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暮らし

人気YouTuber寺田ユースケさん「車いすを捨てて避難した火災騒動の恐怖」

 寺田ユースケさんは、車いすを相棒にさまざまな企画に挑戦する様子をYouTubeで発信している。現在は、東京から長野に移して活動中しているが、移住のきっかけとなったのが、マンションの火災騒動だったという。車いすでの避難問題について、ユースケさんの経験をもとに、専門家にも意見を聞いた。

マンションの火災騒動で長野移住を決意

「東京に住んでいたとき、マンションの火災警報が鳴って、僕は息子を抱えて階段を降りられなくて…。あのときは本当に危機を感じて、怖かった」(寺田ユースケさん、以下ユースケさん)。

 20才のときから車いす生活を送っているYouTuberの寺田ユースケさんは、昨年、東京から長野へ移住。現在は妻の真弓さんと息子の深旅(みたび)くんと家族3人で暮らしている。

「東京で暮らしていたときは、エレベーターつきのマンションの5階に住んでいました。たまたま妻が出かけていて、息子と2人で留守番をしていたら、突然マンションの火災警報が鳴り響いたんです。エレベーターがすべて止まっていて、非常階段を下りて逃げなければならないという状況でした。

 僕は足に麻痺があるので、息子を抱っこして階段を下りることができません。息子をベビーカーに乗せて慌てて廊下に飛び出したけど、ベビーカーでも降りられない。住民の人たちが慌てて避難していて、『これ、マジのやつだ』と思った。

 どうしていいかわからなくなってパニックになっていましたが、たまたま通りかかった住民の方に息子を託して、僕は手すりにつかまりながら階段を転げ落ちるような感じで尻もちをつぎながらなんとか1階まで降りました」

 電子レンジから出た煙に火災報知器が反応してしまったそうで、大事には至らなかった。しかし、「息子を守れないかもしれない」という恐怖――このときの経験が、地方移住の後押しになったという。

「以前から、妻とは子育てをしやすい環境に引っ越そうかという話はしていたのですが、火災騒動があって、妻の両親が住んでいる長野への引っ越しを決意しました」(ユースケさん)

YouTube「寺田家TV『【火事】車椅子を捨てて息子と2人だけで避難しました【障害者の現実】』」より

https://www.youtube.com/watch?v=mFRykHjKbi4

車いすや介護が必要な人の避難問題

 車いすでの避難問題について、長崎シーティング研究会の活動に参加する理学療法士の宮田貴史さんは以下のように話す。

「車いすを利用する方が非常階段を使って避難をするときは、小規模な施設などの場合、人力に頼っているのが現実です。

 歩けない人の避難では、シーツに患者さんを寝かせて、シーツごと階段を降りたり、おんぶをしたりして、人の力で運んで階段を降りる方法が多いと思います。施設によっては、専用の担架を準備しているところもあります。

 車いすに乗ったまま避難するのは、車いすの重みもあるので一般的ではありませんが、前方と後方から2人で持ち上げながら階段を降りたり、幅が広い階段なら、車いすを横から2人で抱えて階段を降りたりすることも。

 大きな施設の場合は、車いす専用の緊急避難用の機器を備え付けている場合もありますが、高価なものなので広く普及しているものではありません。

 車いすを必要とする人は、避難経路や避難の仕方について事前に調べておき、協力できる人に声をかけておく必要がありますね」(宮田さん)

車いすの暮らしでぶつかる問題

「車いすやベビーカーを使っている人、介護が必要な人は、マンションなど非常階段で避難しなければならない場合、事前に管理人さんなどと相談しておかなければならないと感じました」と、ユースケさんは当時を振り返ってしみじみと語る。

「長野では2階建ての家に暮らしているので、家にも階段があります。火災避難とか緊急時ではなくても直面する問題はありますね。

 寝室が2階にあるのでパパは息子を抱っこして2階に連れていけないし、その往復もできません。2人だけで公園に行くというのもまだ難しくて…。いろんな場面で問題はあるのですが、たいがいのことはなんとかなっています」と、妻の真弓さんはいつも明るく前を向いている。

「障がいを持つ人への発信もそうですが、僕たちの暮らしが便利になるもの、そういうものもこれからは動画で紹介していけたらと考えています。今、僕たち夫婦で考えているのが、障がいを持つ子供たちやその家族、介護する人たちが抱える問題について相談できるコミュニティーを作れたらいいなって思っています」(ユースケさん)。
 
 ようやく雪溶けした早春の長野で、寺田家の挑戦はまだまだ続く。

お話を聞いた人

寺田ユースケさん

 愛知県生まれの31才。長野県に暮らす一児のパパ。生まれつきの脳性麻痺で足が不自由ながらも20才で出会った車いすで人生が一変。「車いす芸人」「車いすホスト」「車いすヒッチハイカー」など、異色の経歴を持つ。チャンネル登録者数10万人を超える『寺田家TV – サイボーグパパ』で情報を発信するほか、クラウドファンディングを展開する企業『CAMPFIRE』にも勤務。著書『車イスホスト』(双葉社)。

宮田貴史さん

 理学療法士。ユースリー代表取締役。2人の子供を持つ父親。「障害児を持つ親が安心して死んでいける地域を作る」を目標に日々奔走中。https://you-three.net/company/

取材・文/氏家裕子

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この記事へのみんなのコメント

  • えーちゃん

    母や夫が人生の途中で車椅子生活になり、介助する立場になってから、自然と こうした記事に目が行く様になりました。 マイナスな事ばかり考えてしまいがちですが、前向きに明るく生活をしている方の姿に勇気をいただきます。 次回も楽しみにお待ちしています。 ありがとうございます。

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