によって、文字の読み書きが厳しくなりつつある母ですが、音の聞き取りや会話のほうはまだ大丈夫です。少しずつではありますが、ホワイトボードやメモの書き方の工夫よりも、音声で伝える機会のほうが増えていくような気がしています。

 スマートスピーカーを積極的に活用して、母にはできるだけ長く、自宅で自立した生活を送ってもらいたいと思っています。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(78歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

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この記事へのみんなのコメント

  • きのこ猫

    ウチも同じです。 88歳の母に、分かりやすく、かつ簡単に予定などを伝えることの難しさを痛感しています。 貼り紙作戦、大事なことだけ書いてるノート作戦、電話リマインド作戦もやってます。 ネット環境が母の家にないのでLTE内蔵のリマインド用ロボットを設置しましたが、母が音を消してしまう知恵を発揮してしまい大失敗。 これからはもっと忘れて行くのだろうけれど、どこまで自分で介護できるのか、選択を迫られている気がします。 エネルギー吸い取られてクタクタです。

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